プロキオン法律事務所の弁護士荒木です。
別居時に親が子供を一方的に連れ去る行為は、世界的には誘拐とみなされる地域も多く、日本でも社会問題として一定程関心を集めています。
しかし、日本ではその問題意識は低く、別居時に親が子供を連れ去ることは当たり前に行われているのが現状です。
それでは、妻(夫)が子供を連れ去っての別居を計画していることに気づいたとき、あなたはどうすればよいでしょうか。
そのまま連れ去られてしまった場合には、子供の親権は高確率で連れ去った妻(夫)が取ることとなります。そしてあなたに認められるのは、月に1回2時間程度の面会交流がせいぜいです。
このような未来を阻止するためには、いったい何ができるでしょうか。
以下、できるだけわかりやすく解説していきます。
なお、連れ去れてしまった後の対応については以下の記事をご参照ください。
(2023年11月17日更新)——帰宅すると、妻が子供を連れ去って別居を開始してしまっていた...離婚に特化したプロキオン法律事務所の弁護士の荒木です。こうした妻の子供の連れ去りは、子供を持つ父親からすると、悪夢のよ[…]
強制的に連れ去りを止めることはできない
連れ去りを強制的に止める法的手段は存在しません。
そのため、まずは話し合いで連れ去らないよう求め、相手の説得に努めることが大切です。
もし相手が連れ去りをしないことに合意した場合には、連れ去らないという約束を書面に残しておきましょう。
そのような約束によってただちに法的な拘束力が生じるわけではありませんが、もし相手が約束を反故にして連れ去った際には、その後の「子の監護者指定・引き渡しの審判・保全処分」といった手続きにおいてあなたに有利な事情になります。
「子の監護者指定・引き渡しの審判・保全処分」の詳細については以下の記事を参照してください。
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話し合いで相手が納得してくれればいいですが、それが難しい場合には、連れ去りを止めるために次の3つのステップを行うことをお勧めします。
これは、もし今後相手が子供を連れ去った場合に相手が監護権や親権の獲得において不利になるような布石を打つことによって、相手に連れ去りを思いとどまらせるという趣旨の行動です。
この3つのステップを行なったからといって相手が連れ去りを思いとどまるとは限らないという点にはご注意ください。
連れ去りを止めるための3ステップ
①警察への相談
同居中の親が別居するにあたって子供を連れ去ったとしても、未成年者拐取などの犯罪には当たらないことが基本です。
そのため、警察が積極的に動いてくれることはないでしょう。
それでも、警察に相談することによって、警察から相手に、きちんと話し合うよう促してくれたりすることがあります。
一般市民にとっては警察の権威は大きく、そのことで連れ去りを思いとどまることもあります。
また、事前に相談しておくことによって、もし連れ去れてしまった場合に、子供の安否確認など警察の対応が円滑に進むことが期待できます。
②弁護士からの通知
相手に連れ去りを思いとどまらせるには、あなたの弁護士から正式に連れ去り行為を行わないように通知することも有効でしょう。
弁護士から通知をしたとしても法的な拘束力が生じるわけではありません。しかし、正式に連れ去り行為を行わないよう申し入れられていたにも関わらず連れ去りを行なったことは、後の「子の監護者指定・引き渡しの審判・保全処分」で相手にとって不利な事情となります。
③「子の監護者指定の審判・保全処分」の申立て
「子の監護者指定の審判・保全処分」とは、裁判所に対して、速やかに子供の監護者を決めてほしい=別居する場合にどちらが子供を連れて行くべきか決めてほしいという趣旨の申立てです。
家庭裁判所にこの申立てを行うことによって、裁判所の手続きの中で、どちらが子供を連れて行くべきか決定することになります。
この申立てが係属しているにも関わらず子供を一方的に連れ去ることは、裁判所での手続きを軽視する行為とも捉えられ、今後の裁判所での手続きの中で大きく不利な事情になります。
まとめ
このように、相手との話し合いで連れ去りを止めることができない場合には、相手が連れ去りをした場合のデメリットを大きくすることによって相手の連れ去りを抑制する方法をとることになります。
紹介した3つのステップは、相手が連れ去る前に行わなければならず、時間との争いになります。
もし相手が連れ去りを計画していることに気づいた場合には、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。
「子の監護者指定の審判・保全処分」の申立てを行なったとしても、この手続きで負けてしまった場合は、相手が子供を連れて別居することになります。
この手続きで監護権を獲得し、ひいては親権を獲得するには日頃からの子供との関わり方が重要になります。
そのためにはどのような行動が必要であるかについては下記の記事を参考にしてください。