配偶者に自宅を追い出された!どうすれば良い?離婚専門弁護士が解説!

1 初めに

突然、配偶者に家を出て行けと言われて、自宅を追い出された」「別居後、自宅に立ち寄っても、家に入れてくれない」――配偶者の行動によって、こんな状況に直面した場合、何をすべきか分からない人も多いでしょう。しかし、自分の権利を守り、問題を解決するためには、冷静に対処することが重要です。

本記事では、配偶者に自宅を追い出されたり、立ち入りを拒否された場合について、離婚専門の弁護士が具体的な解決方法を解説します。

2 追い出しや立ち入り拒否をされた後、無理やり自宅へ立ち寄っても良いか

まず最初に、追い出しや立ち入り拒否をされた後、配偶者に無断で自宅に立ち寄ることについて考えてみましょう。法律的には、無断で他人の占有する家に立ち寄る行為は「住居侵入罪」(刑法130条)に該当する可能性があります。

(住居侵入等)

刑法第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

追い出しをされた直後であれば、まだ「人の住居」、つまり他人の占有する家とは言えないため、住居侵入罪には該当しない可能性が高いですが、無理やり入ろうとすることは、トラブルの原因となる可能性があるため、注意が必要です。

また、しばらく別居した後で立ち入りを拒否された場合は、たとえ自宅がこちら側の名義であっても、すでに配偶者側が占有している自宅になっています。そのため、無断での立ち寄りは、住居侵入罪に該当します。

なお、自宅がこちら側の名義の場合でも、婚姻中の配偶者にはその不動産の使用権限があるため、返還請求権も基本的には認められません

詳しくは、以下で解説しております。

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このように、いずれの場合でも、無理やりの立ち入りは推奨できません。

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3 追い出しや立ち入り拒否は同居義務違反で違法ではないか

配偶者が一方的に追い出したり、立ち入りを拒否した場合、同居義務違反で違法となるのでしょうか?違法性の判断において重要なのは、その追い出しや立ち入り拒否に「正当な理由」があるかどうかです。

(同居、協力及び扶助の義務)

民法第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

たとえば、別居の合意があったり、配偶者が暴力を振るったり、精神的に追い詰めたり、婚姻関係が破綻していたなどの事情があれば、正当な理由として認められます。

一方で、そうした事情がない場合は、正当な理由なく別居されている判断される可能性があります。同居審判手続では、そのような場合に裁判所が同居を命じる審判を出すことがあります。

ただ、同居を強制することまでは裁判所でもできないため、正当な理由のない別居だとされても、配偶者が同居を拒否している以上、強制的に同居状態に戻す方法はありません。

そのため、同居命令の審判は、実際のところ実効性は乏しいと言えます。

具体的に同居義務が争われた裁判例については以下で解説しております。

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4 正当な理由ない追い出しや立ち入り拒否は悪意の遺棄にあたるか

それでは、配偶者が正当な理由なく追い出したり、立ち入りを拒否した場合で、同居義務違反という違法性があるとしても、それが直ちに悪意の遺棄(法定離婚原因の一つ)に該当すると言えるでしょうか。

悪意の遺棄とは、夫婦間の同居義務や協力義務、扶助義務、婚姻費用分担義務などを正当な理由なく履行しないことを言います。

悪意の遺棄が認められると、法定離婚原因が認められるため(「配偶者から悪意で遺棄されたとき」民法770条2項)、あなたが離婚裁判を提起した場合に、離婚が認容される判決が出ることになり、慰謝料の増額事由ともなります。

(裁判上の離婚)

民法第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

また、悪意の遺棄をした配偶者が、離婚裁判を提起してきた場合は、有責配偶者からの請求として約10年ほどの別居期間がないと離婚が認められないことになります。

さらに、悪意の遺棄をした配偶者が婚姻費用を請求しても、婚姻費用の支払いを拒否することもできることになります。

しかし、裁判例からは、正当な理由のない別居に加えて、相手の生活に経済的な配慮がなされていない場合に、「悪意の遺棄」に該当すると判断される傾向が見られます

そのため、追い出された配偶者が経済的に困窮しているという要素まで必要であるとされる可能性が高いと言えます。事実上、扶養されている側(通常は妻)が、扶養している側(通常は夫)を追い出しても、悪意の遺棄に該当する可能性は低いことになります。

悪意の遺棄が認められる基準については、以下で解説しております。

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とはいえ、悪意の遺棄に該当しない場合でも、追い出した側が婚姻関係の円満な継続を拒否しているわけですので、こちらから離婚を請求すれば、こちら側に(不貞などの)大きな問題がない限り、離婚は認められることになるでしょう(上記770条5号)。

5 婚姻費費用についてはどうなるか

もし、追い出しや立ち入り拒否をしている側が婚姻費用を請求している場合、その配偶者は婚姻費用を支払う義務はあるのでしょうか。

裁判例では、別居に至った原因や、婚姻関係が破綻した原因が、もっぱら一方にある場合は、相手は婚姻費用を支払う義務はないとされています。

そのため、正当な理由ない追い出しや立ち入り拒否で、別居の原因が専ら一方にあると認められれば、婚姻費用を支払う義務はなくなると考えられます。

しかし、婚姻費用の審判は、日々の生活費を決めるという性質上、迅速な判断が必要となるため、別居の原因がどちらにあるかについては時間をかけた審理がされない可能性が高いと言えます。

そのため、婚姻費用の審判において、正当な理由ない追い出しや立ち入り拒否で婚姻費用の支払い義務なしとの判断がされる可能性は高いでしょう。

なお、婚姻費用の支払い義務が免除されるかの判断については、以下で解説しております。

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6 荷物の持ち出しを拒否された場合はどうすれば良いか

自宅に立ち入れず、荷物を持ち出せない場合で、自分の荷物の返還を要求しても拒否された場合どうすれば良いのでしょうか。

まず、婚姻中に購入したものは、共有財産となるため、裁判所に返還請求を提起することはできませんが、あなたの婚姻前からの私物などの特有財産については、裁判所に返還請求を提起することは考えられます。

しかし、現実的には、どうしても必要なものというわけではなければ、法的に返還請求するという労力のかかる方法をとるのではなく、財産分与の中でその分の金額を精算するべきでしょう。

私物の引き取り方法については以下で解説しております。

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7 まとめ

☑️無理やりで自宅に立ち寄ることは住居侵入罪に該当する可能性があるため避けるべき。

☑️正当な理由のない同居拒否は違法で、同居命令が出されることはあるが、同居の強制はできないので実効性は乏しい。

☑️悪意の遺棄まで認められるためには、正当な理由のない同居拒否に加えて、配偶者が経済的に困窮しているということまで必要。

☑️婚姻費用審判で、正当な理由のない同居拒否で支払い義務なしと判断されるハードルは高い。

☑️私物の持ち出しに応じてくれない場合は、財産分与で精算することが現実的。

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 以上で見てきたように、もし自宅を追い出された、自宅に立ち寄れない、荷物が取り出せないという場合でも、感情的になるのではなく、あなたが最終的に何を目的としたいかを考えることが大切です。

その目的によって、取るべき方法は変わってくるため、追い出しや立ち入り拒否の証拠は残しておきつつ、まずは弁護士に相談を行った上で冷静に対応しましょう。

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