
プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

もしあなたが今、このような状況で苦しんでいらっしゃるのであれば、それはまさに「有責配偶者」であるがゆえの悩みかもしれません。
たとえば、40代を迎え、それなりの資産も築き、人生の後半戦を見据えたとき、現在の結婚生活に終止符を打ち、新たな人生を歩みたいと考える方は少なくありません。しかし、不貞行為など、婚姻関係を破綻させた原因があなたにある場合、法律上、あなた自身の意思だけで離婚を成立させることは極めて困難になります。
このページをご覧になっているあなたは、きっと、
- 「なぜ自分だけがこんな目に…」
- 「この状況がいつまで続くのか」
- 「何かできることはないのか」
と、焦りや不安を感じているのではないでしょうか。
たしかに有責配偶者であるあなたが自らの意思で離婚を成立させるのは難しい現状があります。特に、すでに離婚協議や離婚調停を終えて、離婚ができなかったという方は、厳しい状況にあると言えるでしょう。しかし、だからといって、ただ漫然と時が過ぎるのを待つだけでは、あまりにもったいないと思います。
この「離婚できない期間」を、あなたの未来のために有効活用することを考えていただきたいと思います。
この記事では、有責配偶者であるあなたが、将来の離婚に向けて今からできる、具体的な対策について、弁護士の視点から詳しく解説します。
有責配偶者の離婚はなぜ難しいのか?相手が「意地」を張ると長期化する理由
まず、なぜ有責配偶者からの離婚が難しいのか、その理由をおさらいしておきましょう。
民法770条1項には、裁判上の離婚原因が定められています。その中には、「配偶者に不貞な行為があったとき」や「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」といった項目が含まれます。しかし、これらの離婚原因を作り上げた有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
これは、「婚姻関係を破綻させた側からの離婚請求を認めるのは、信義則に反する」という考え方に基づいています。あなたが婚姻関係を破綻させた原因を作ったにもかかわらず、あなたからの離婚請求を認めてしまえば、相手方配偶者は一方的にその不利益を被ることになるからです。
もちろん、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められるケースもあります。具体的には、
- 相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に過酷な状態に陥ることがないこと
- 別居期間が相当長期に及んでいること
- 未成熟の子がいないこと
といった要素を総合的に考慮して判断されます。しかし、これらのハードルは非常に高く、現実的には、相手が頑なに離婚に応じない限り、あなたの意思だけで離婚を成立させるのは至難の業です(約10年程度の別居期間を覚悟しなければなりません。)。
もし、相手が離婚に応じない場合、相手は「意地」を張ってでも、離婚を先延ばしにする可能性があります。あなたへの感情的なしこりや、離婚後の生活への不安から、交渉に応じようとしないケースも少なくありません。場合によっては、調停や裁判に持ち込んでも、相手が徹底抗戦の構えを見せ、結果として10年やそれ以上の期間を要することも珍しくないのです。
「漫然と過ごす」のは、あまりにもったいない!

もしあなたがそう考えているのなら、それは非常にもったいないことです。
長期化するであろうこの期間を、ただ漫然と過ごすのか、それともあなたの未来をより良いものにするために有効活用するのか。この時間の使い方が、離婚後のあなたの人生を大きく左右する可能性もあります。
有責配偶者であるがゆえに、あなたは今、離婚を急ぐことができません。しかし、この「動けない時間」を、将来のための「準備の時間」に変えられる可能性もあります。
当サイト運営・プロキオン法律事務所では、相談室(渋谷駅徒歩5分・横浜駅徒歩6分)またはオンラインにて、無料相談を実施しています。
【対策1】将来の財産分与を見据えた「資産運用」で、資産を最大化する
離婚が長期化するということは、裏を返せば、財産分与をしなければならない時期が当面先延ばしになるということです。これは、資産を形成しているあなたにとって、一つのチャンスと捉えることができます。
夫婦が離婚する際に行われる財産分与の対象となるのは、原則として「別居時点」の夫婦の共有財産です。つまり、あなたが将来離婚することになったとしても、その時に相手に渡す財産は、原則として別居時点のものです。
この原則を利用し、別居時点から離婚時までの間に、すぐに離婚する場合には手放さなければならないあなたの資産を積極的に運用することで、その評価益を、実質的にあなたのものにできる可能性があります。
例えば、別居時点で評価額1,000万円の株式があったとします。これをあなたが運用し、離婚時までに1,500万円に増えたとします。この場合、原則として財産分与の対象となるのは、別居時点の1,000万円部分のみであり、増えた500万円は分与の対象とならない、という考え方が成り立ち得ます。
ただし、ここで非常に重要な注意点があります。
もし、別居時点と同じ証券口座に保有した株式などをそのまま運用し続けた場合、その後の運用益も財産分与の対象になる可能性が高くなります。なぜなら、裁判所では、別居時点の財産の、現時点の評価額を財産分与の対象にする、という運用がなされているからです。
したがって、こうした資産運用をする際は、別居後に新たに開設したあなた名義の口座で資産を運用する、といった一手間の判断と工夫が必要になります。それによって、その後の資産形成はあなた自身の判断と責任の元に行われたものと評価できるのです。一方で、既存の口座で運用を続ける場合は、弁護士と事前に十分な相談を行い、適切なアドバイスを受けるようにしてください。
また、投資にはリスクが伴います。逆に大きく損をした場合であっても、離婚時に配偶者に渡す金額は変わりません。必ずご自身の資産状況やリスク許容度を十分に考慮した上で、慎重に判断するようにしてください。
以下の記事も参考にしてください。
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【対策2】もし不貞相手との間に子供ができれば婚姻費用の減額を求める
現在、別居中であれば、あなたは妻に対して婚姻費用(生活費)を支払っていることでしょう。この婚姻費用は、収入がある配偶者が、収入の少ない配偶者に対して支払う義務のある費用であり、通常、離婚が成立するまで支払いが継続されます。
しかし、もしあなたが、不貞相手との間に子供をもうけた場合、扶養しなければならない対象が増えるため、配偶者に対する婚姻費用については減額が認められる可能性が高いです。(不貞の違法性については、すでに「有責配偶者」となった時点で評価済みですので、ここでその問題については触れません。)
ただし、この場合も、単に不貞相手に子供が生まれたというだけでは、婚姻費用が自動的に減額されるわけではありません。婚姻費用の減額を求める調停を申し立て、家庭裁判所で減額の可否や減額幅が決定されることになります。
なお、この選択肢は、あくまで、結果として不貞相手との間に子供ができた場合に、婚姻費用に関する経済的負担を軽減するための一つの方法です。子供を設けることを積極的に推奨するものではありませんので、その点申し添えます。
【対策3】「離婚後」を待たずに、今、新しい挑戦を始める

もしあなたがそう考えているのであれば、それは非常にもったいない考えかもしれません。有責配偶者であるあなたがいつ離婚できるかは、現時点では誰にもわかりません。数年後、もしかしたら10年後かもしれません。
そして、年齢を重ねるごとに、新しい挑戦への意欲は減退していくものです。たとえば、40代を迎え、これから人生の後半戦に突入する時期なのであれば、今、動くことが重要と言えるかもしれません。
この別居期間中に、あなたが温めていた「新しい挑戦」を始めてみるのはどうでしょうか。
例えば、
- 独立開業する
- 資格取得に励む
- 全く異なる分野に転職する
- 海外留学をする
といったことが考えられます。

そうお考えになるかもしれません。しかし、独立開業によって収入が減少した場合でも、婚姻費用の減額が認められる可能性があります。
もちろん、婚姻費用を下げることを主たる目的として、不自然な形で収入を減らしたと判断される場合は、従前の収入ベースが維持される可能性があります。しかし、婚姻費用制度は、決して当事者の転職や挑戦を禁止するものではありません。社会の変化や個人のキャリアアップ、新しい挑戦のために収入が一時的に減少することは、十分に正当な理由として認められ得ます。
実際に、家庭裁判所の実務においても、当事者の合理的な理由に基づく転職や独立開業による収入減は、婚姻費用算定の際に考慮されることがあります。
養育費に関するものですが、参考までに、以下の裁判例もご参照ください。
1 事件の概要今回ご紹介する判例(東京高等裁判所令和5年1月31日決定)は、離婚後、自分の意思で転職や再婚・子の出生をした場合でも、離婚時に取り決められた養育費の減額が認められることを確認した、東京高裁決定です(ウエストロー・ジャパン搭[…]
(東京高裁令和5年1月31日決定 ウエストロー・ジャパン搭載)
養育費は、将来にわたるもので、当事者に身分関係、経済状態等の変化が生じることはやむを得ないことであり、それらが生じて養育費算定の基礎事情が変更し、それに照らして義務者が負担する養育費が不相当とみられる事態になったときは養育費の増減額を求めることができる性質のものである。したがって、定められた養育費の支払義務は、性質上、将来生じた義務者の経済状況、身分関係の変動を考慮できないものではなく、義務者に養育費を免れるためなど不当な目的が認められない限り、義務者がやむを得ない場合でなく、その意思で転職や婚姻等をした場合は、義務者の責任であって権利者に転嫁できないとして養育費の増減額を認めない考えは、義務者の意思決定の自由を不当に拘束しかねないものであって採用することはできない。そして、本件では相手方に養育費を免れるなどの不当な目的は窺えないことは補正の上引用する原審判に説示のとおりである。また、相手方の収入についても、直近の資料に基づく認定であって不当とはいえない。
この裁判例が示すように、正当な理由に基づく収入の変動は、婚姻費用の算定において考慮されるべき事情となります。
この期間を、単なる「離婚できない期間」ではなく、「自己成長のための準備期間」と捉えることで、あなたは精神的にも大きく変わることができるでしょう。新しい挑戦を通じて得られる経験やスキルは、離婚後のあなたの人生を豊かにし、より自信を持って歩んでいくための大きな糧となるはずです。
弁護士のホンネ

ここまで、有責配偶者であるあなたが、将来の離婚に向けて検討すべき3つの対策についてお話ししてきました。
正直なところ、有責配偶者からの離婚は、弁護士にとっても非常に難しい案件の一つです。相手方配偶者が「絶対に離婚しない」と頑なな姿勢を見せた場合、解決までに相当な時間と労力を要することは避けられません。
しかし、だからといって、私たちは「どうせ無理ですよ」と匙を投げることはしたくありません。
むしろ、このような困難な状況だからこそ、この期間をいかに有効活用できるか、という視点が非常に重要になると考えています。
- 将来の財産分与やその先を見据えた資産形成
- 新しく家族ができた場合の婚姻費用の負担軽減の可能性
- そして、何よりも、あなたの人生をより豊かにするための自己成長
これらは、決して無駄なことではありません。
有責配偶者であるという立場は、あなたにとって大きな足かせになっているかもしれません。しかし、この足かせをきっかけとして、マインドを変えることで、あなたの未来をより有利に進められるかもしれません。
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