外国人との離婚を検討する際に注意すべき、国際裁判管轄と準拠法【要注意!】

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回は、外国人を配偶者として持つ方が、離婚する際に理解しておく必要のある、国際裁判管轄と準拠法について解説します。

1 なぜ国際裁判管轄と準拠法が問題になる?

外国人(外国国籍保持者)と離婚をする際、3つの問題があります。
それは、

日本の裁判所で離婚裁判ができるのかという問題
②日本のどこの裁判所で離婚裁判ができるかという問題
日本の法律で離婚裁判ができるのかという問題

です。

①は国際裁判管轄と呼ばれる問題です。外国人は、自らの母国がありますから、そこの裁判所で手続きをする必要がないのかが問題となります。また、外国人同士の離婚の場合に、日本の裁判所を利用できるのかという問題でもあります。

②は、日本の裁判所で離婚裁判ができるとしても、日本のどこの裁判所で裁判ができるのかという問題です。これは、日本人同士の離婚でも同じように問題となりますね。

③は、日本の裁判所で離婚裁判ができるとして、日本の法律で裁判ができるのかという問題です。外国人に対して、日本の法律を適用させても良いのかという問題意識から生じる問題です。また、外国人同士の離婚の場合は、一層切実な問題といえます。

以下、解説します。

2 国際裁判管轄

外国人との離婚問題を日本の裁判所で解決できるのかについては、人事訴訟法3条の2で答えが示されています。

人事訴訟法3条の2

(人事に関する訴えの管轄権)
第三条の二人事に関する訴えは、次の各号のいずれかに該当するときは、日本の裁判所に提起することができる。
一 身分関係の当事者の一方に対する訴えであって、当該当事者の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
二 身分関係の当事者の双方に対する訴えであって、その一方又は双方の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
三 身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき。
四 身分関係の当事者の双方が死亡し、その一方又は双方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき。
五 身分関係の当事者の双方が日本の国籍を有するとき(その一方又は双方がその死亡の時に日本の国籍を有していたときを含む。)。
六 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき。
七 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方が行方不明であるとき、他の一方の住所がある国においてされた当該訴えに係る身分関係と同一の身分関係についての訴えに係る確定した判決が日本国で効力を有しないときその他の日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき

これらの規定は、従前の裁判所の判例に基づいて新たに定立されたものです。まとめると、以下の要領になるでしょう。

<日本の裁判所で離婚裁判ができるケース>
相手の住所地(または居所)が日本国内にある場合
当事者双方が日本国籍を持っている場合
・当事者の最後の共通の住所地が日本国内である場合
・そのほか日本の裁判所が裁判をすることが正義に適う場合

したがって、日本人同士であれば、相手が外国に住んでいても、日本の裁判所を使えますし、相手が外国人であっても、別居前は日本で同居していたのであれば、日本の裁判所が使えます。そして、外国人同士であっても、相手が日本国内に住んでいたり、別居前に日本で同居していれば、日本の裁判所を利用できることになります。

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3 国内裁判管轄

日本の裁判所で離婚ができるとして、実際にどこの裁判所で離婚裁判ができるかという問題もあります。その答えは、人事訴訟法と民事訴訟法に規定されています。

人事訴訟法

(人事に関する訴えの管轄)
第四条 人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。

人事訴訟法4条により、離婚裁判は、原告または被告の普通裁判籍を有する地の家庭裁判所でできることとされています。

そして、普通裁判籍は、民事訴訟法に規定されています。

民事訴訟法

(普通裁判籍による管轄)
第四条 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。

普通裁判籍は、住所または居所によることが分かりますね。

したがって、まとめると、告または被告のいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に訴え提起できることになります。どちらの裁判所を使うかは、原告に委ねられることになります。

したがって、例えば、原告は東京都内に住所があり、被告は横浜に住所がある場合は、原告は、東京家庭裁判所と横浜家庭裁判所のどちらかを選んで訴え提起できることになります。

こちらの記事もご参照ください。

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4 準拠法

最後に、日本のどこかの裁判所で離婚裁判ができることがわかったとして、日本の法律で離婚裁判ができるのかが問題となります。

これは、法の適用に関する通則法(かつて、単に「法令」と呼ばれていた法律です。)にて規定されています。

法の適用に関する通則法

(婚姻の効力)
第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

(離婚)
第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

まとめると、

・夫婦のどちらか一方が日本に居住する日本人であれば、日本の法律を使う。
・本国法が同じであれば、その国の法律を使う。
・本国法が違う場合は、夫婦が所在する国が同じ時は、その国の法律を使う。
・本国法も違い、夫婦が所在する国も違う場合は、夫婦にとって最も密接な関係がある国の法律を使う。

ということになります。

したがって、以下のような例が挙げられます。

・日本人同士

日本人同士であれば、外国に居住していても、日本の裁判所で離婚裁判をする場合は、日本の法律に基づいて判断してもらえることになります(本国法が同じだから)。

・同じ国籍の外国人同士

日本に在住する韓国人同士の場合は、日本の裁判所で離婚裁判をする場合、韓国の法律を使うことになります(本国法が同じだから)。

・違う国籍の外国人同士

日本に在住する中国人と韓国人のカップルが離婚する場合は、日本の法律が適用されます(夫婦の常居所地が日本だから)。

・日本人と外国人

日本人が外国人を配偶者として持つ場合でも、その日本人が日本で居住しているのであれば、日本の法律を適用してもらえることになります。

なお、外国の法令を使わざるを得ない場合は、その国の法令を調べ、日本語に翻訳をして裁判所に提出するなど、相当の手間暇をかけて裁判を実施していくことになります。

弁護士の本音

弁護士 青木
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今回は、主に外国人を配偶者としてもつ方に向けて、国際裁判管轄や準拠法について解説をしました。

日本の裁判所なのに、必ずしも日本の法律に基づいて裁判を下すわけではない、という点に驚かれるのではないでしょうか。しかし、裁判は、英語で言えば、”Judge”であり、翻訳すれば、「正義」でもあります。必ずしも日本の法律だけを基に判断するのではなく、外国の法律に基づく必要があれば、それに基づいて判断をするわけです。裁判所が、日本の制度・法律という枠組みを超えた「正しさ」「正義」を司る機関であるということが理解できるかもしれません。

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