1. 別居しても生活費はもらえる
夫と別居した後も、離婚するまで毎月夫に要求できる妻と子どもの生活費=婚姻費用です。
夫に要求できる婚姻費用の金額がいくらになるのかは「養育費・婚姻費用算定表」というものを基準として決まることになります。
「養育費・婚姻費用算定表」の使い方については、 「基本の基本!算定表を使った養育費の計算を弁護士が解説!」にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
表を見て、「こんな額で生活できるわけない!」と思う方も多いのではないでしょうか。
でも、特にお子様がまだ小学生にもなっていないような場合、収入を増やすため働こうにも、お子様の預け先がなかなか見つかりませんよね。
そこで今回は、もらえる婚姻費用は目一杯もらうための4つの方法を、離婚・男女問題を専門とする弁護士がご紹介致します。
なお、これ以降は離婚を決意して婚姻費用の支払いを調停で求める場合を念頭に置かせていただきます。
2. 婚姻費用を目一杯もらうための4つの方法
①婚姻費用分担調停はすぐに申立てをしよう!
法的に婚姻費用を払ってもらえる始期は、通常、調停や審判の申立時とされています。
調停や審判の申立前に請求していて、それが証明できる場合にはその請求時から、とする判例もあります(大阪高決昭62.2.24家月40巻1号184頁等)。
しかし実務上はほとんど調停を申し立てた月の分から婚姻費用が支払われます。
たとえば、平成30年1月1日に調停を申し立てれば、平成30年1月分から婚姻費用の支払い義務が発生します。
また、平成30年1月31日に申し立てをしていれば、やはり平成30年1月分からもらえることが多いです。(調停委員さんによっては、日割り計算をする場合もあります)
離婚の決意が固く、夫に婚姻費用を支払ってほしいと考えているのなら、早めの調停の申立てを強くおすすめします。
②児童手当は収入ではありません
児童手当は子どもを実際に育てている親への支援金ですから、離婚前の別居の状態であっても、子供を実際に育てている親が受給できます。(市役所への申請はできるだけ早めにしましょう。)
もっともこれは収入とはみなされません。
自分の収入であると考える必要はないのです。
離婚をする場合、子どもの「養育費」の金額が気になるもの。 支払ってもらう側も、支払う側も、毎月の養育費がいくらになるか気になりますよね。 では、養育費の金額や相場っていくらなのでしょうか?[…]
③年収がゼロであることを主張しよう!
専業主婦の妻が夫に婚姻費用を請求する場合、実務上よく夫側から反論として主張されるのが、妻に「潜在的稼働能力」があるということです。
これは、働こうと思って働けば得られるであろう賃金を、収入としてカウントするというものです。実際には無職で収入がなくても、です。
よく利用されるのは賃金センサスという基準でおよそ年間120万円程度を収入としてカウントします。
しかし、裁判所は、子が幼稚園児及び保育園児の事案で、「別居期間は短い上、子らの幼稚園・保育園への送迎があり、子らの年齢から病気・事故等の予測できない事態が発生する可能性もあるなど、就職のための時間的余裕は必ずしも確保されていないから、相手方(妻)に稼働能力が存在するとはいえない」としました(大阪高決平20.10.8家月61巻4号98頁)。
子供が幼くて働きたくたくても働けない場合に稼働能力がないということを認めているのです。
カウントされる妻の収入が多ければ、それだけ婚姻費用の額は低くなります。
夫から潜在的稼働能力があると主張された場合には、幼い子供のいる自分には稼働能力がないことをしっかりと主張しましょう。
④俺だけ家賃を払っているとは言わせない!
妻が子供を連れて実家に戻り、夫が自宅に住みながら住宅ローンを支払い続けている場合、夫は住宅ローンについて一部妻に負担するよう求めてくる場合があります。
しかし、住宅が夫名義である場合、夫は住宅ローンを支払うことで将来的に自分の持つ資産の価値を増やしていると評価されます。
また権利者(妻)が無収入の場合、算定表のもととなる計算においても権利者が住居費を支払うことは念頭におかれていません。
こういう場合、こちらは住宅ローンについては一切支払わない、という主張は十分可能ですので、粘り強く交渉をしていきましょう!
今回ご紹介させていただいた方法は、婚姻費用を減額されないために有効な方法です。
もっとも、妻側の特別の事情を主張することによって、婚姻費用を増額する方法もあります。
具体的にどのようなことが「特別の事情」にあたって婚姻費用を増額できるのか、といったご相談に関しましても、当事務所までお気軽にご相談に来ていただければと思います。