ソクラテスに聞いてみた!日本の離婚制度の問題点【対話編】

今回は、日本の離婚制度の問題点について、ソクラテスとの対話形式でご紹介します。どうぞ楽しみながら、学んでいただければ幸いです。

登場人物

  • ソクラテス: 古代ギリシアの哲学者。現代日本にタイムスリップし、日本の離婚制度を深く学んだ。
  • ケンタ: 結婚を考えているものの、日本の離婚制度に不安を感じている若い日本人男性。

ソクラテスとケンタの対話

ケンタ
ソクラテス先生、お忙しいところ恐縮ですが、お時間をいただきありがとうございます。日本庭園と書院造の間にソクラテス先生がいるなんて、なんだか不思議ですね。
ソクラテス
おお、ケンタくん。古代ギリシャもこの日本も、同じ人間が作り上げたものだ。特に違和感はないよ。ところで、君の悩み、顔に書いてあるようだ。何でも聞きたまえ。私が知り得ることであれば、喜んで君の力になろう。
ケンタ
ありがとうございます。実は、私、結婚を真剣に考えているのですが、最近SNSなどで日本の離婚制度について知るにつけ、どうしても結婚に踏み切ることができません。先生は日本の離婚制度を深く学ばれたと伺っております。どうか、その問題点について、ご教示いただけないでしょうか。

ソクラテス
なるほど。結婚を前にして、その後のことまで熟慮するとは、若者としては珍しい。よかろう。私が知り得たことを、君に伝えよう。日本の離婚制度には、確かにいくつかの大きな問題が横たわっていると、私も感じている。

婚姻費用の問題点

ソクラテス
まず、最も大きな問題の一つは、婚姻費用だ。君も耳にしたことがあるだろうが、これは夫婦が別居状態にあっても、収入の多い方が少ない方へ生活費を支払う義務のことだ。
ケンタ
はい、知っております。それは、例えば夫の収入が妻よりも多ければ、夫が妻に生活費を支払うということですよね。
ソクラテス
その通りだ。そして、問題はここからだ。例えば、夫婦関係が修復不可能なほどに破綻していても、法律上は婚姻関係が続いている限り、この婚姻費用を支払い続けなければならない。
ケンタ
なるほど。関係が破綻しているのに、支払い義務が続くのですね。それは、関係が破綻した原因に関わりないのでしょうか?
ソクラテス
そこは重要な点だ。実は、夫婦の関係が破綻した場合でも、それが妻の不貞行為による場合、その不貞行為が明確に証明されれば、夫が妻への婚姻費用の支払いを免れる場合がある。なぜなら、婚姻費用の請求は、夫婦が共同生活を送るために必要な費用であり、その請求者である妻自身が、夫婦関係を破綻させた原因を作ったと認められれば、権利の濫用として認められないと判断されることがあるからだ。
ケンタ
そうなのですね!それは少し安心しました。妻に不貞行為があった場合は、夫が婚姻費用を払わなくて済む可能性があるということですね。
ソクラテス
その通りだ。しかし、注意が必要だ。実際に、妻の不貞行為を法的に証明することは、非常に困難なことが多い。例えば、単なる疑いや推測だけでは認められない。明確な証拠、例えば不貞相手とのホテルへの出入りを写した写真や動画、肉体関係を推認させるSNSのやり取り、あるいは自白などが必要となる。探偵を雇うなどして証拠を集める人もいるが、それには費用もかかるし、精神的な負担も大きい。
ケンタ
なるほど…。証明は難しい、と。では、証拠がなければ、妻に不貞行為があったとしても、婚姻費用を払い続けなければならないということですか?
ソクラテス
残念ながら、その可能性は高い。そして、たとえ不貞行為が証明されたとしても、夫側にも問題がある場合は、やはり夫から妻への婚姻費用支払義務は免れないこともある。例えば、夫にも浪費や暴言があった場合、妻が一方的に悪いとは言えなくなるため、妻の請求が権利濫用とは言い難くなるのだ。
ケンタ
想像以上に複雑なのですね。どちらに原因があるか、というのも簡単に判断できるものではないと。

ソクラテス
その上、特に男性側にのみ不貞行為があった場合、状況はさらに厳しくなる。日本の裁判所は、有責配偶者からの離婚請求には非常に慎重な傾向がある。有責配偶者とは、夫婦関係を破綻させた原因を作った配偶者のことだ。
ケンタ
それは、例えば夫が浮気をして別居に至った場合、夫が有責配偶者になる、ということですか?

ソクラテス
その通りだ。そして、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められない。例外的に認められる場合もあるが、そのためには、夫婦の別居期間が相当長期にわたり、夫婦間に未成熟な子が存在せず、かつ、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に過酷な状態に置かれないことなどの厳格な要件が課される。場合によっては、10年程度もの長期間の別居がなければ、離婚が認められないケースも存在するのだ。その間、ずっと婚姻費用を支払い続けることになる。これが、まさに「コンピ地獄」と呼ばれる所以だ。精神的にも経済的にも、支払う側には大きな負担となる。

ケンタ
10年もの間、婚姻費用を払い続けるなんて、想像を絶します。もし自分がその立場になったらと思うと、本当に恐ろしいです。なぜ、このような制度になっているのでしょうか?婚姻関係を継続させることに、そこまでの意味があるのでしょうか?
ソクラテス
君の疑問はもっともだ。この制度の根底には、婚姻関係を継続させることへの強い社会的要請がある。夫婦は互いに協力し、扶助し合う義務があるという考え方だ。しかし、それがかえって個人の自由や、実態に合わない苦しみを強いる結果になっていることは否めない。形骸化した婚姻関係を法的に維持し続けることが、本当に当事者の幸福に繋がるのか、私も疑問に思う。まるで、壊れた船を無理やり動かし続けようとしているかのようだ。
ケンタ
壊れた船を無理やり動かす…まさにそんな感じですね。もし、婚姻費用を支払う側の生活が困窮しても、支払い義務は続くのですか?
ソクラテス
原則として、支払い義務は続く。ただし、支払う側の経済状況が著しく悪化し、婚姻費用を支払うことが極めて困難になった場合は、減額や免除が認められることもある。しかし、それはあくまで例外的なケースであり、容易なことではない。支払う側の生活を犠牲にしてでも、婚姻関係を維持しようとする制度の強固さがあると言えるだろう。

財産分与の「2分の1ルール」

ケンタ
婚姻費用だけでも恐ろしいですが、他にも問題があると聞きました。
ソクラテス
うむ。次に大きな問題として挙げられるのは、財産分与における「2分の1ルール」だ。これは、夫婦が離婚する際、婚姻期間中に築き上げた財産は、原則として夫婦の貢献度に関わらず、等しく半分ずつ分けるというものだ。
ケンタ
それは、専業主婦であっても、夫が稼いだ財産の半分を受け取ることができるということですか?
ソクラテス
その通りだ。もちろん、専業主婦が家庭内で果たしてきた役割を評価することは重要だ。家事や育児は、経済活動とは異なるが、家庭を維持する上で不可欠な貢献だ。しかし、問題なのは、結婚前の個人の努力によって得られた高学歴や、それによって手に入れた高所得が、離婚時に全く評価されないという点だ。例えば、君が血のにじむような努力をして高給取りになったとする。しかし、結婚後に離婚することになれば、その努力によって得た財産の半分は、配偶者に渡ってしまう。これは、個人の努力に対する正当な評価がなされていないと、私は感じざるを得ない。
ケンタ
私も、必死に勉強して、今の会社に入ることができました。もし将来、その努力が全て半分にされてしまうと考えると、結婚すること自体が、自分の努力を無にする行為のようにも思えてしまいます。
ソクラテス
君の気持ちはよく理解できる。若者が努力して成功を収め、その成果を人生のパートナーと分かち合うことは素晴らしいことだ。だが、そのパートナーとの関係が破綻した時、自身のこれまでの努力が、まるで他人事のように半分にされてしまうという感覚は、確かに不公平に感じるだろう。この制度は、結婚が「共同事業」であるという考えに基づいているが、その「事業」が解散する際に、個人の前史が考慮されないという点に、私は疑問を覚える。まるで、マラソンで一人でゴールまで走りきったのに、途中で少し伴走しただけの人が、同じ優勝カップを受け取るようなものだ。
ケンタ
まるで、そうですね。では、もし結婚前に貯めていた財産や、実家から相続した財産も、離婚時に半分にされるのでしょうか?
ソクラテス
いい質問だ、ケンタくん。結婚前から持っていた財産や、婚姻期間中に相続や贈与によって得た財産は、原則として特有財産とされ、財産分与の対象にはならない。それは、夫婦の協力によって築き上げた財産ではない、と見なされるからだ。
ケンタ
それは少し安心しました!では、結婚前に稼いだお金は守られる、ということですね。
ソクラテス
その通りだ。しかし、注意点もある。例えば、結婚前から持っていた財産であっても、結婚後に夫婦の協力によってその価値が増加したり、維持されたりした場合は、その増加分や維持に貢献した分が財産分与の対象となることもある。また、特有財産と共有財産が混ざり合ってしまっている場合、例えば特有財産を共有財産の運用に充ててしまったような場合も、区別が難しくなる。だから、結婚する際には、もしもの時のために、結婚前の財産を明確にしておくことが賢明だろう。

親権取得の困難さ

ケンタ
あと、私が一番不安に感じているのは、もし離婚することになった場合、男性側が親権を取るのが非常に難しいという話です。
ソクラテス
鋭い指摘だ、ケンタくん。確かに、日本の現状では、男性側が親権を取得することは極めて困難だと言わざるを得ない。裁判所は、子どもの監護の継続性を重視する傾向にある。そして、多くの場合、母親が子どもとの生活を主に担ってきたと判断され、母親側に親権が認められることが多い。
ケンタ
私は、もし子どもができたら、家族のために一生懸命働きたいと思っています。しかし、その「家族のために稼働をした」という事実が、親権取得に際して何ら評価されないと聞きました。これは本当でしょうか?
ソクラテス
残念ながら、君の言う通りだ。もちろん、子どものために働くことは素晴らしいことだ。しかし、日本の司法では、その経済的な貢献が、直接的に親権の取得に有利に働くことはほとんどない。むしろ、日々の世話や育児にどれだけ関わってきたか、という点が重視される傾向にある。そのため、多くの男性は、子どもとの生活を主に担う母親に比べて、親権取得において不利な立場に置かれているのが現状だ。
ケンタ
自分がどんなに子どもを愛していても、どんなに子どもの将来を考えて稼いでいても、親権が取れない可能性があるなんて、あまりにも残酷です。もしそうなったら、私は子どもと会うことも難しくなるのでしょうか?
ソクラテス
親権が取れない場合でも、面会交流という形で子どもと会う権利は認められている。しかし、その頻度や方法については、話し合いや調停、審判で決定されるため、親権を持たない親の希望が必ずしも通るわけではない。子どもとの関係を継続したいと願う親にとって、この面会交流の制度は、しばしば不十分だと感じられるようだ。親権を持たない親は、子どもの教育や医療に関する重要な決定に関与することもできない。これもまた、親としての役割を全うしたいと願う者にとっては、大きな苦痛となるだろう。
ケンタ
私がどれだけ子のために働いても、親権が取れないだけでなく、会うことも制限される可能性がある…本当に結婚をためらってしまいます。この制度は、子どもの権利や、男性の親としての権利を考えているのでしょうか?
ソクラテス
君の問いは、この制度が抱える根深い問題を示している。日本の制度は、「母親が子どもを育てるのが自然」という社会的慣習に強く影響されていると言えるだろう。確かに、子どもが親の離婚によって不安定な状況に置かれることを避けるため、監護の継続性を重視する意図は理解できる。しかし、それが結果的に、子どもが両方の親から等しく愛情と養育を受ける権利を侵害し、また、男性が親としての役割を全うしたいという強い願いを阻害している側面があることも否めない。この点は、まさに議論されるべき課題だと私も思う。

結婚のメリットとは何か

ケンタ
先生のお話を聞くにつけ、日本の離婚制度は、あまりにも男性にとってデメリットが大きいように感じられます。婚姻費用、財産分与、そして親権。これだけ大きなデメリットがあるならば、そもそも結婚する意味があるのでしょうか?そうしたデメリットを凌駕するほどの、結婚のメリットとは一体何なのでしょうか?
ソクラテス
ケンタくん、君の問いは、人間が古くから問い続けてきた、根源的な問いだ。私も、この日本の離婚制度を学び、君と同じような疑問を抱いた。正直に言おう。この日本の離婚制度が抱えるデメリットは、あまりにも大きいと私は感じている。
ソクラテス
結婚のメリットについてだが、もし君が、損得勘定で結婚を考えているのであれば、私の答えはこうだ。結婚はしないほうが良いかもしれないね
ケンタ
え…?それは、先生も結婚のメリットを見出せない、ということですか?やはり、リスクが高すぎる、と。
ソクラテス
結婚とは、損得で測れるようなものではない。もし、経済的な合理性や、法的なリスクのみで結婚の価値を測るのであれば、たしかに今の日本の離婚制度を鑑みると、結婚は「割に合わない」と感じるだろう。
ケンタ
やはり、そうですか…。
ソクラテス
しかし、それでもなお、人は結婚を選ぶ。それは、損得を超えた、愛や信頼、共に人生を歩む喜び、そして何よりも、かけがえのない絆を求めるからではないだろうか。計算では割り切れない、心の奥底から湧き上がるような、相手と共に生きたいという強い感情があるからこそ、人は結婚という選択をするのだ。
ケンタ
愛や信頼…それはわかります。でも、その愛や信頼がもし壊れてしまったら、これだけのデメリットが自分に降りかかると思うと、なかなか純粋な気持ちになれません。
ソクラテス
その気持ちは痛いほど理解できる。しかし、裏を返せば、そのように大きなリスクを背負ってでも、人は結婚という契約を結び、人生を共にしようと願うのだ。そこにこそ、人間の本質的な「愛」や「絆」を求める心が現れているとは考えられないだろうか。デメリットが大きいからこそ、結婚の重みが増し、その決断がより尊いものになる、と。
ケンタ
尊い…ですか。少し難しいです。でも、確かに、これだけの覚悟が必要なこと、という風に考えることもできるかもしれません。
ソクラテス
そうだ。だからこそ、私は君にこう言いたい。そうした離婚のデメリットを加味してもなお、「この人と結婚したい」と思える、心から信頼できる相手と出会えることを、心から祈るよ。そうした相手との出会いこそが、結婚の本当のメリットを君に教えてくれるだろう。
ケンタ
そんな人に出会えるのでしょうか…。正直、先生のお話を聞いて、ますます自信がなくなってきました。結婚のリスクを知ってしまった以上、どうしても冷静に考えてしまう自分がいます。
ソクラテス
ケンタくん。君の不安はもっともだ。リスクを知ることは、賢明なことだ。しかし、人生において、リスクのない選択など存在しない。重要なのは、そのリスクを理解した上で、それでもなお進むべき道を選択する勇気を持つことだ。
ケンタ
その通りかもしれません。
ソクラテス
今の日本の離婚制度は、確かに歪んでいる部分がある。だが、制度は常に変化しうるものだ。私も、この国の若者たちが、より安心して結婚し、家庭を築けるような制度へと変わっていくことを願っている。
ケンタ
制度が変わることを願う…私もそう思います。でも、いつ変わるのか、保証もありませんよね。その間、私たちはどうすればいいのでしょうか?
ソクラテス
制度は社会の反映であり、人々の意識の変化によって徐々に変わっていくものだ。君のような若者が、問題意識を持ち、声を上げていくことが、その変化を後押しする力となるだろう。そして、目の前のことに関して言えば、もし結婚を決断するならば、パートナーと深く話し合い、将来起こりうるリスクについても共有しておくことが大切だ。契約書ではないが、お互いの価値観や、もしもの時の取り決めについて、具体的に話し合っておくことは、無用な争いを避けるために役立つだろう。
ケンタ
パートナーと話し合う…。なるほど。そうすることで、お互いの覚悟も深まるのかもしれませんね。
ソクラテス
その通りだ。そして、君が「そんな人に出会えるのか」と問うたが、それは君自身の心の中にある答えを探す旅でもある。結婚のメリットは、外側にあるのではなく、君と相手の間に築かれる関係性の中にこそ宿るのだ。損得で考えるのであれば、結婚はしない方が良い。しかし、損得を超えた価値を見いだせるのであれば、それは素晴らしい人生の選択となるだろう。
ケンタ
はい・・・
ソクラテス
若い君が、そんな悩みを持てることが、私には羨ましくも思える。年をとれば、若い頃の悩みは、なんと贅沢な悩みだったかと感じるものだ。より良い、そして美しい人生を歩みたまえ。君自身の人生を、君自身の手で選び取りなさい。
ケンタ
先生…ありがとうございます。先生のお言葉、心に響きました。私は、先生が仰るような「損得を超えた価値」を見つけられるよう、自分自身と向き合い、そして相手を探してみようと思います。同時に、もし結婚を決めるのであれば、その人と深く話し合うことも、忘れずにいたいと思います。
ソクラテス
その決意こそが、君の人生を豊かにする第一歩だ、ケンタくん。人生は、時に苦難の道だが、その中にこそ真の喜びが隠されている。君の未来に幸あれ。

当サイト運営・プロキオン法律事務所では、相談室(渋谷駅徒歩5分・横浜駅徒歩6分)またはオンラインにて、無料相談を実施しています。

ご相談の予約はこちら

弁護士の無料相談実施中!


プロキオン法律事務所は、横浜駅徒歩6分渋谷駅徒歩7分の好アクセス。離婚・男女トラブルに関するご相談を60分無料で承ります。お気軽にお問い合わせください。

0120-533-284

チャットで相談予約

>弁護士法人プロキオン法律事務所

弁護士法人プロキオン法律事務所

弁護士法人プロキオン法律事務所(横浜・東京)は、離婚・男女問題に特化した専門事務所です。初回相談は60分無料で、平日夜間・土日も対応可で、最短で即日相談も可能です。あなたの、離婚に関するお悩みはプロキオン法律事務所(横浜・東京)にお任せください!