そのストレスフルな話し合いを終え、どうにか離婚条件の話し合いに合意ができた後、最後の最後に離婚届を作成する段階になって立ちはだかることがある離婚届の「証人」欄問題。
離婚届の大部分は夫婦のみで作成できます。
しかし、離婚届の「証人」欄の記載は夫婦のみでは作成できません。
「証人」欄の作成がスムーズに進めば良いですが、「証人」欄を記載してくれる人がいないなどの問題が発生する場合もあります。
今回は、この離婚届の「証人」の欄について、詳しく説明いたします。
1 そもそもなんで離婚に「証人」が必要なの?
離婚届には「成人の証人二人以上が署名」することが求められています(民法765条、739条2項)。
離婚という極めてプライベートな内容を他人に話すこと自体一般的にハードルが高い行為ですし、ましてやその他人に離婚届の「証人」欄の作成をお願いすることは相当ハードルが高い行為です。
そもそも離婚は離婚する当事者の問題であるはずなのに、わざわざ他人に証人になってもらわなければならない理由はどのようなものでしょうか。
離婚というのは、身分関係に変動を及ぼすものであり、人生そのものに多大な影響を与える重大な手続きです。
それだけ重大な手続きですので、本来であれば離婚の手続(特に離婚する夫婦の意思の確認など)は慎重に行わなければならないはずです。
しかし、役所は、記載の形式面に不備のない離婚届が提出されれば、それ以上特にチェックをすることなく、離婚届を受理します。
仮に離婚届が一方当事者に無断で作成されたものであったり、一方当事者が離婚届の提出を拒んでいたとしても、役所は離婚届を受理しますし、形式上その時点で離婚は成立してしまいます。
ここで離婚届の作成の形式面に「証人」という第三者による署名・押印というステップを介入させることとすれば、離婚する当事者は「証人」に対して離婚について説明をすることとなりますので、離婚自体を改めて慎重に検討するきっかけとなります。
また、「証人」に離婚届に署名・押印をさせることを通じて、離婚届の無断作成・無断提出などの事態を防止する効果も期待できます。
そのために、法律(民法)は、あえて「証人」という他人に離婚届に署名・押印をさせるというハードルが高い行為を要求することで、離婚を慎重に検討させるとともに、離婚届の無断作成・無断提出を防止することを企図しているのです。
2 「証人」の欄は誰に作成してもらえばいいの?
離婚する当事者以外及び未成年者以外であれば誰でも「証人」になることができます。
友人や両親のみならず、全く面識がない人に「証人」欄を作成してもらうことでも問題ありません。
また、「証人」は2人必要ですが、夫婦の双方から1人ずつ探す必要はなく、いずれか一方が2人の証人に頼むことで問題ありません。
ただし、離婚当事者の押印した印鑑と証人の押印した印鑑が同一の印鑑だと離婚届は受理されませんので、両親にお願いする際には注意が必要です(印鑑自体は実印でなく認印で問題ありません。)。
なお、どうしても「証人」欄を作成してくれる人が見つからない場合には、証人代行サービスを行っている行政書士などに頼むのが良いでしょう。
3 絶対に「証人」欄を作成しなければならないの?
「証人」欄の記載が求められている趣旨は、上述したように、離婚を慎重にさせ、離婚届の無断作成・無断提出を防止する点にあります。
そのため、調停離婚・審判離婚・裁判離婚の場合は、裁判所が夫婦の離婚意思を確認していますので、「証人」欄の作成は不要になります。
つまり、「証人」欄を作成しなければならない場合とは、夫婦の話し合いで離婚が成立する協議離婚の場合のみです。
4 「証人」欄を自分で書いちゃだめなの?
離婚届の「証人」欄が空欄のままでは、役所は離婚届を受理してくれません。
かと言って、「証人」欄を自分で記載して離婚届を提出することは犯罪(私文書偽造罪・同行使罪)となってしまいますので、絶対におやめください。
5 「証人」欄を記載した場合の責任
「証人」欄を記載した場合に生じる責任は、「証人」をお願いする際に気になることだと思います。
結論を言いますと、「証人」欄を記載したことにより何らかの法的な責任が発生することは通常ありませんので、ご安心ください。
ただし、離婚届が偽造されたものであることを知っていた場合には、私文書偽造罪・同行使罪に加担(幇助)したこととなり得るため、絶対におやめください。
まとめ
- 当事者以外で成人以上の人であれば誰でも証人になれる!
- 調停や裁判で離婚になる場合の離婚届では証人は不要!
- 証人欄を離婚する人が書くのはNG!
- 証人に法的な責任が発生することはない!
弁護士のホンネ
離婚の話し合いを終え、離婚条件も決まり、あとは離婚届の作成・提出を残すだけとなれば、ストレスフルだった離婚を巡る争いもあと少しで終わりです。
この記事がスムーズな協議離婚成立の助けになれば幸いです。