これについて知ることが、夫婦のお互いに対する理解につながるでしょう。
そしてお互いに対する理解が相手への配慮にまで至れば、婚姻生活は円満なものになるかもしれません。
逆に、男と女の違いについて知らないまますれ違いを続けていると、3組に1組が離婚となるこの社会では、婚姻関係の破綻を免れないかもしれません。
離婚の原因として第1位に取り上げられるのはいつも、「性格の不一致」とされています。
私たちが弁護士として離婚問題に携わり、いつも思う疑問がこうしたことです。
なぜ、かつてあれほど恋い焦がれ、そして永遠の愛を誓いつつ、これほど多くの別れが生じてしまうのか。
今回は、この男と女の根本的な違いについて、述べてみたいと思います。
1.結婚っていつからあるの?
人間が、その本性上、「ずっと続く婚姻生活」を前提としているのであれば、
これほど夫(男)と妻(女)がすれ違うということはないはずです。
逆に、これほどすれ違うということは、少なくとも「ずっと続く」婚姻生活というものを、人間はその本性として要求していないということでしょう。
それでも、婚姻というものは大昔からあります。
世界で最も古い物語で、紀元前3000年頃に古代メソポタミアで作られたシュメール文学「ギルガメシュ叙事詩」の中にも、「妻」という記載があります。5000年前に古代文明が花開いた時期からすでに、婚姻制度が存在しているということです。
紀元前8世紀に古代ギリシャの文学者ホメロスによって唄われた「イリアス」や「オデュッセイア」にも、家族や妻への愛や信頼の言及が多く見受けられます。
我々が社会制度うんぬんを問題にする前に、すでに人間にとって、婚姻生活あるいはそれに近い形態が本性的に必要とされていることは疑いがないようです。
それでは、人類学的な理由を見てみましょう。
我々が二足歩行を始めた結果、骨盤が狭くなり、子どもを未熟児のまま産まざるを得なくなったという点が人類学者などから注目されています。
これにより、女は子が生まれてから「当分の間」子に付きっ切りにならざるをえず、子育てに100%のエネルギーを注力せざるをえなくなりました。
その間、誰がその母と子に生活に必要な糧を与えるのでしょうか。
それが、夫であり父である男です。
男は自分の子孫を確実に残すため、子につきっきりで動けない母と、子自身を養うことにエネルギーを注ぐことになったわけです。
そうだとすると、婚姻生活自体は、人類が人類らしい生活を始めた時期、つまり二足歩行を始め、男が狩りをし、女が木の実を拾う生活を始めたときからすでに存在していたものと思われます。
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2.男と女の愛情はいつまで?
では、こうした必然ともいえる男と女の関係があるにもかかわらず、なぜ、その愛情は冷めてしまうのでしょうか。
これについては、アメリカの人類学者ヘレン・フィッシャー博士が詳しく論じています(ヘレン・フィッシャー著/吉田利子訳『愛はなぜ終わるのか』草思社など)。
フィッシャー博士が世界中で行われた国連統計を解析した結果、婚姻生活は4年目で離婚のピークを迎えることが判明しています。
一方、数百万年間人類が経験していた狩猟採集生活を今にも続けている数少ない民族である、アフリカのブッシュマンや、オーストラリアのアボリジニー。こうした民族が子どもを産む頻度は、およそ4年に1度なのだそうです。
ここから推論されることは以下の通りです。
二足歩行により骨盤の空洞が狭くなったことにより、未成熟のまま子を産まざるを得なくなった人類。そこで、子を守って子孫を確実に残すため、女は「当分の間」子に付きっ切りになり、男は食料を確保してくるようになりました。
そう、もともと、子が未成熟のまま生まれてしまうことが、こうした共同生活を行う理由であったわけです。
そして、子どもがある程度大きくなると、母である女は、子に付きっ切りになるほどではなくなります。
このとき、男の目下の役目が終了するのです。
これが、男と女の愛情が薄れても生物学的には「問題がなくなる」理由です。
むしろ、人類全体の生存力を考えれば、多種多様な子どもを残す必要があるため、男は他の女を探すことが理にかなっています。
さて、以上の理由から、男(夫)と女(妻)の愛情は、子に付きっ切りになる必要がある期間限定のものとも言い得るわけですが、その期間こそが、4年というわけですね。
3.ではどうすれば??
そう、ではどうすればいいのか?
科学的には愛情の賞味期限が分かったとはいえ、我々は安心して暮らしたい。
これは、安心安全を求めた末に出来上がった文明社会における、切実な欲求といえるでしょう。
いかに一般的には夫婦関係が脆いものであっても、それを維持できるよう、工夫していくことはできると思います。
その方法については、少し長くなりますので、ご興味のある方は、「夫婦のすれ違いを改善する方法とは?夫と妻それぞれの方法」に書いておりますので、ぜひこちらもご覧いただければと思います。
今回の記事はややアカデミックな部分もありますが、なかなか興味深いところではないでしょうか。
より詳しく学ばれたい方は、NHK取材班「だから、男と女はすれ違うー最新脳科学が解き明かす「性」の謎」(ダイヤモンド社)などをお勧めしたいと思います。