今回は、離婚問題の相手方が非常識な振る舞いに出る場合、どのように対処すればよいか、解説します。特に、女性の方は、夫又は元夫に対して恐怖を感じているケースも多いです。どうぞ最後までお読みください。
※今回は、主に女性側の視点に立った記事となります。
1 非常識な行動の例
離婚問題の相手方から行われる非常識な振る舞いや嫌がらせは、以下のようなものが多いです。
・しつこい付き纏い
自宅の近くを通りかかったフリをして会いに行ったり、話しかけたりするのが一般的です。また、過剰な頻度で電話をかけてきたり、時には職場に連絡をしてきたりするケースもあります。
・SNSを使った公開
SNSを使って、現在の離婚問題の解決状況を公開しながら投稿する人もいます。ただ、離婚問題に関しては、こちらの個人情報まで公開すると、反射的に相手自身の情報も広まってしまいますので、そこまで公開されるケースは少ないです。
一方で、こちらが雇っている弁護士の実名を挙げてSNS上で攻撃するケースは良くあります。これ自体は、弁護士側も慣れていますので、ご自身においてはそれほど気にされなくて大丈夫です。
・現住所地探索(GPSや郵便物の転送)
相手に自宅を知らせていない場合、その相手が、何らかの機会でこちらの車を見つけた際に、GPSを仕掛けるというケースもあります。それにより住まいを探ろうとします。
また、郵便追跡が可能な特定記録やレターパックを使って郵便物を送付し、転送先を可能な範囲で調べようとする人もいます。
・裁判所や弁護士にクレーム
離婚問題の調整をお願いしている裁判所や弁護士(相手自身が依頼している弁護士や、こちらが依頼している弁護士)に対して、非常識なクレームを頻発するケースもあります。家庭裁判所の調停委員に暴言を吐いたり、裁判所で暴れたり、弁護士に対しては懲戒請求を行うケースもあります。ただ、裁判所や弁護士もこうした対応には慣れていますので、ご自身の方はそれほど気にされなくて大丈夫です。
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2 具体的な対処法
(1)弁護士を窓口に
相手の非常識な対応に恐怖を感じている場合は、臆することなく、弁護士に相談をし、依頼してください。まずは相手との窓口を弁護士や法律事務所にし、直接相手とコンタクトを取らないで済む環境を作りましょう。
弁護士から通知をすれば、それを無視して当事者に直接連絡してくるケースは非常に少ないです。ただし、それでもしつこく直接連絡をしてくる場合は、次の(2)から(4)の方法の選択も検討します。
(2)相手の職場への協力要請
相手からの直接連絡が続き、その態様があまりにも悪質なケースなどであれば、相手の職場に協力を求めるケースもあります。時々あるのは、相手の上司の方が当方の知人でもある場合に、相手に注意をするよう、協力を要請するというものです。正式に人事課などに連絡をして注意をするよう協力要請する場合もあります。
会社外での法令違反行為や道徳的に強い非難を受ける行為についても、懲戒事由にしている会社は多いです。そのため、会社側も協力してくれる可能性が高いでしょう。
(3)保護命令の申立てによる接近禁止命令
裁判所に対して、相手が自分に接近することを禁止したり、子供や親族に対して近づくことを禁止したり、電話などで連絡をすることを禁止することを申し立てる制度があります。保護命令制度と呼ばれるものです。
これは、配偶者から暴力(重篤な精神的被害も含まれます!)や脅迫を受けたことがあり、今後もさらに暴力や脅迫を受けるなどして重大な危害が生じる可能性が高い場合に、発令してもらえます。保護命令が発令されたにもかかわらず、相手がそれに違反した場合、相手は2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処されます。
書類の作成の難易度が高いため、弁護士に依頼することをお勧めします。また、配偶者から暴力や脅迫を受けたことがあることを証明するためにも、被害を受けた場合は警察や支援センターに相談をしておくのが良いです。
(4)ストーカー規制法の禁止命令
暴力までは受けていない場合でも、付きまといや待ち伏せ、乱暴な言動、しつこい電話やメールの送付、そのほか嫌がらせをされている場合は、ストーカー規制法が定義する「つきまとい等」に該当する可能性があります。
そのため、暴力までは受けていなくとも、警察に相談の上、警察から相手に対して、「警告」や「禁止命令」を発してもらうことが可能です。
警察の禁止命令に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑事罰が下されます。
つきまとい等が、身体の安全、住居の平穏などを害する形で行われ、それが反復している場合は、「ストーカー行為」に該当します。その場合、警告や禁止命令がなくても、それだけで1年以下の懲役又は200万円以下の罰金となります。
また、警察の禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金となり、重い刑罰が下されます。
(5)状況については逐一裁判所に報告を
もし、あなたがすでに離婚調停や離婚裁判などの手続きに入っている場合は、相手からの嫌がらせ行為について、その都度、裁判所に報告するのが良いでしょう(上申書、主張書面、準備書面などの体裁を取ります。)。
裁判所の関係者からの注意により、事実上の抑止力があります。また、離婚問題の解決内容に、一部反映される可能性があります。
(6)防犯スプレーなどの備えも効果的
最後に、物理的な対処法です。催涙スプレーなど、身を守るための品の所持も、一応は検討する必要があるでしょう。所持により、心理的な安心感も抱けると思います。
ただ、催涙スプレーを携帯する場合は、以下の点に注意する必要があります。実は、催涙スプレーは、軽犯罪法1条2号にいう「正当な理由がなくて・・・人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」に該当しうるとした判例があるのです(最高裁平成21年3月26日判決)。つまり、催涙スプレーを携帯したまま外出すると、軽犯罪法に違反し、30日以下の拘禁または1万円以下の過料の罰則を受ける可能性が否定できません。
ただ、現に離婚問題の相手とやり取りがヒートアップしていて、配偶者からの急な暴力などの危険が想像できる場合は、「正当な理由」があるとして、軽犯罪法違反にはならない可能性が高いと考えられます。実際、上記最高裁判例では、平日、有価証券や現金をアタッシュケースに入れて移動をする仕事をしていた経理担当者が、日頃から催涙スプレーを携帯していたところ、仕事とは関係のないサイクリング中に携帯していた場合でも、「正当な理由」ありとして、軽犯罪法違反にはなりませんでした。
離婚問題で相手との紛争がヒートアップしている状況においては、各自の責任にはなりますが、そうした防犯用の品の所持を検討しても良いでしょう。
今回の弁護士からのアドバイス
離婚問題の相手からの非常識な行動に対しては、、、
☑️弁護士を窓口にして対処しましょう。
☑️相手の職場への協力要請も選択肢の一つです。
☑️保護命令制度に基づく保護命令の申し立ても考えましょう。
☑️ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令の発令の要請も考えましょう。
☑️相手からの嫌がらせ行為に対しては、逐一、手続中の裁判所に報告しましょう。
☑️物理的な危険を感じる場合は、防犯グッズの所持も検討してみましょう。
弁護士のホンネ
離婚問題は、時に強い感情が相まって、理性を失い、当事者が突拍子もない行動に出てしまう場合があります。とはいえ、それが犯罪につながりうる場合は、厳正に対処されますし、そうされなければなりません。
離婚問題で、相手とのやり取りに怖さを感じている方もいらっしゃることでしょう。そのような方々のために、今回の記事が少しでもお役に立てましたら幸いです。
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