

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)
離婚の話し合いを進める中で、円満な解決を目指し、多くの人が最初に利用するのが「離婚調停」です。しかし、時に調停は、かえって事態を複雑化させ、長期化させる原因となることがあります。特に、相手方の態度や交渉の状況によっては、「これは調停を不成立にして、裁判で決着をつけた方が良い」と判断すべきケースも存在します。本稿では、どのような場合に、離婚調停を不成立とすべきかについて、具体的なケースを交えながら解説します。
離婚調停の長期化しやすい実情と期間
離婚調停は、夫婦間の話し合いを促進し、合意形成を目指す場です。家庭裁判所の調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら解決策を探ります。しかし、このプロセスは一般的に長期に渡りやすいという実情があります。
調停は通常、月に1回程度のペースで期日が設けられます(最近は家庭裁判所も大盛況なので、1ヶ月半かあるいは2ヶ月に一回程度になることも)。一度の話し合いで結論が出ることはほとんどありません。双方の主張が食い違えば食い違うほど、調停委員による調整には時間がかかり、期日の回数も増えていきます。
一般的な離婚調停にかかる期間は、およそ半年から1年程度です。しかし、複雑な財産分与の問題や親権・養育費に関する争い、あるいは相手方が非協力的な態度をとる場合には、1年を超えることも珍しくありません。この長期化は、当事者にとって精神的・経済的な負担となり、本来早期に解決すべき問題を不必要に引き延ばしてしまうことがあります。
調停を不成立にすべきケース!
調停が長期化するだけでなく、以下のような状況に陥った場合は、調停を不成立とし、次のステップである離婚訴訟を検討すべき時です。
相手が資料による証明を強く要求するとき
相手方がこちらの言い分に対し、とにかく「資料による証明」を強く要求してくる場合、調停は難航する可能性が高いです。例えば、「この主張は資料がないと認められない」「具体的な証拠を出せ」と、証拠がない限り一切応じないスタンスを取られるケースです。
しかし、裁判では、必ずしも明確な資料が揃っていなくても、その他の証拠(陳述書、証人の証言、状況証拠など)や裁判官の自由心証主義に基づいて、こちらの主張内容が認められるケースがあります。相手方が資料にこだわり、それが乏しいからといってこちらの言い分を一切聞かない姿勢であれば、調停で合意に至る可能性は低いと言えるでしょう。
調停は合意が原則であるため、相手が応じなければ、どれだけ時間をかけても結論は出ません。このような場合、調停を不成立とし、裁判という別の舞台で決着を試みる方が賢明な選択となり得ます。
こちらが資料を開示しなければ相手も開示しないと述べている時
交渉において、「あなたが資料を出してから、私も資料を出す」というような、相手方に一方的な優位性を確保しようとする姿勢が見られる場合も注意が必要です。このような状況で、こちらが譲歩して先に資料を開示してしまうと、相手方は「こちらの押せ押せの姿勢が成功した」という一種の成功体験を得てしまいます。
この成功体験は、相手方に心理的な優位性を与え、その後の交渉においても、その優位性をことさらに維持しようと努めることにつながります。結果として、当方の言い分がなかなか聞いてもらえず、交渉が膠着状態に陥る可能性が高まります。調停の場は、双方の協力的な姿勢が不可欠ですが、このような心理戦が繰り広げられる場合、調停での解決は極めて困難になります。
不毛な心理戦を終わらせ、公平な立場の裁判官に判断を委ねる方が、結果的に早期解決につながることもあるでしょう。
婚姻費用をこちらが支払っている状況で、相手がのらりくらりとしているケース
婚姻費用をこちらが支払っている状況で、相手方が調停の進行に対してのらりくらりとした態度をとる場合も、調停不成立を検討すべき重要なサインです。このようなケースでは、相手方はできるだけ調停を長引かせ、婚姻費用を継続して受け取り続けることを目的としている可能性があります。
実際にあったケース
相手方が、婚姻費用の話し合いにのみ注力し、離婚条件(財産分与や親権など)についての話し合いは保留にする、という戦略をとられたことがありました。長きに渡る婚姻費用の話し合いがようやくまとまった後、次の期日で、いよいよ本題である離婚条件に関して、財産資料を開示する宿題を「忘れていた」と述べ、その次の期日こそは提出すると約束されました。しかし、実際に次の期日になると、突如として「やはり離婚には応じない」と態度を翻し、結果として調停を数年単位で長引かせ、婚姻費用を受け取り続ける作戦を実行されたことがあります。
このような状況は、調停が本来の目的である「離婚の合意形成」から逸脱し、相手方の一方的な利益追求の場と化しています。時間と費用の無駄遣いを避けるためにも、速やかに調停を不成立とし、離婚訴訟を提起して裁判所に強制力のある判断を求めることが必要です。
その他の、速やかに離婚を不成立にして離婚訴訟を提起した方が良いケース
上記以外にも、速やかに離婚調停を不成立とし、離婚訴訟を提起した方が良いケースはいくつか存在します。
- 相手方が調停に出席しない、または欠席を繰り返す場合: 調停は双方の出席が前提です。相手方が正当な理由なく出席しない、あるいは頻繁に欠席する場合、調停の進行は不可能であり、時間の無駄になります。
- 相手方が話し合いに応じず、感情的になるばかりで建設的な議論ができない場合: 感情的な対立が解消されず、冷静な話し合いが不可能な場合、裁判で粛々と手続を進めた方が良いでしょう。
- 相手方が必要な資料の提出に協力しない場合: 相手方が真実ではないことを主張し続け、さらに資料の提出も意図的に拒否するなど、最低限協力する姿勢すら示さない場合も、調停での解決は難しいでしょう。
安易に不成立にすべきではない判断の微妙さ
これまで、離婚調停を不成立にすべきケースを述べてきましたが、一方で、安易に調停を不成立にするべきではないという点も強調しておく必要があります。
交渉の立ち位置からして、相手のペースに応じてでも合意に持って行かざるを得ないケースも存在します。例えば、一刻も早く離婚を成立させたい、こちらが有責配偶者であり、別居期間がほとんどない、などの状況では、多少の不利益を被ってでも調停での合意を目指す方が、結果的に当事者にとって良い解決となることもあります。
この「調停を不成立にするか否か」の判断は極めて微妙であり、場合によっては専門的で経験に基づく判断力が必要とされます。調停の状況、相手方の性格、こちらの置かれている状況、そして何よりも「何が自分にとって最善の解決なのか」という点を総合的に考慮しなければなりません。
そのため、離婚調停に参加する際は、必ず弁護士と一緒に参加し、弁護士と相談しながら判断することをお勧めします。弁護士は、過去の判例や交渉経験に基づいて、その判断が将来的にどのような影響をもたらすかを見通し、最適なアドバイスを提供するよう努めてくれるでしょう。
弁護士のホンネ

弁護士として数多くの離婚案件に携わってきた経験から言えるのは、離婚調停はあくまで「話し合いの場」であり、必ずしも全てのケースで最適な解決をもたらすわけではないということです。特に、相手方が不誠実な態度を取り続けるようなケースでは、調停を漫然と続けることは、当事者にとって時間的、精神的、そして経済的な負担を増大させるだけになってしまいます。
「裁判」と聞くと、多くの人は身構えてしまいがちですが、時として裁判は、状況を打開し、公平な判断を得るための唯一の有効な手段となります。もちろん、裁判には一定の時間と費用がかかりますが、無益な調停を続けるよりも、最終的な解決への近道となることもあります。
重要なのは、ご自身の状況を客観的に判断し、適切なタイミングで次のステップに進む勇気を持つことです。そして、その判断を誤らないためにも、弁護士のサポートを積極的に活用してください。私たちも、あなたの「正当な権利」を守り、新しい人生をスタートさせるために、全力でサポートします。
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