離婚時の財産分与|NISA口座(つみたて投資枠、成長投資枠)は財産分与の対象になる?

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の荒木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 荒木雄平 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

共働き夫婦でNISA口座を利用して資産形成をしている方が増えています。毎月コツコツと積み立てた資産が離婚時にどう扱われるのか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。本記事では、NISA口座の金融資産が離婚時の財産分与の対象になるかどうかを、具体例や成功談・失敗談も交えながら詳しく解説します。

「これだけ一生懸命積み立ててきた資産、離婚でどうなるの?」と不安になっている方の気持ちに寄り添い、分かりやすく解説しますので、最後までぜひご覧ください。

1.婚姻期間中に積み立てたNISA口座は財産分与の対象

NISA口座(つみたて投資枠、成長投資枠)で購入した個別株や投資信託は、基本的に財産分与の対象となります。これは、婚姻期間中に夫婦で築いた「共有財産」とみなされるためです。

なぜNISA口座が対象になるのか?

  • 共有財産の原則:婚姻中に夫婦が得た収入や、それによって購入した資産は共有財産とされます。
  • NISA口座も例外ではない:NISA口座に積み立てた資産も、婚姻期間中に形成されたものなら共有財産とみなされます。

具体例と計算例

  • 例1(成功例):Aさん(30代、ITエンジニア)は、婚姻期間中に毎月10万円ずつNISA口座で投資信託を積み立てていました。結婚から5年間で合計600万円を積み立て、その評価額が800万円に増加していました。離婚時には評価額の800万円を2分の1に分け、相手方に400万円を分与することでスムーズに話がまとまりました。
  • 例2(失敗談):Bさん(40代、金融業)は、NISA口座の資産が財産分与の対象になると知らず、隠してしまいました。後に相手に口座情報が発覚し、不誠実と見なされて調停が長引き、その間に評価額も増えたことで、結果的に相手方に多くの分与額を支払うことになりました。

対処法

「こんなにコツコツ積み立ててきたのに、相手に分けるなんて納得できない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。でも、婚姻期間中に形成した資産は共有財産とみなされるのが法律のルールです。また、株式のNISAに関しては、昨今の株高の影響で、話し合いが長引いた間に評価額が増えたというケースも多いです。冷静に現状を把握し、早めに対策を考えましょう。

2. 贈与や相続で得たNISA口座の資産は例外

親族からの贈与や相続によって得たNISA口座の資産は「特有財産」として扱われ、財産分与の対象外になる可能性があります。

特有財産の立証責任

  • 立証責任:原則として、婚姻期間中に購入したNISA口座の資産は共有財産と推定されます。そのため、「特有財産」であることを主張する側に立証責任があります。
  • 必要な証拠:贈与契約書、相続税の申告書、不動産登記簿などの書類が必要です。

具体例と計算例

  • 例1(成功例):Cさん(30代、薬剤師)は、親からの相続でNISA口座を始めたことを相続税の申告書で立証し、財産分与の対象外と認められました。相続額が300万円だったため、これを分与から除外して計算が行われました。
  • 例2(失敗談):Dさん(40代、公務員)は、「親からもらったお金で投資した」と主張したものの、具体的な証拠を用意できず、NISA口座の資産1000万円全額が共有財産と判断されました。

対処法

「自分のお金だから分与なんて納得できない」というお気持ち、よく分かります。ただ、法律上は証拠が求められるので、感情だけでは通用しません。焦らず証拠を集め、弁護士に相談してみましょう。

3.評価は現在の時価で行う

NISA口座の資産評価は、基本的に現在の直近の残高を基準にします。もっとも、その後売却をした場合は、売却した金額が基準になります。

評価の具体的なポイント

  • 現在の時価で評価:別居時点で保有していた資産は、現在の時価で評価されます。
    • 価格が上がった場合:上がった後の金額が評価基準。
    • 価格が下がった場合:下がった後の金額が評価基準。
  • 別居後に売却した場合:売却金額が評価基準となります。

具体例と計算例

  • 例1(成功例):Eさん(30代、デザイナー)は、別居時にNISA口座で購入した株式の金額が500万円でしたが、その後300万円で売却しました。その後、株式の時価は700万円まで上がっていました。Eさんは300万円で売却した証拠を提出し、適正額である150万円を相手に分与しました。
  • 例2(失敗談):Fさん(40代、営業職)は、別居後にNISA口座を購入時より安い金額売却したものの、売却時の資料を提出しなかったために調停で混乱が生じ、結果的に現在の評価額で評価することになりました。

対処法

「評価のタイミングで損をするのでは?」と不安になる方もいるでしょう。しかし、別居時点の資産が明確なら、その後の価格変動も反映されます。まずは証拠を整理して、専門家に相談してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 別居後に積み立てたNISA資産も分与されますか?

A: いいえ。別居後に積み立てた資産は共有財産ではなく「特有財産」とみなされるため、分与の対象外です。ただし、別居時点での残高が評価基準となるため、その金額を証明する資料が重要です。

Q2. NISA口座の金融資産を分与したくない場合は?

A: 財産分与の対象外にするためには、相手方の同意が必要です。お互いが納得すれば分与しないケースもありますが、専門家に相談して交渉を進めるのが安全です。

Q3. 証拠が不十分な場合、どうすればいいですか?

A: 証拠が不十分だと特有財産の主張が認められない可能性があります。過去の取引履歴や証明書類を集め、弁護士と相談しながら準備を進めましょう。

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弁護士のホンネ

弁護士 荒木
弁護士のホンネ

共働き夫婦でNISA口座を持っている場合、「分与の対象外にしたい」という希望を持つ方が非常に多いです。しかし、法律上は共有財産と推定されるため、双方が同意しない限り対象外にすることはできません。とはいえ、互いに牽制し合いながら話し合いで同意に至るケースも少なくありません。

弁護士からのアドバイスとしては、以下のとおりです。

  1. 資料の準備を怠らない
    • 取引履歴や契約書を揃えておくことで、スムーズな話し合いが期待できます。
  2. 早めに専門家に相談する
    • 財産分与の争点が大きくなる前に弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
  3. 冷静に交渉を進める
    • 感情的にならず、冷静に話し合いを進めることが、最良の結果を得るための鍵です。

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