プロキオン法律事務所の弁護士の荒木です。
離婚のために「調停」をする、といったことが言われることがあります。
ここで言われている「調停」の正式名称は「夫婦関係調整調停」といいます。
離婚のイメージの強い「調停」ですが、実は、これは必ずしも離婚のためだけに行われるものではありません。
夫婦関係を修復するためにこの「夫婦関係調整調停」を使うことも可能です。
この場合、俗に円満調停とか、夫婦円満調停と呼ばれます。
そこで今回は、
・「夫婦円満調停」とは何か。
・「夫婦円満調停」ではどのようなことを決めるの?
・「夫婦円満調停」がうまくいかなかったときはどうなるのか。
についてお話ししたいと思います。
「夫婦円満調停」とは
「夫婦円満調停」は、夫婦の円満な関係性の構築のために行われる調停です。
夫婦が予め決められた期日に家庭裁判所に出頭した上で、中立な立場である調停員を通して、関係の修復に向けた話し合いを行う手続きです。
具体的な手続きの進行としては、夫婦が交互に調停室という裁判所内の部屋に入り、調停員を通して、互いの意見を伝え合うという流れになります。
1回の期日で結論が出なければ、2回目以降の期日を設けます。
夫婦の間で落ち着いた話し合いをすることが難しい場合などに、第三者を間に入れて話し合うことで、夫婦が円満な関係を再構築することを後押しする手続きです。
夫婦円満調停ではどのようなことを決めるの?
夫婦円満調停では、夫婦の今後の関係に関する考えや、夫婦関係を再構築するためにはどのようなことが必要であるかを話し合います。
夫婦が関係の再構築に向けて合意をした場合には、調停条項が定められます。
具体的には、
「お互いに協力し合って円満な家庭を築くよう努力する。」
「深酒をしない。」
「競馬、麻雀、パチンコ、スロット等の賭け事を慎む。」
「子の前で夫婦喧嘩をしないようにする。」
といった、基本的な条項や、生活に密着した具体的な遵守事項を定めた条項を取り決めることが多いです。
この条項に違反した場合に罰則があるというものではありませんが、裁判所が調書を作成するため、重みがあるものとして受け止められます。
また、それに違反した場合は、その後、離婚の手続きに進んだ際に、慰謝料の発生原因になる可能性があります。
家庭によっては、この調書を、冷蔵庫など、家の中の見やすい場所に貼っていることもあるようです。
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夫婦円満調停がうまくいかなかったときはどうなるのか。
夫婦円満に向けた話し合いが合意に至らない場合、調停は不成立となります。
調停中に、もしも相手と関係性を再構築することが難しいと考えた場合には、調停の話し合いを離婚に向けた話し合いに切り替えることも可能です。
そのため、関係修復か離婚か迷いがある場合にも利用することができます。
<まとめ>
・「夫婦円満調停」とは、夫婦関係の再構築を行うための調停をいう。
・「夫婦円満調停」では、生活に密着した取り決めをすることができる!
・「夫婦円満調停」で取り決めた内容を破った場合、その後の離婚手続きで慰謝料が発生する可能性がある!
・「夫婦円満調停」の中で、関係修復がうまくいかない場合、離婚についての話し合いに切り替えることもできる!

夫婦間で冷静に話し合いができない場合であっても、裁判所を通して関係修復に向けた話し合いは可能で、実際にそれが功を奏することもあります。
関係の修復というのは非常に難易度が高いものですが、だからこそ、裁判所や第三者の助けを借りるということも必要な場合があります。
これまで、夫婦円満調停は一般にあまり知られていませんでした。しかし、時に絶大に効果が出ることもあります。ぜひ、利用することを検討してみてはいかがでしょうか。
この記事が、みなさんにとっての一助となれば幸いです。