男性必見!妻に子供を連れ去られたときに必ずやるべきこと

(2023年11月17日更新)

——帰宅すると、妻が子供を連れ去って別居を開始してしまっていた…

離婚に特化したプロキオン法律事務所の弁護士の荒木です。

こうした妻の子供の連れ去りは、子供を持つ父親からすると、悪夢のような状況です。

離婚はただでさえ難しい問題ですが、子供の親権や監護権、面会交流で夫婦双方が揉めると感情的な争いに発展し、さらに問題は複雑になります。

妻に子供を連れ去られてしまった場合、何から手をつけていいかわからず、途方にくれてしまう方も多いです。
それでは、同居中の妻に子供を連れ去られてしまった場合、必ずやるべきことを弁護士が教えます。

1 第一に所在の確認を

不安そうにスマートフォンを見るスーツ姿の男性

(1)所在の確認の必要性

まずは、必ず、別居を始めた妻と子供の所在を確認しましょう。妻と子供がどこにいるのか知ることは、今後、離婚の話し合いや、家庭裁判所での法的手続を進めるために必要となります。
家庭裁判所に子供の引き渡しを求める場合や面会交流を求める場合、妻の現住所の記載が必要となります。

参考 面会交流調停(裁判所HP)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_08/index.html

また弁護士を通じて交渉をする場合にも、一般的には、弁護士から妻の現住所地に郵便で受任通知(弁護士が依頼を受けたことを通知する手紙)を送付します。

住所がわからないと、これらのアクションを取る時期も遅れてしまうことから、現在の居住状況を把握することが重要となります。

(2)連れ去り別居の場合の所在について

妻が子供を連れ去り別居を開始した場合、所在としては下記の3つの可能性があります。

  1. 妻の親族宅(もともとの生活圏と親族宅が近い場合、可能性が高いです。)
  2. 妻が新たに契約した賃貸物件(夫に秘密で計画的に準備を進め別居を開始することも。)
  3. 緊急避難場所の利用(福祉事務所、民間シェルターなど)

まずは、速やかに、妻か子供に電話連絡し、別居している場所を確認します。
もっとも、妻も警戒して、教えてくれなかったり、連絡がとれないケースが多いです。中には、妻が、夫に、置手紙を残して別居を開始するケースもあります。

その後は、妻の親族(両親や兄弟姉妹)などに電話連絡し確認します。

Aの妻の親族宅にいるケースであれば、親族への連絡で判明することもありますが、妻から事前に口止めされている可能性もあります。

Bのように別途賃貸住宅を契約しているケースでは、妻が計画的に別居をしていることが多く、別居開始と前後して、妻の代理人弁護士から受任通知というお手紙が来ることもあります。

その場合は、妻の代理人弁護士を通して、妻とやり取りをすることとなります。妻の弁護士の連絡先は通常は受任通知に弁護士名、住所、電話番号、場合によってはメールアドレスなどの連絡先の記載があります。
なお、弁護士の名前さえわかれば、日本弁護士連合会(日本国内の弁護士全員が加入している強制加入団体)の「ひまわりサーチ」で弁護士の事務所名、住所、電話番号、ファックス番号などは調べることが可能です。

参考 日本弁護士連合会 ひまわりサーチ
https://www.bengoshikai.jp/

そのため、妻や子供の所在に関しても、代理人弁護士に確認することになります。ただし、弁護士も、守秘義務の関係から、妻や子供の所在は教えてくれないことが多いでしょう。

2 警察は家庭内の問題では動いてくれない傾向

ダメな例として×を示すスーツの男性

(1)警察への捜索願、警察による安否確認について

妻や親族、弁護士に確認しても妻と子供の所在がわからない場合には、警察署に相談します。
必要に応じて警察に捜索願を出すことも可能です。
警察の生活安全課では、妻や親族、弁護士などに電話などで連絡し、妻と子供の安全について確認の協力をしてくれることが多いです。

警視庁も、以下の通り、行方不明者に対しては届出を案内しています。

以下、引用。

 ご家族等が行方不明になられた場合は、すぐに110番をするか、警察署に届出てください。

  • 行方不明者が行方不明となった時における住所又は居所を管轄する警察署
  • 行方不明者が行方不明となった場所を管轄する警察署
  • 行方不明者届を届出る方の住所又は居所を管轄する警察署

(引用 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/missing/info.html

(2)警察の対応の限界について

しかし、同居中の妻による子供の連れ去りは、安全の確認さえとれてしまえば、警察は所在の確認まではしてくれません。
警察の姿勢としては、別居については、基本的には家庭内の問題だからという理由でなかなか動いてくれないのです。
比較的多いのは、警察が電話で妻や代理人の弁護士と話をして、「夫が怖いので住所地は言えないが、安全なところにいて、無事である。」と言われれば、警察はそれ以上は動いてくれないケースです。

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子供に会うための法的手続については、別居後、速やかに弁護士に相談を

スーツの男性弁護士に相談している男性の相談者

(1)子供を連れ去り返すのは未成年者略取罪が成立する可能性も

妻が子供を連れ去り別居を開始したとき、多くの男性は、速やかに子供に会いたいと願います。しかし、夫が、別居中の子供を、勝手に連れ去るのは絶対にNGです。なぜなら、共同親権者である夫が別居中の子供を連れ去った場合、未成年略取罪(刑法224条)が成立する可能性があります。

最高裁判所平成17年12月6日判決(刑集59巻10号1901頁)は、以下の通り、離婚成立前の親権者による連れ去りであっても未成年者略取罪の成立を認めています。

以下引用。

被告人は,離婚係争中の他方親権者であるBの下からCを奪取して自分の手元に置こうとしたものであって,そのような行動に出ることにつき,Cの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから,その行為は,親権者によるものであるとしても,正当なものということはできない。また,本件の行為態様が粗暴で強引なものであること,Cが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること,その年齢上,常時監護養育が必要とされるのに,略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると,家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。以上によれば,本件行為につき,違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり,未成年者略取罪の成立を認めた原判断は,正当である。

参考
刑法224条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
※略取とは、親権者の意に反して、未成年者を無理やり連れていくことです。

(2)親権者の争いでも別居後の連れ去りはマイナス事由に

さらに、今後の家庭裁判所の親権や監護権の判断においても、別居中の子供を勝手に連れ去ることは、非常に大きなマイナス事由となってしまいます。

(3)速やかに家庭裁判所に家事審判、保全処分の申し立てを

そのため、妻が子供を連れ去り別居を開始した場合は、基本的には家庭裁判所に調停や審判、仮処分などの法的手続を申し立てることとなります。その場合、具体的には、下記の手続などを、家庭裁判所に申し立てることを検討します。

 面会交流を求める審判

 子の引き渡しと監護権者指定を求める審判・仮処分

ところが、これらの手続のうち、どれを選択すべきなのか、法律的な見通しはどうなるのか、どうすればあなたに有利に進められるのかどうかについては、非常に専門的な判断が求められます。

その一方で、別居開始から時間が経てば経つほど、子供が別居後の環境に馴染んでしまうので、緊急の対応が求められます。

そうなので、妻が別居を開始したら、可能な限り、早急に、離婚に強い弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

弁護士のホンネ

この記事を読んで、
「あれっ?同居している妻が、子供を連れ去って別居するのはOKなのに、別居中の夫が子供を取り返すのはNGなの?」
と不思議な思いになるかもしれません。
でも、実際は、実務ではそのような運用となっています。
昨今の東京地裁令和3年9月16日判決(令和2年(ワ)13622号)では「原告は,被告は正当な理由なく子らを自宅から突然連れ去り,原告の監護権を侵害した旨主張するところ,子の監護権が第一次的には子の利益のためのものであって父母の利益を保護するためのものではないと解されることからすれば,父母の一方(監護親)が別居に際して子を連れて出たことなどによって父母の他方(非監護親)による子の監護権行使が妨げられている場合であっても,それが一概に非監護親の監護権を侵害するものとして不法行為を構成するとはいえず,別居前の子の監護の状況,別居に至った経緯及び別居の態様,別居後の父母及び子の状況,監護に関する子の心情ないし意思等の諸般の事情を総合的に考慮し,監護親が非監護親による子の監護権行使を妨げていることが社会通念上相当性を欠くといえる場合に初めて非監護親に対する不法行為を構成するものと評価されるというべきである。」と同居中の子供の連れ去りについて原則として損害賠償の対象とはならないと判示しています。
家庭裁判所は、同居中の子供を連れて別居することについては寛容なのですが、別居中の子供を連れて帰るのには非常に厳しい態度をとります。
家庭裁判所は、同居中の子供を連れて別居することについては寛容なのですが、別居中の子供を連れて帰るのには非常に厳しい態度をとります。
このような実務の運用は、ダブルスタンダードにも思え、批判も多いところですが、積み重ねられた実務というものは一朝一夕には変わりません。
そうですから、子供と一緒に暮らすために、一番大事なことは、子供を連れ去られないこと・妻に別居をさせないことなのです。
一方で、子供を連れ去られてしまった場合には、取り返しのつかないことになる前に、速やかに弁護士に相談をしてください。

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