【第1回リコネット座談会】−有責配偶者からの離婚請求−②

 
 今回は、第1回リコネット座談会−有責配偶者からの離婚請求−について、前半の続きを投稿いたします。

 前回の内容は【第1回リコネット座談会】−有責配偶者からの離婚請求−①をご覧ください。

3.有責配偶者の離婚請求と証拠について

弁護士荒木
山﨑先生、弁護士として法律相談を受ける際に、有責配偶者側からの離婚請求が絡む事案について何か気をつけていることはありますか。
弁護士山﨑
そうですね。一般論として、自分や配偶者が不倫しているということはなかなか人に言いにくい事実だと思います。
ただ、離婚について本格的に話し合っていく状況において、不倫をしたか、それに対してどういう証拠があるかという点は極めて重要なので、その点についてお客様に丁寧に細かく事情を聞くようにしています。

特に配偶者と話し合いで離婚に至るで終われば良いのですが、話し合いでまとまらず最終的に裁判になった場合、客観的な証拠が残っていないと裁判官は不倫の事実認めてくれないので、客観的にどんな証拠があるのかを聞いて、裁判で不倫が立証できるのかどうかの見通しを丁寧に説明しています。
弁護士荒木
なるほど。
客観的な証拠と不倫が発覚したご事情、ご経緯が大事ということなんですね。
不倫の証拠は、具体的にはどういうものが多いですか。
弁護士山﨑
やっぱり探偵が撮った写真が多いですし、それがあると強い証拠になります。
他にはメールやLINEのやりとりですね。不倫している人が配偶者に見られて不貞がバレてしまったという例が多いと思います。
弁護士荒木

 

 

ありがとうございます。
有責配偶者から離婚請求されている側は、客観的な不倫の証拠がある場合とない場合はどちらが多いですか。
弁護士山﨑
ある例が多いんですけど、しっかりとした証拠は案外少ないです。
弁護士荒木
しっかりとした証拠というのは、先ほどの探偵の写真などですか。
弁護士山﨑
そうですね。一緒にホテルに入る姿を撮影した写真とかがないことが多いです。
弁護士荒木
不倫の確定的な証拠がない場合はどうようなアドバイスをされていますか。
弁護士山﨑
他に何があるかですね。
相手が不倫を認めたならそういう事実を主張していきますが、LINEのやりとりを見たのであればそれを残しているか、そしてそれを見た上で裁判官が判断してくれるか分析的に考えています。
弁護士荒木
ありがとうございます。不倫が発覚した後の経緯も立証のために重要な事実になるということですね。
 
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4.有責配偶者側から依頼を受けた場合の方法選択について

 

弁護士荒木
それでは青木先生、例えば、有責配偶者側の男性からご相談を受けた場合、そういう状況の中で離婚を達成するため、具体的には、弁護士をつけて交渉する、家庭裁判所に調停を申し立てる、訴訟を提起する、など色々な手段がありますが、青木先生は事件処理する場合、どの手段をとることが多いですか。
弁護士青木
私は、原則的に調停の申し立てをお客様にお勧めしています
交渉から始めることもできますが、昨今、書籍やインターネットなどを通じて、有責配偶者からの離婚請求が原則として認められないという解釈はよく知られているので、その状況で交渉してもそもそも奥さんが離婚に頑なに応じないということもよくあります。

奥さんが、交渉の場で話をまとめる必要性を感じない、ある意味余裕のある状況ですから、離婚の話にすら応じてくれないことすらあります。
なので、私は基本的には調停から始めましょうとお勧めしています。
弁護士青木
調停であれば、月に1回裁判所に赴くわけですが、この行動自体、奥さんにとって大きいことだと思うんですね。
毎月調停に参加して離婚について話をするという行動が伴うので、離婚について応じれば良いのかどうかの判断をし始める。
私はそれが重要だと思っていて、判断して経済的にある程度合理性があれば離婚しても良いかなと考えてくれる。

実際に私は有責配偶者の男性と一緒に調停に参加することが多いですが、有責配偶者だから離婚できないということはあまり感じなく、経済的負担はある程度あるが、その末に離婚合意するということがかなりの確率でできているので、調停をお勧めしています。
弁護士荒木
なるほど。
有責配偶者側から離婚の調停を申し立てて肌感覚でいうと何割くらいが調停でまとまっている印象ですか。
弁護士青木
私の感覚だと7、8割ですね。
この7、8割というのは有責配偶者じゃない方の離婚の調停の申し立てとあまり変わらないんですよね。
有責性があるから調停で話がまとまらないという判断はしない方が良いと強く感じますね。
弁護士荒木
話し合いなので、有責配偶者であるのを前提にしたとしてもお互い離婚条件面でまとまる余地が十分あると。
それも7,8割の実績があるということですね。
弁護士青木
そういうことになりますね。
結局、調停かあるいはその後裁判か、もし裁判になると奥さんの方も裁判費用の負担をしなければいけないというのと、離婚の対決による精神的不安定さをずっと感じることになります。

調停の中であれば具体的な金銭面の話しができて経済的なメリットや奥さんにとって現実味のある金額が出てきます。

その一方で、裁判であれば最終的に裁判官が判断するのでどうなるか分からない、調停で最終的に自分が合意すれば、この金額が自分のところに来るということで判断しやすくまとまりやすいのかなと思いますね。
弁護士荒木
先ほどのお話で、あえて交渉からスタートする案件もあるのでしょうか。
弁護士青木
それは奥さんの方が精神的に不安定で調停に来られない場合は交渉からスタートはやむを得ないと思います。

調停で来なければ裁判ですが、裁判ではすぐの離婚は認められがたい環境なので、やむなく交渉から入ることはあります。
ただ調停に参加できない方ですので、交渉も満足にできないことが多いですね。
弁護士荒木
私の経験なんですけど、有責配偶者側から交渉でまとまる事案というのは、奥さん側が先に弁護士をつけて婚姻費用請求するなどの事案でないとまとまりづらい印象がありますね。
弁護士青木
そうですね。
むこうにすでに弁護士がついている場合は、むこうもかなり離婚に前向きで、経済的メリットもさながら離婚すること自体に重きを置いていて、その場合は交渉でも離婚できる場合が十分あると思います。
弁護士荒木
ありがとうございます。
男性の有責配偶者からどういう行動をとるべきかという話でしたが、女性の有責配偶者の場合、同様に調停になるのでしょうか。
弁護士青木
そうですね。やはりその場合も調停が多いです。
女性の場合、旦那さんより収入が低い傾向にあるので、婚姻費用の申し立てができるメリットがあります。

交渉でもできますが、最終的に調停でまとまった方がもし相手が払わなかった場合に強制執行で確実にもらえるわけなので、婚姻費用の申し立てができる以上は調停で手続きをすると。
そして婚姻費用の調停と同時に離婚調停の申し立てをするやり方が多いですね。
弁護士青木
もちろん裁判例の関係で有責配偶者からの婚姻費用請求が難しい場合もありますが、不倫だけが関係悪化の理由じゃないというケースが多々あり、旦那さんにも問題がありそうだという場合は婚姻費用請求が認められることもよくあります。

そうなので、不倫をした側であっても婚姻費用分担調停を申し立てることは多いですね。
仮に調停で請求が認められれば、またはその後の審判で認められれば、奥さんとしては非常に交渉がしやすく、長引けば長引くほど旦那さんのほうが経済的不利益を負うわけなので、旦那さんもなんとか調停の場で早期に解決を図りたいというインセンティブが働きます。
弁護士青木
そうですから、通常の離婚調停と同様に有責配偶者であっても話し合いをまとめやすくなる。
だから女性から申し立てる場合、私の印象でも他の調停と難易度は変わらないかなと思いますね。
調停で話し合いがまとめられやすいと思います。
弁護士荒木
ありがとうございます。
確かに、私の経験でも女性の有責配偶者側から男性に対して婚姻費用分担請求すると、権利の濫用の問題があるかなと思いますが、家庭裁判所の調停実務ですと、調停の段階ではあまり有責性の判断を立ち入って判断しないと。
ただ審判になったら否定される場合がありますが、お互いの主張額の中間をとって解決するということが多いかなと思います。

そうなので、収入が低い女性側の場合には婚姻費用調停を申し立てる意義は十分にあるのかなと思います。
ありがとうございます。

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