不貞・不倫の事実は打ち上げてはいけない?

離婚を説得する時に不貞・不倫の事実は打ち明けてはいけない?

横浜の弁護士の青木です。
今回は、妻に離婚を切り出そうとしている中、自身の不貞を正直に打ち明けた方が良いかどうか迷っている方のためのアドバイスをします。

1.好きな人がいることが離婚の説得材料になるか?

多くの離婚相談を承ってきましたが、男性(夫)の中には時折、妻に離婚に応じてもらうために、自身に好きな人がいることや、すでに不貞関係にあることを打ち明ける方がいらっしゃいます。

男性(夫)としては、すでに他に女性がいることを伝えることで、妻への気持ちがもはやないことを分かってもらおうということなのでしょう。しかし、結婚前の男女交際時であればともかく、離婚の話し合いの時にこの「正直な」方法がうまくいくかについては、非常に疑問です。

「そうか、自分ではなく、他に好きな人ができてしまったのか。じゃあ、私の所に留まるのはあなたにとって幸せではないから、別れましょうか。」という、極めて心の広い(?)奥様はどれほどの割合でいらっしゃるのでしょうか。そうした回答を期待すること自体、結局自分本位と思われてしまうかもしれません。奥様にそうした考えを持ってもらうことを期待するべきではないでしょう。

2.不貞をしてしまうと離婚は原則認められない運用

不貞をしてしまった場合、妻が離婚に応じてくれない限り、裁判で離婚を求めるしか方法は無くなります。しかし、不貞を行った側からの離婚請求の裁判では、原則として離婚が認められません。このことが分かれば、不貞の事実を妻に伝えることがいかに大変なリスクであるのか理解できるはずです。

以下の実例を見てみてください。これは、実際の裁判の結果です(公表されているもの)。

有責配偶者からの離婚請求(裁判結果)
判決離婚請求者婚姻期間別居期間未成年の子の有無結果
平成14年6月26日東京高裁判決(判時 1801号80頁)28年6年なし離婚◯
平成15年7月31日福岡高裁那覇支部判決(判タ 1162号245頁)13年13年あり離婚◯
平成16年8月26日福岡高裁判決(家月 58巻1号91頁)30年10年なし離婚認められず
平成16年11月8日最高裁判決(裁判集民 215号657頁)9年3年あり離婚認められず
平成19年2月27日東京高裁判決(判タ 1253号235頁)23年9年なし(ただし障害のある成人の子あり)離婚認められず
平成19年5月15日大阪高裁判決(判タ 1251号312頁)21年13年あり離婚◯
平成20年5月14日東京高裁判決(家月 61巻5号44頁)29年13年あり離婚認められず
平成22年11月26日高松高裁判決(判タ 1370号199頁)26年6年なし(ただし障害のある成人の子あり)離婚認められず
平成26年6月12日東京高裁判決(判時 2237号47頁)妻(フランス人)9年2年あり離婚◯

どうでしょうか?これほど離婚が大変になるとは思わなかった方が多いのではないでしょうか?
夫にとって、不貞の事実を伝えることが、あまりにもリスクが高い行動であることはお分りいただけるでしょう。
なお、最後のフランス人妻の事例は、夫側にも問題があるとされており、かなり特異な事例です。


※ 不貞の事実を明かさないことに関しては、不貞をしていないという「嘘」を前提に離婚を進めることであって、不誠実だなどという反論があるかもしれません。しかし、様々な生き方が奨励されている現代社会において、不貞に対する現在の裁判所の運用に疑問を抱く人は多いと思います。仮に不貞があるにしても、不貞がなかったとしたら離婚が認められるはずの期間別居しているのであれば、離婚を認めても問題ないはずです。実際、弁護士や法学者間では、現在の裁判所の運用に対して反対する議論が盛んになっています。


※ ところで、上の表から一見して明らかな通り、不貞をした妻側からの離婚請求事案というのが極めて少ないのがお分りいただけると思います。それは、妻は不貞をしてもなお婚姻費用(生活費)の請求を夫側にするケースが多くあり、一方で不貞された夫側には婚姻を継続するメリットがほとんどないため、交渉や調停段階で離婚合意に至っているからです。

3.ただし不貞の事実を正直に言う必要がある場合も

もっとも、念のために申し上げると、不貞したことを素直に認める必要がある場合もあります。
例えば、すでに奥様が不貞を疑っていて、言い逃れができなそうな場合です。そうした場合も不貞を認めないとなると、逆に不誠実さが際立ってしまい、離婚への合意が遠のいてしまう可能性があります。
ご自身の状況に鑑みて、対応を考える必要があるでしょう。

弁護士のホンネ

基本的には、夫婦間の話し合いの中で、わざわざ不貞の事実を告白する必要はないと考えます。それによるリスクはあまりにも大きすぎ、最悪の場合、その後10年間別居をしても離婚ができない可能性もあるからです。
もっとも、本文にも記載した通り、正直に不貞を認めて誠実さを基礎とした話し合いをするべきケースもありますので、一概には言えません。
なお、「不貞したらもう離婚は原則として認められない」という昭和時代からの考えは、かなり時代遅れだとは思いますが、日本の裁判所は未だにこの考えに縛られています。大きな進展は平成が終わる現在でもありません。それでも、下級審の裁判所では、短期間の別居にも関わらず、不貞をした側からの離婚請求を認容するケースが出てきています。裁判官の中にも現在の運用に疑問を抱いている人がいることを示すものです。時代の変化に応じて、現在の運用も変わっていくものと期待されます。

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