プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)
今回は、離婚問題で、関係修復のために「謝罪」を行うことの危険性と注意点について解説します。相手との関係修復を希望する一方で、離婚になる場合にも備えたいという方は、どうぞ最後までお読みください。
1 関係修復のために良かれと思って行う「謝罪」
関係を悪化させたくないのに、喧嘩になってしまう。こうしたことは、夫婦間でも日常的に起こります。
一方で、仲直りのコツは、「先に謝ること」。
これは多くの方々が同意することでしょう。人は、謝っている人に対して、表面上はすぐには許さないものの、心のどこかでは、そろそろ鉾を収めても良いかなと思い始めるものです。
ですが、すでに離婚の可能性が生じている場合、この「謝罪」を行うことは、それなりにリスクもあります。
私たち離婚弁護士は、別居前後の状況を確認するために、ラインや手紙のやり取りを確認することが多いです。
同居中の喧嘩に関して、ライン上で謝罪をしていたり、別居後に謝罪の手紙を書いて送付したりするケースを良く目にしています。
多くの場合、こうした謝罪は、本当のことを言えば自分は悪いとは思っていないが、関係の修復を優先したいので、あえて自分を悪く言って(謝罪して)、相手に気持ちを変えてもらう、という意図で行われています。
大人ですから、自分が悪くない場合でも、謝るという行為は、スムーズな人間関係を維持するためには大切なことです。
しかし、離婚事件として裁判所が絡むと、これが冗談にならない場合もあるのです。
2 婚姻関係が破綻したという相手のストーリーを裏付けることに
もし、こちらが謝罪をしても関係が修復せず、そのまま離婚裁判に進んでしまった場合、問題が生じます。具体的には、謝罪の事実が、こちらに問題があったので婚姻関係が破綻した、という相手のストーリーを裏付ける証拠になってしまうということです。
私自身、多くの事件を担当していて、現に何度も見てきました。本人としては、自分は悪くないと思いつつ、別居した相手に戻ってきてもらうために、長い手紙を書いて、その中にふんだんに「ごめんなさい」の言葉を多用するのです。一時的に自分は悪者になってしまっても、妻(または夫)が戻ってくるのであれば、それで良いと思って行った、いわば大人の対応です。
しかし、裁判所は、こうした謝罪の言葉を、自らの問題行動を自認するものとみなすことが多いです。その上で、婚姻関係の破綻を認めて離婚を認容し、さらにこちらに慰謝料の支払い義務を認める判断を行う場合もあります。
最近は、手紙を書くというよりも、ライン上で長々と自分の行動を反省して謝罪するような手段が多く行われています。
ラインでのやり取りは、テキストファイルとして保存できます。そのため、裁判になった場合、膨大なライン上のやり取りを、紙媒体に印刷の上、裁判所に提出することになります。
そして、私の経験上、裁判官は、長いラインのやり取りで行われた「ごめん」「申し訳ない」などの謝罪文言に、強く反応します。尋問に進んだ場合、「これは一体何に対して謝っているのか(=あなたに問題があったということではないのか)」と裁判官から直接追及されるケースもあります。
そういうわけですから、離婚の可能性が生じている時期に、不用意に謝罪文言を使うことは、あまりお勧めできません。
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3 やるべき謝罪の方法
「かといって、謝罪をしなければ関係は修復しないのではないか?」と思われる方も多いと思います。まさにそうです。だからこそ、問題が大きいのです。
ここで考えるべきは、裁判所が、謝罪文言に過剰に反応するという点です。
・口頭で謝罪をする
そこで、一つの方法として、文面に残すことは避け、離婚や関係修復のための話し合いをする中で、あの時のことについては申し訳なかったと思っている、などと口頭で述べて謝罪をする方法が考えられます。
もっとも、話し合いの機会すら設けてもらえなかったり、口頭の会話が録音されているケースも多々あることについては留意が必要です。
また、離婚をしたい側の配偶者に弁護士がついた場合、弁護士の戦略的見地から、文面で謝罪するよう求められるケースもあります。
・謝罪対象を厳密化する
そこで、もう一つの方法として、仮に手紙やラインで謝罪をするとしても、何に関して悪かったのか、それが厳密化される(責任の対象を狭める)ように文章を工夫する方法が考えられます。
例えば、
「本当にいつも俺のせいで喧嘩になって申し訳なかった」
と、自分の責任の対象を広くする文面はお勧めしません。大抵の場合、どちらか一方だけに喧嘩の原因があることはありません。なぜ喧嘩になったのか、あるいはなぜ対立が増幅してしまったのかを思い起こしし、そのポイントを絞って書くようにしましょう。
例えば、
「喧嘩の時、あなたの言っていることを勝手に解釈して勘違いしてしまった。本当に申し訳ない」
などと、喧嘩が大袈裟になってしまった原因にポイントを絞って書くことが考えられます。
さらに、「勝手な解釈をしたこと」を自認すると、やはり責任の対象が少し広いように感じるのであれば、もっと対象を厳密化しても良いかもしれません。
「喧嘩の時、あなたの言っていることを、自分の●●の時の記憶と混同してしまい、それで間違ったことを言ってしまった。本当に申し訳ない」
などです。
以上の例では、自分の責任の対象を、「喧嘩になったこと」→「勝手な解釈で喧嘩を増幅させたこと」→「別の時の記憶と混同してしまったこと」に徐々に狭めていきました。これらを頭の中で行った上で、文面にします。もちろん、やり過ぎて文章が不自然になると逆効果(謝罪の意味がなくなる)ですので、バランスは必要です。
以上は一つの例に過ぎません。要するに、仮に謝罪をするにしても、何に謝罪をするのか、その責任の対象を明確・厳密化しましょう。それにより、後から裁判官から問われた場合も、ポイントを突いて説明できるようになるでしょう。
今回の弁護士からのアドバイス
関係修復のために行う謝罪は、、、
☑️通常は良いことですが、離婚裁判では不利な事情になるため注意が必要です!
☑️裁判所は、謝罪の事実を、こちらの責任を自認しているものとみなす場合が多いです。
☑️手紙やラインで謝罪をする場合は、抽象的に謝罪するのではなく、何に対しての謝罪か、その対象を明確・厳密化するようにしておきましょう。
弁護士のホンネ
実際に事件を担当している中で、裁判官が、この謝罪は何に対してのものかと、本気で聞く場面に出くわします。「関係修復のための大人の対応」だという常識的な感覚が、あまり通用しないケースが現にあるのです。
裁判所は、事実関係を積み上げて、婚姻関係が破綻しているか、破綻していないのか、仮に破綻しているとして、その責任の所在はどこなのかを判断しなければなりません。そうした判断を行う責務を全うするために、意識的に事実関係を探ります。そのため、裁判官としては、そうした謝罪文言については非常に敏感になるわけです。
今回の記事が、離婚問題に当たっている方々のお役に立てましたら幸いです。
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