1. ちょっと待った!示談書のサインに注意!
離婚・男女トラブル専門の弁護士が、不倫慰謝料の示談書について、チェックすべきポイントを解説いたします。
2. 金額は妥当?それとも不当?
通常、不倫慰謝料の示談書や和解契約書では、下記のように支払い義務を認める条文が冒頭に来ることが多いです。
第1条
乙(注・ここでは支払う側を指します。)は、甲(注・請求する側)に対し、甲の配偶者●●との間の不貞行為に関する慰謝料として金300万円の支払義務があることを認める。
ここでは、まず、不倫慰謝料の金額をチェックしましょう!
一般的に、不倫慰謝料の裁判の相場では、
不倫により離婚に至った事案 200〜300万(場合によっては〜500万)
不倫により別居に至った事案 100〜200万
不倫をしたが離婚にも別居にも至っていない事案 50〜150万円
と言われています。(※具体的なご事情により、慰謝料の金額は前後します。)
不倫慰謝料の金額が相場からかけ離れた不当に高い金額ではないか、チェックしましょう。
もし相場より不当に高くぼったくられているのであれば、交渉により減額できるかもしれません。
例えば、上記の例では、金額は「300万円」となっています。
これは、不倫により離婚に至った事案のほぼ上限金額ですね。
そうですから、もし、不倫はあるけれども離婚や別居に至っていない事案であれば、交渉することで減額の余地はあると思われます。
<2020/1/19更新>不倫や浮気の慰謝料を請求する側も、請求を受けた方も、最も気になる点といたしましては、やはり金額ですよね。実際に、法律相談の際には 既婚者の男性、または、女性と不倫をしてし[…]
3. 支払い条件をチェックしよう!「期限の利益喪失」に注意!
慰謝料を分割で支払う場合、下記のような条文を設けることが通常です。
第2条
乙は、甲に対し、前条の金員を、下記の通り分割して、甲代理人名義の銀行預金口座(△△銀行□□支店・普通預金・口座番号●●・口座名義○○法律事務所 預り金口)に振り込み送金する方法により支払う。振込み手数料は乙の負担とする。
記
①平成29年●月から平成●年●月まで、毎月末日限り各金5万円(計60回)
第3条
乙は、②前条の分割金の支払を怠り、その額が10万円に達したときは、当然に期限の利益を失い、乙は、前条の金員から既払い金を控除した残額及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払い済みまで③年5分の割合による遅延損害金を支払う。
ここでチェックすべきポイントは以下の3つです。
① 分割の支払い方法ですが、あなたの希望する条件に沿っているのかちゃんと確かめましょう。
② また、特に注意すべきは3条の②です。
「前条の分割金の支払を怠り、その額が10万円に達したときは、当然に期限の利益を失い、」
これはどういう意味かと言うと、もし分割の支払いができず滞納して、滞納した金額が10万円に達した時(すなわち、まるまる2回分滞納した時ですね!)は、残りの金額を一括で支払わなければいけないと言うことです。「期限の利益を失い」とは、残りの金額を一括で支払うと言う意味です。
例えば、300万円を5万円ずつ60回払いと約束したとしても、10万円滞納指定しまうと一括で支払わなければならなくなります。
こちらについては、通常、2回滞納した場合(上記例で言うと10万円ですね!)に残りの金額を一括で支払わなければならないとの条文にすることが多いです。
しかし、請求者側に有利にすると、「1回でも滞納した時は期限の利益を喪失する」と定められていることもあります。
2回滞納であれば、うっかり振り込み忘れた時でも大丈夫ですが、1回滞納だとうっかりミスでも問答無用で一括で支払わなければならなくなります。
そうですから、できれば2回滞納した場合に期限の利益を喪失すると言うように変更してもらいましょう。
③ もし分割払いを滞納してしまった場合、遅延損害金と言う罰金を払わなければならないと定めることが多いです。
こちらは通常、残額の●分と言うように割合で定めることが多いです(1分=1パーセントですから、例では5パーセントですね。)。
これについても、請求者側に有利にすると、14.6分(すなわち、14.6パーセント)など高い利率が定められていることが多いです。
ここは法律の原則通り、5分(5パーセント)にしてもらうよう交渉しましょう。
4. 詰めにも注意!口外禁止・接触禁止・清算条項
さあ、ぜひ最後まで気を抜かずに確認しましょう。
第4条
1 甲及び乙は、正当な理由がない限り、本和解契約締結の原因、経緯、事実及び合意内容につき、第三者に一切開示・漏洩しない。
2 甲及び乙は、本書第2条の定める慰謝料の支払いをもって甲乙間に存する一切の紛争を解決したものとし、今後新たに相手方の行為によって損害を被らない限り、相手方に連絡をせず、また損害賠償その他の金銭の請求を行わないことを相互に確認し、誓約する。
このように口外禁止(第三者に不倫の事実などを伝えてはいけない!)や、接触禁止(お互い本人や親族などに接触しない!)などの条文を設けることもあります。
その際、口外禁止や接触禁止に違反した場合の罰金を定められていることもあります。
もし罰金が定められていたら、そこは削除してもらうよう交渉しましょう。
第5条
甲と乙とは、(本件に関して)本和解契約書に定めるほか、甲乙間になんらの債権債務のないことを相互に確認する。
そして、一番大事なチェックポイントがこちら。
こちらはいわゆる清算条項と言われるものです。
清算条項を設けると、お互い、示談書に定めたもののほか何らの請求は出来なくなります。
慰謝料を請求されて示談書を締結する場合には、必ずこちらの清算条項を設けるようにしましょう。
万一、こちらの清算条項を設けないと、その後も、相手方から不倫慰謝料やら損害賠償やらをあの手この手で請求され続けたりするリスクがあります。
清算条項をしっかりと設けた示談書を締結すれば、今後、あなたは不倫慰謝料されることはありません!
そして、意外に見落としがちなのが、清算条項に、「本件に関し」を入れるかどうか。
「本件に関し」を入れると、清算されるのは本件=不倫慰謝料事件に関してに限られるので、不倫慰謝料以外の請求されるリスクを完全に封じることはできません。
もし、相手方と特段関係がないのであれば、「本件に関し」も入れず、不倫慰謝料に限らず、すべての請求ができないようにしましょう!

いかがでしたでしょうか。
こちらに挙げたのはチェックポイントのほんの一例です。
実際に、弁護士が不倫慰謝料請求の示談書を作成やレビューする際には、一字一句チェックして、少しでも依頼者に有利になるよう交渉します。
もしあなたが示談書を締結するかどうか迷われている時は、無料相談でも良いので、弁護士にご相談されることをお勧めします。