クレジットカードの明細や領収書(レシート)は裁判で不貞・不倫の証拠として使えるのでしょうか??
・不貞の証拠となるクレカの明細や領収書(レシート)の例
・裁判では不貞の証拠となるのか??
・単独では証拠になりづらい面も
1 不貞の証拠となるクレカの明細や領収書(レシート)の例
「最近夫の行動が怪しいと思っていて、財布を探してみたら、ラブホの会員カードとレシートが見つかりました。」
「夫のクレカの明細を見てみたら、行ったことのない高額なレストランの利用明細がありました!しかも料金はちょうど二人分くらいなので問い詰めたら、夫は『仕事の同僚と行ったんだよ。』の一点張り。どうすれば良いのでしょうか・・」
「夫の鞄からホテルのナイトプールの領収書がありました。」
「夫の財布から見つかったコンビニのレシートによると、ビール1缶とチューハイ1缶を買ったようです。コンビニはラブホ街にあって、夫は普段チューハイなんて飲まないのに・・」
弁護士として不倫の相談を受ける際、このような疑問や不安を述べられる方は多いです。
不貞の証拠となるクレカの明細や領収書(レシート)の例としては、以下のような利用履歴がわかるものが挙げられます。
・ラブホテル、シティホテルなどの宿泊施設
※ラブホテルの場合、会員証など発行している場合もあり。
・レストラン、ビストロ、バーなどの飲食店
※特に2名分の利用がわかる場合(コース2名分、ゲストチャージ2名分など書かれている場合)
・テーマパーク、遊園地、水族館、動物園などのレジャー施設
・美術館、博物館などの展覧会
・百貨店やアパレルショップなどの小売店
※不貞相手へのプレゼントのためブランド品や指輪などの購入例多い。
・コンビニエンスストア、スーパーなど
※配偶者の職場や自宅から遠かったりして生活圏が異なったり、配偶者が普段購入しないもの(女性向けの化粧水、コンタクトレンズケースなど)の記載がある場合
そして、大抵これらのクレカ明細、領収書(レシート)が不倫・不貞の証拠になるかとご相談されるのは女性のお客様です。
不倫関係にあってもやはり男性が女性分の費用を出すというケースが多いということでしょう。
2 裁判では不貞の証拠となるのか??
(1)裁判では不倫の証拠になり得るが、単独では証拠になりづらい面も
では、裁判ではこれらのクレカ明細、領収書(レシート)は不貞の事実を証明することができる証拠として取り扱われているのでしょうか。
結論から言うと、不貞の証拠になります。
ただし、クレカ明細、領収書(レシート)単独では不貞を認定できると言えるケースはなかなか少なく、他の証拠と併せてはじめて不貞が認定されるケースが多いです。
(2)クレカの明細の裁判例について
例えば、東京地方裁判所平成19年4月16日判決は以下のように述べてクレジットカードの利用歴から不貞行為の認定を行なっています。
「被告Y1名義の郵貯セゾンカードの平成17年10月14日作成・同年11月4日支払期限の利用明細書における請求額は15万8167円、同じく三越(VISA)カードの平成18年1月25日発行・同年2月10日支払期限の利用明細書における請求額は21万9503円であり、また、被告Y1の携帯電話料金は、平成17年7月又は8月分が2万4306円、同年10月分が10万7089円、同年11月分が9万1690円であり、平成17年中の東京・宮崎間の航空券購入費やホテル代などがクレジット代金として請求されていて、被告Y2との交際にかなりの出費をしていたことが推認できる。」
しかし、この事案では決して、クレジットカードの利用明細だけで不貞・不倫の事実が認定されたわけではありません。
と言うのもこの判決は以下のように述べて、夫と不貞相手との間にDNA鑑定により子供がいることが判明しています。
「原告は、離婚調停を申し立てたが、Aの親権者等について争いがあって平成18年5月18日に不調となり、その後、離婚訴訟と本件訴訟を提起したが、親子鑑定によりAの父が被告Y2であることが判明し、平成19年1月24日にAの親権者を被告Y1とする離婚が成立した。」
DNA鑑定により不貞相手の子供と夫との間の親子関係が判明した場合には、当然、性的関係、すなわち不貞があることは自明です。
そのため、この裁判例のケースでは、そもそもクレジットカードの利用明細がなくても不貞の事実は証明されています。
また、クレジットカードの利用明細についても不貞の事実があったかなかったかそのものを認定するのに使うのではなく、夫が不貞相手との交際に関して「かなりの出費をしていたこと」といういわゆる不貞行為の形態、悪質性と言う評価をするために使われています。
(3)妻が不貞を否定している裁判例について
そのほかの裁判例も見てみましょう。
東京地方裁判所平成21年6月10日判決は、妻が不貞を否定している事案において、以下のようにクレジットカードの利用明細を根拠の一つとして挙げて不倫の事実を認定しています。
「被告は、Aと性的関係を持ったことはない旨主張し、被告の陳述書(乙1)及び被告本人の供述には、これに沿う部分が存在する。
しかしながら、証人Aは、被告と性的関係を持ったことを明確に認める供述をしているところ、その供述する内容は相当具体的かつ詳細であって、同人のクレジットカードの支払明細(甲6、7、14ないし17)や被告に宛てたメールの内容(甲5の1)とも符合しており、特段不自然な点はみられない。また、Aが、被告と性的関係を持った事実がないにもかかわらず、敢えてこれがあった旨の虚偽の供述をする動機も考えがたいことに照らすと、同人の供述は信用しうるというべきである。
これに対し、被告本人は、Aとは単なる友人に過ぎず、男女の関係にはなかった旨供述するが、他方で、同人から総額数百万円にも及ぶ高額のプレゼントを受け取ったこと、その他ネイルサロンの代金等を負担してもらったこと、同人と二人で都内の高級ホテルにチェックインしたこと、同人の賃借したマンションに入居する予定であったことを認めており、これら被告本人が認める事実に照らしても、Aと男女の関係になかった旨の被告供述は、にわかに信用しがたい。また、原告が依頼した調査会社の調査報告(甲3、20)によれば、被告とAが手をつないで歩いている場面が認められるなど、単なる友人関係を超えた親密な様子が窺われる。これらの事情に照らすと、Aとの性的関係を否定する被告供述を採用することはできない。」
しかし、この裁判例を読むときも注意が必要です。
この事案では、妻は不貞の事実を否定しているのですが、不貞相手(裁判例で言うところのA(男性))は不貞の事実を明確に認めています。
その上で、「同人のクレジットカードの支払明細(甲6、7、14ないし17)や被告に宛てたメールの内容(甲5の1)とも符合」していると評価し、不貞相手のクレジットカードの支払い明細をいわば不貞相手の証言を裏付ける証拠として用いています。
さらに、裁判例では、妻が「同人から総額数百万円にも及ぶ高額のプレゼントを受け取ったこと」「その他ネイルサロンの代金等を負担してもらったこと」「同人と二人で都内の高級ホテルにチェックインしたこと、同人の賃借したマンションに入居する予定であったこと」を認めていることを不貞を推認させる事実として挙げています。
裁判例の判旨のみではわからないのですが、これらの事実もこの事案では妻に明確に不利な事実であるので、もしかしたら「総額数百万円にも及ぶ高額のプレゼント」「ネイルサロンの代金」「都内の高級ホテル」「賃借したマンション」を証明するクレカの利用明細などが証拠として提出されていたのかもしれません。
ただし、この事案においても、もし不貞相手が不貞の事実を認めず、クレジットカードの支払い明細のみであった場合、不貞の事実が認定されたかどうかは微妙なところです。
(4)小売店の領収書(レシート)の事案について
東京地方裁判所平成19年3月19日判決では、以下の通りダイヤモンドの婚約指輪の販売証明書から不貞の事実を認定しています。
「同年8月中に,被告Y1が被告Y2のためにダイヤモンドの婚約指輪を購入し,その販売証明書のお客様氏名欄には被告Y2が署名した事実が認められる」
この事案でも、そのほかに多数の証拠があるうちの一つという扱いです。
この判決では以下のように多数の証拠をあげて不貞の事実を認定しています。
「同年8月中に被告両名で,8日に花火見物(甲38の1ないし6),10日に外食(甲39の1),12日に納涼船乗船(甲39の1ないし3),14日にお台場に行き(甲40),19日には被告Y2の自宅で同人の手料理を食べ(甲41の1ないし5),21日にはA氏宅を訪問し,22日にはシェラトンのブライダルフェアに行き,被告Y2のウェディングドレス姿の写真を撮影し,26日から27日にかけて一夜を共に過ごし(甲45),28日には被告Y2の送別会に共に出席し(甲19の1,2),31日には,西日暮里の小料理屋でA氏とともに食事をし,その際,ウェディングドレス姿の被告Y2の写真を見せるなどしたが(甲18,46),この間に,被告Y2は,被告Y1から妻とブライダルフェアに行った話を聞いており(被告Y2本人41頁),被告Y1に妻がいることを,遅くともシェラトングランデのブライダルフェアに行った8月22日より前には知っていた事実が認められる。」
確かにダイヤモンドの婚約指輪を購入し、その販売証明書にお客様氏名欄に不貞相手がサインするというのは、性的関係がなければそこまで深い関係になりませんから、不貞の事実を強く推認させる証拠です。
もっとも、この裁判例ですら、他の証拠と合わせ技で不貞の事実が認定されているので、もし販売証明書しか証拠がない場合不貞の事実が認められたかどうかは未知数であることは注意が必要です。
3 まとめ
不貞の証拠となるクレカ明細、領収書(レシート)は、ラブホテル、レストラン、バー、テーマパーク、遊園地、水族館、美術館、百貨店、コンビニなど多種多様!できる限り多くの証拠を集めよう。
裁判でもクレカ明細、領収書(レシート)は証拠として認定された事案多し!ただし、クレカ明細、領収書(レシート)単独で不貞が認定されているとは言い難いので注意が必要。
手元のクレカ明細、領収書(レシート)が証拠になるかどうか専門家(弁護士)にできる限り早く相談しよう。
弁護士の本音
本文でも書きましたが、クレカ明細、領収書(レシート)単独では不貞の証拠になかなかなりづらいという印象です。
ただし、クレカ明細、領収書(レシート)も大事な証拠の一つですので、できる限り集めていただければと思います。
例えば、探偵の調査報告書で不貞相手と宿泊している写真などがあればそれを補強する証拠になりますし、そのほかメールやLINEなどで不貞相手と性的関係を窺わせるやり取りをしていればクレカ明細、領収書(レシート)と合わせ技一本で不貞が認定されることもあります。