
でも、子どもが大きくなったら旧姓に戻したい!

このような悩みを抱えている方も多くいらっしゃいます。
そこで、今回は、
・離婚後は原則として苗字はどうなるのか?
・離婚後、元夫の苗字を名乗っても、その後旧姓に戻れるのか?
・離婚後、旧姓を使っていても、やっぱり元夫の苗字を名乗るということはできるのか?
・再婚後に離婚した場合の苗字はどうなる?
といった点についてお話ししていきます!
1.離婚後の苗字ってどうなる?
(1) 婚姻により夫の苗字となった人の場合
日本の法律では、まだ夫婦別姓は認められていないので、夫婦は婚姻するとき、夫または妻のいずれかの苗字に変更する必要があります(民法750条)。
あなたが、夫と離婚した場合には、通常、離婚前の苗字(旧姓)に戻ります。これを復氏と言います(民法767条)。
復氏した場合、離婚の日から3ヶ月以内に、戸籍係に届け出ることによって、元夫の苗字(婚氏)をそのまま使うことができます(民法762条2項)。
旧姓に戻るか元夫の苗字を使用するかは、あなたの自由です!夫の許可も必要ありません!
(2) 届け出期間の経過後は元夫の苗字を名乗れない?
では、3ヶ月を経過してしまった場合、絶対に元夫の苗字を名乗れなくなってしまうのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
離婚して3ヵ月以上経ってから、元夫の苗字を名乗りたいと思った場合、「氏の変更許可の申立て」(戸籍法107条1項)を家庭裁判所に対して行い、これが認められることで元夫の苗字を名乗ることができます。
(3) 苗字の変更が認められる場合って?
(2)の苗字の変更が認められるには、「やむを得ない事由」が必要であるとされています。
単に、自分の気持ちとして元夫の苗字を名乗りたいと思っただけでは、変更は認められず、生活する上で元夫の苗字に戻る必要な事情が必要になります。
もっとも、裁判例によれば基準は緩やかに考えられていますので、多くの場合、元夫の苗字を名乗ることが認められるでしょう。
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2.離婚後も元夫の苗字を名乗ることにしたけど、やっぱり旧姓に戻したい!
離婚するときには、子どもの苗字が変わることに抵抗があったり離婚したことを周りに知られたくなかったりなど種々様々な理由により、離婚後も元夫の苗字を名乗ることにした!でも、子どもも大きくなったし、旧姓に戻したい!という方もいらっしゃるかと思います。
この場合にも、上でお話ししたとおり、同じく「氏の変更許可の申立て」(戸籍法107条1項)により、苗字の変更を申し立てることにより、多くの場合、旧姓に戻ることが認められるでしょう。
3.離婚→再婚→また離婚……この場合の苗字ってどうなるの??
元夫と離婚後も元夫の苗字を名乗っていたところ、再婚し再婚相手の苗字になりました。しかし、再婚相手とも離婚してしまった・・・。
こんなとき、再婚相手との離婚によって戻る苗字は元夫の苗字?それとも生来の苗字(元夫との婚姻前の親の苗字)?
この場合、現在の戸籍実務では、再婚の離婚後に戻る苗字は、生来の苗字ではなく、再婚前の元夫の苗字であるとしています。
ただ、この場合であっても、生来の苗字に戻りたい場合には、同じく「氏の変更許可の申立て」(戸籍法107条1項)によって、生来の苗字への変更を申し立てることで、生来の苗字に戻れる可能性もあります!
<まとめ>
・離婚から3ヶ月以内であれば理由がなくても元夫の苗字を名乗ることができる!
・離婚から3ヶ月経ってしまった後でも、「氏の変更許可の申立て」が認められれば元夫の苗字を名乗れる!
・離婚して元夫の苗字を名乗っている場合でも、「氏の変更許可の申立て」が認められれば旧姓に戻ることができる!
・再婚して離婚した後は、前婚の元夫の苗字に戻るが、その場合も「氏の変更許可の申立て」が認められれば旧姓に戻れる!

本文でもお話ししたとおり、「氏の変更許可の申立て」が認められるために必要な「やむを得ない事由」について、裁判例は基準を緩やかにしています。
例えば、離婚後に元夫の苗字を10年以上使用していたような場合であっても、変更を認めている裁判例があります。
私の個人的な意見としても、個人の人格の象徴である姓については、個人の意思が尊重されるべきであり、氏の変更は悪質な理由によるものでない限りは認めれるべきであると考えます。裁判所の判断にも、そうした価値観が反映されているように思われますね。