今回の弁護士からのアドバイス
☑️ 別居後に負担した配偶者の保険の保険料は、財産分与で返してもらえる。
☑️ でもそこまで厳密に話が進むことは少ないので、婚姻費用から差し引くのが現実的!
☑️ 別居したら、できるだけ早く家計をきちんと分離しよう!
同居中、配偶者名義の保険料の引き落とし口座を自分の口座にしているケースは多いと思います。そして、別居後も引き落とし口座をそのままにしていたため、配偶者名義の保険料を引き続き支払い続けることになっている場合もあるでしょう。
この場合、配偶者のために支払っているのだから、あとで財産分与などで考慮されるだろうとなんとなくイメージし、支払い先口座の変更を行わない状態を続ける方もいるのではないでしょうか。
では、この保険料は、その後の手続(財産分与や婚姻費用)で考慮されるのか、それとも一刻も早く支払いをやめた方が良いのか、以下で解説していきます。
1 保険は別居日時点での解約返戻金を財産分与する
まず、財産分与における保険の扱いについては、別居日時点での解約返戻金を共有財産として財産分与することになります。このとき、名義についてはどちらでも共有財産となります。
また、実際に保険を解約する必要はなく、別居日時点での解約返戻金を保険会社に算出してもらい、その額を共有財産として財産分与を行えば足ります。
なお、解約返戻金については、「【忘れがち!】財産分与の対象になる保険の「解約返戻金」について解説!」(https://riko-net.com/divorce-money/insurance)でも解説していますので、参考にしてください。
2 別居後に支払った保険料に相当する部分は特有財産
一方で、別居日以降に保険料を支払った場合の、その保険料に相当する部分は、支払った人の特有財産ということになります。つまり、それについては共有ではなくなります。
そのため、あなたが配偶者名義の保険の保険料を別居後も負担した場合は、別居後の保険料に対応する部分(解約返戻金の一部)はあなたのものとして、財産分与額を計算することができることになります。
とはいえ、別居後の保険料の負担については、離婚協議の中では端っこのことであるため、忘れてしまったり、軽視してしまうことが多いです。そのため、厳密に計算をせず、なあなあに処理をしてしまう結果、支払い損になってしまうケースも多いでしょう。
したがって、別居日以降、配偶者名義の保険の保険料を支払っている場合は、支払い先口座を一刻も早く配偶者の口座に変更してもうらべきだと思います。
3 婚姻費用では考慮される可能性も
ただ、あなたが婚姻費用(別居期間中の相手の生活費)を支払っている側なら、支払っている配偶者名義の保険料分を婚姻費用から差し引くということも考えられます。
本来、別居後は配偶者がその保険料を負担するべきだからです。
したがって、支払ってしまった保険料分は、婚姻費用の中で控除することが現実的な方法と言えるでしょう。
弁護士の本音
上記の通り、配偶者名義の保険の保険料を負担している場合は、まずは支払い先口座を変更してもらえるか配偶者に連絡をするべきでしょう。
また、その他にも、別居後、配偶者のために支払っているものがないか、全て確認し、家計の分離を行っていくことも重要でしょう。別居後に家計がぐちゃぐちゃだと、そもそも家計がまだ一つであり、別居だったとみなされない可能性すら生じます。
離婚問題はかなりの経済的負担が生じるものですので、細かいところにも気を遣って、適切な負担にとどまるよう、慎重に対応を行うことをお勧めしたいと思います。