知らない間に離婚が成立していた!?離婚届を勝手に出された場合の対処法

離婚というものは人生の一大事ですから、パートナーからの離婚の求めに応じるかどうかは即断するべきではありません。
あなたが離婚をしたいと思わなければ、当然拒否をするべきです。

ただ、あなたに離婚を拒否されたパートナーが、強行的な手段に出るかもしれません。
実は、あなたの意思にかかわらずに、形式上、強行的に離婚を成立させてしまえる手段が存在します。
それは、あなたに無断で離婚届を役所に提出する、という手段です。

今回は、パートナーに離婚届を役所に提出された場合の話と、その予防法を解説します。

1 役所は離婚届の形式面の確認のみで離婚届を受理してしまう!

離婚は人生の一大事であり、人生そのものに多大な影響を与える重大な手続であるにもかかわらず、離婚届の受理をする役所には形式的なチェックの権限しか与えられていません。
そのため、離婚届の提出を受けた役所は、離婚届の記載内容に不備がないかどうかを確認し、離婚届の記載に形式的な不備がなければ、なんとその点の確認だけで、離婚届を受理します。
役所は、夫婦が本当に離婚をしようと考えているかどうかを確認しませんし、夫婦が双方揃って離婚届の提出に行くことも求められておらず、離婚届を郵送で提出することさえ認められています。
したがって、たとえその離婚届のあなたの署名欄が、パートナーにより偽造されたものであったとしても、離婚届の記載に形式的な不備がなければ、役所は離婚届を受理します。
そして、役所に離婚届が受理されると、その時点で離婚が成立した扱いとなって、戸籍も書き換えられてしまいます
このように、離婚届は、事実上、夫婦の一方が無断で提出することができてしまうのです。

2 離婚する意思がなければ離婚は無効!

話し合いによる離婚(協議離婚)が有効に成立するためには、離婚届を役所に提出する時点で夫婦の双方に離婚する意思があることが必要です。
そのため、パートナーが無断で離婚届を提出した場合には、離婚は無効です。

なお、夫婦の双方に離婚する意思があるかどうかは離婚届を役所に提出する時点を基準に判断されます。
そのため、離婚条件の合意が成立して離婚協議書が作成されており、さらには離婚届の記入も終えていたとしても、その離婚届を提出する瞬間に離婚をする意思がなくなっていれば、離婚は無効です
たとえば、離婚届の作成まで全て整え、パートナーが役所に離婚届を提出しに行くこととなっていたとしても、パートナーが離婚届を提出する前にパートナーに対して「やっぱり離婚したくない!離婚届は提出しないで!」とメールの連絡をしたり、役所に電話を掛けてその旨を伝えておけば、その後にパートナーが離婚届の提出を強行したとしても、その離婚は無効となります。

※参考判例

最判昭和34年8月7日

「上告人から届出がなされた当時には被上告人に離婚の意思がなかつたものであるところ、協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、本件の如くその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になつた以上、右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない。そして、かならずしも所論の如く右翻意が相手方に表示されること、または、届出委託を解除する等の事実がなかつたからといつて、右協議離婚届出が無効でないとはいいえない。」

3 離婚は無効なのに・・・役所は簡単に戸籍を訂正してくれない!

役所にいくら「離婚は無効!」と説明をしても、役所は離婚の記載のある戸籍を訂正してくれません。
役所に戸籍を修正してもらうためには、家庭裁判所に「協議離婚無効確認調停」を申し立てる必要があります
そして、調停の期日にて、パートナーと話し合って、パートナーとの間で離婚が無効であるとの合意を成立させなければなりません。
離婚が無効であるとの合意が成立すれば、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、合意に相当する審判をしれくれます。
もしパートナーが頑なに離婚の無効に合意しない場合には、調停は不成立となり、終了してしまいます。
その場合には、さらに協議離婚の無効を確認する裁判を提起して、協議離婚の無効を確認する判決を得る必要があります。

4 離婚届をパートナーに勝手に提出させない!

では、こうした離婚届の偽造や無断提出をさせないような対策を紹介します。

(1)相手にリスクを説明しよう!

ア 犯罪行為となる!

離婚届を偽造する行為は犯罪行為となりますので、絶対にやってはなりません。

具体的には、役所に提出する目的で離婚届を偽造する行為には「私文書偽造罪(刑法159条1項)」が、その偽造した離婚届を役所に提出する行為には「偽造私文書行使罪(161条1項)」が成立する可能性があります。

さらには、離婚届自体は偽造ではない(すなわち、あなたがかつて署名・押印したことがある離婚届であった)としても、離婚の同意がないことを知りながら役所に提出した場合には「公正証書原本不実記載等罪(刑法157条1項)」が成立する可能性があります。

このことをパートナーに明確に伝えて、離婚届を勝手に提出されないように牽制しましょう。

イ 他の人と再婚しても重婚となる!

パートナーが離婚届を偽造してまで強行的に離婚を急いでいる理由が、誰か他の人との再婚を急ぎたいからというものである場合もあります。

その場合も、あたなとの離婚は無効ですから、他の人と婚姻をしていたとしても、重婚の状況となり、婚姻取り消し事由となります。

また、「重婚罪(刑法184条)」で処罰される可能性もあります。

刑法184条は「配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。」と規定し、再婚相手も処罰の対象とすることを明記しており、重婚であることを知っていた再婚相手も処罰の対象となることを明らかにしています。

このことをパートナー(及び、パートナーが再婚したい相手が判明している場合にはその相手)に明確に伝えて、離婚届を勝手に提出されないように牽制しましょう。

(2)離婚届の不受理申出をしよう!

あらかじめ役所に離婚届の不受理の申出をしておけば、役所はその申出の取り下げがあるまでの間、離婚届を受理しません。

離婚届の不受理申出はパートナーの同意を得ることなく実施することができます。

そのため、パートナーが無断で離婚届を提出してしまう不安が少しでもある場合には、まずは急いで離婚届の不受理申出をしておきましょう

まとめ

  • 役所は離婚届の形式しかチェックしないので、偽造無断提出ができてしまう!
  • 離婚届の偽造や無断提出は種々の犯罪行為に該当する!
  • 無効の離婚の後に他の人と再婚した場合、重婚になる可能性があり、再婚相手も罪に問われる可能性がある!
  • まずは離婚届の不受理申し出を検討しよう!

弁護士の本音

弁護士青木
弁護士のホンネ 

 離婚を望むパートナーの交渉に臨む態度は多種多様です。
あなたにどうにか離婚に応じてもらいたくて下手に出てくる場合もありますが、かなり強弁な態度に出てくる場合もあります。
いずれにしても、あなたが納得しない限りは離婚に合意する必要はありません。
ただ、本文で記載した通り、役所は、離婚届を形式的なチェックのみで受理するくせに、後から訂正するためには家庭裁判所での手続が必要となり、多大な労力がかかってしまいます。
そのため、少しでもパートナーが離婚届を強行的に提出する可能性がある場合には、念の為に離婚届の不受理申出をしておくことをご検討ください
また、離婚届を提出してしまったら、もう離婚は成立してしまい、話は終わりです。
あなたが離婚の条件に少しでも不安がある場合には、離婚届を提出する前に、本当に今の離婚条件で合意して良いものかどうか、専門家にご相談ください。

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