それは、夫が、妻のもっている女性特有の性格を、これまであまり考えてこなかったという点です。
共に暮らしていく妻は、この世界の半分を占める女性の一人です。
この女性というものにあまりにも無頓着であると、日々の生活の中で、少しずつすれ違いが生じ、 ある日突然それが爆発してしまう、ということがよくあります。
今回は、日々を妻と過ごしている夫のみなさんのために、女性(妻)に特有の傾向の一つである、「プロセスの重視」についてお話しします。
1 プロセスを重視する女性の傾向とは?
これをお読みになっているあなたも、女性は結果ではなくプロセスを重視する、ということをどこかでお聞きになったことがあるかもしれません。
以前、「夫婦のすれ違いを改善する方法とは?夫と妻それぞれの方法」でもお伝えしましたが、男性は問題解決力、女性は協調力を、数百万年に渡る狩猟採集時代の役割分担により培ってきました。
男女平等が唱えられている現代社会においても、そうした歴史の名残は色濃く残っています。
こうした男性と女性の傾向をしっかりと配慮するならば、それぞれに応じた話し合い方というものが出てきます。
例えば、相手が男性であれば、言いたいことについては結論を先に述べて、その理由として、より説得的なものを順に述べていくというのが、分かりやすくて効率的なため望まれます。
短くて簡潔なものが、限られた時間と能力を最大限に活かせるからです。
逆に、相手が女性の場合、相手と同等の立場で、協力し合いながら一緒になって答えを見つけていく、ということの方が好まれます。
2 交渉現場でも使われる、女性相手の「プロセスの重視」
実際、欧米の会社では、取引先の担当者が男性であるか女性であるかにより交渉方法を変え、それにより成果を出しているところがあります。
具体的には、交渉相手の担当者が男性である場合は、こちら側は比較的地位の高い役員を連れて交渉に臨み、こちらがベストと思う解決策をピンポイントで提示し、その理由を順序良く効率的に説明していきます。
一方、担当者が女性の場合は、こちら側は、現場担当者複数名を引き連れて交渉に臨み、複数の提案を示しつつ、一つ一つの案について良い面と悪い面を話し合いながら、ベストなものを女性の交渉相手と「一緒になって」選択していくのです。
なぜ男と女はすれ違うのでしょうか。 これについて知ることが、夫婦のお互いに対する理解につながるでしょう。そしてお互いに対する理解が相手への配慮にまで至れば、婚姻生活は円満なものになるかもしれません。&n[…]
3 妻との会話での「プロセスの重視」
女性のこうしたプロセス重視の傾向が分かれば、家庭生活における妻との会話のやり取りでも、工夫できる余地が出てくるのではないでしょうか。
たとえば、妻があなたに対して、家事の分担割合について不満を言ってきたとします。それに対してあなたはどう答えるべきでしょうか。

一方僕は食器洗い、ゴミ出し、風呂洗いをやるよ。それがお互いにとって得意不得意をうまく反映しているものだしね。
と言うのが良さそうでしょうか?
いえいえ、これで奥様の不満がすんなり解消するとはとても思えません。
もし奥様がこの答えにうなずいたとしても、心の奥底ではやりきれない思いを抱き続けてしまうのは間違いありません。
妻は、夫が理屈でもって決定するということに、非常な違和感を感じるでしょう。
先ほどもお話しした通り、女性にとって大事なのは、問題の解決のための「プロセス」です。「上」からの回答をそのまますんなり受け止めることはできません。
たとえば、
ほかに大変なのは、、、うんうん、なるほど、翌日の食事の内容も考えないといけないってことだね。それなら、毎日交代交代で、食事作りの担当を替えるというのを一度やってみようか?
というのはいかがでしょう。
これに対して妻がOKというかは別問題です。
ここで重要なのは、「プロセス」、つまり、妻の言い分にしっかり耳を傾け、妻の不満を取り除ける方法を、「一緒になって」探っていくという姿勢です。
こうした話し合いによって、最終的に結論付けられた結果については、妻も受け入れることができるでしょう。
あなたにも、ぜひ奥様との話し合いにおいては、この「プロセスを重視すること」を実践してみてほしいと思います。
妻の夫に対する信頼や心の安らぎは、日々のあなたの対応の積み重ねによって決まります。
表向きは円満でも、実際は妻が我慢していただけという場合、ある日突然破局が訪れることも多いものですから。

女性の傾向を知っておくということは、円満な家庭生活だけではなく、仕事を始めとする日々の社会生活でも重要なことではないでしょうか。
もはや女性の社会進出が著しい現在、常に男性のやり方ではスムーズにはやっていけない状況になりつつあります。
私も弁護士として仕事をしていて、たとえば相手が女性であるか、男性であるかによって、かかる労力や負担のあり方が変わってきます。
それぞれに合ったやり方で行うことが、問題の解決につながることが多くあります。