プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)
さて、今回は、裁判の相手からの主張に対して、あなた側が反論をしないといけない場合に、依頼者本人であるあなたが行うと良いことについて、解説します。
1 依頼者本人の方でも相手の書面を細かくチェックしましょう!
あなたが代理人を通じて裁判をしている場合、相手からの書面(「訴状」や「準備書面」のことです。)は、代理人事務所を通じて知らせてくれることになるでしょう。それに対する反論は、もちろん、弁護士に丸投げして良いわけでありません。本人にしか知り得ない事実がたくさんあるはずですから、それを弁護士に伝えて、反論書面を書いてもらいましょう。
とは言っても、具体的にどういう形で相手の書面をチェックして、弁護士にどういう形で伝えれば良いのか、迷うこともあるでしょう。
そこで、以下に挙げる方法で、相手の書面をチェックした上で、弁護士に送ってみてください。弁護士も、とてもスムーズに反論書面を書けるようになるでしょう。
2 具体的な方法の一例
(1)まずは相手の主張の中で指摘したい部分に下線を引く
相手の訴状や準備書面を受け取ったら、一度プリントアウトすることをお勧めします。紙媒体でもらった場合は、コピーをするのが良いでしょう。
その上で、相手の言っている部分で、ここは違う!という場所があれば、下線を引きます。下線も量が多くなると思いますので、それぞれ番号を振るのが良いでしょう。
一例を挙げておきます。
(例:相手が提出した書面に対する下線。内容は架空のものです。)
第1 請求の趣旨
1 原告と被告とを離婚する①
2 原告被告間の長男 の親権者を被告と定める
3 訴訟費用は、被告の負担とする
との判決を求める。
第2 請求の原因
1 当事者
原告と被告は、平成 年 月 日に婚姻した夫婦である(甲1)。
また、原告と被告との間には、長男 (平成 年 月 日生)がいる (甲1)。
2 調停前置
原告は、別居(平成 年 月 日)を行う前、被告に対して、離婚の話を幾度か持ちかけたが②、被告は「10年分の生活費を保障してくれるならいいよ③」と述べるのみで、具体的な協議には進展しなかった。
そこで、原告は、当事者間での話し合いはもはや限界であると考えるに至り、代理人に依頼の上、平成 年、御庁に夫婦関係調整(離婚)調停(平成 号)を申し立てた。
しかし、同調停は、被告の離婚拒否により、話し合いが進まず④、調停を申し立ててから約1年後である令和 年 月 日、調停不成立となり終了した (甲2)。
3 離婚原因(婚姻を継続し難い重大な事由(民法第770条第1項第5号)
(1) 原告と被告間の夫婦のスキンシップの不存在
平成 年頃から平成 年 月 日の別居に至るまでの約 年間、原告と被告との間の性交渉は皆無であった⑤。このような状況は、婚姻関係の破綻を基礎付ける。
(2) 被告の離婚意思について
ア 離婚の話し合いの際の被告の発言
原告は、平成 年 月 日の別居の前、被告に対して離婚の意思を伝えたところ、被告は、「10年分の生活費を保障してくれるなら良いよ⑥」 と発言した。
したがって、被告自身にも離婚意思があることが認められる⑦。
イ 別居後に自宅の鍵を交換したこと
別居後、平成 年 月 日には、被告は自宅の鍵を交換した⑧(甲 3)。よって、被告自身も原告との共同生活を拒否していることは明らかである。
ウ 被告が原告と長男との面会交流に消極的であること
原告は平成 年 月 日に被告に対して長男との面会交流を要請した。しかしながら、被告は同月に原告に対して面会交流を拒否する旨の返答を行った⑨(甲4)。被告は同時期のわずか1ヶ月前まで原告と共同生活をしていたにもかからず、面会交流の申し出を拒絶していることは、被告自身がこの時点ですでに原告を家族として受け入れてないことを端的に示すものである。
(3) 別居期間について
原告の別居開始日は平成 年 月 日であり、訴訟提起時で既に3年半以上経過しており、長期間に渡る別居の継続が認められる。
長期間に渡る別居の継続の事実は、婚姻関係の破綻を基礎づける。
(4) 小括
以上のように、原告と被告の婚姻関係の破綻は固定化され、もはや修復など決してありえない状況にあり、復縁の可能性は皆無である。したがって、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条第1項第5号)が認められる。
よって、原告の離婚請求は速やかに認められるべきである。
4 親権について
原告としては、長男の福祉を最優先に考えるものであり、親権については主張しない意向である⑩。
5 総括
以上の次第であり、原告は、民法770条第1項第5号に基づき、請求の趣旨に記載の判決を求める。
(2)下線を引いた部分に自分なりの見解を述べる
上の例のように下線を引いたら(例では赤色にしましたが、もちろん色はなんでも良いですし、黒でも問題はありません。)、今度は下線に示した番号ごとに、あなたの考えを別の紙で述べておきましょう。Wordで作成できる方は、Wordを使う方が楽でしょう。
以下に例を示しておきます。
(例:各番号ごとに自分の考えを指摘。内容は架空のものです。)
① 離婚には応じられません。争います。
② 夫から離婚の話を持ち出されたのは、別居の2週間前の1回きりです。何度も持ちかけられたということはありません。
③ 確かにこのような発言を行いましたが、直後に、「でもそんなことはできないでしょ?子供のためにも離婚はできないよ」と私は言っています。
④ 調停の時は、婚姻費用の金額と面会交流の話し合いが大部分を占め、離婚の話し合いはほとんどされてません。私が最後の調停の日に離婚に応じないと述べたところ、調停もすでに長期にわたっていたので終了となりました。
⑤ 性交渉は、年に1回、お盆のときの家族旅行の際にほぼ必ず営んでいました。直近では、平成 年にディズニーランドの提携ホテル、平成 年に熱海のホテル、平成 年に軽井沢のホテルで、いずれも性交渉を営んでいます。
⑥ ③で述べた通りす。
⑦ もちろん、私に離婚意思はありません。
⑧ 自宅の鍵を交換したのは事実ですが、相手が別居直後の 月 日に自宅に押し入って荷物を運び出したことがあるので、続けてそれが行われるのを回避するためでした。前もって言ってくれれば対応してあげたのに、勝手に行うのでやむなく鍵を変更したのです。
⑨ 拒否をする回答はしていません。夫が自宅を出たことで長男の気持ちが不安定になったので、もう少し長男の生活と気持ちが安定した頃にはその辺りを話し合いましょうと伝えています。
⑩ 私としては、親権は長男の意向を重視したいと思います。長男はパパっ子でもあり、夫のことが大好きです。普段から夫と将棋をするのが大好きでした。長男が夫の元で生活をしたいというのであれば、私は引き止めません。もちろん、寂しいですが。ただ、私は離婚自体をまずは争いたいです。
(3)あとは弁護士に任せて完成した書面をチェックする
以上のような形で書面ができたら、弁護士に送付しましょう。
紙ベースでも結構ですし、PDFやワードで作成したものを弁護士宛にメール送付するのでも良いでしょう。送付方法については弁護士に確認してください。
関連する証拠資料があれば、この時に一緒に送付するようにしましょう。
あとは、送付した資料に基づいて、弁護士に反論書面(答弁書や準備書面)を作成してもらいましょう。しっかりとしたものを送っていれば、弁護士の反論書面も自ずと精度の高いものになります。
まとめ
☑️裁判での相手の書面に対しては、あなた自身もしっかりと目を通しましょう!
☑️まずは相手の書面中、事実と異なる部分や、あなたの考えを述べたい部分に下線を引きましょう。下線に番号も付しておくことを忘れずに!
☑️下線番号ごとに、あなたの考えを別の用紙に記載しましょう!
☑️資料ができたら、弁護士に郵送かデータ送付をしましょう。このとき、関連する証拠資料があれば、それも一緒に送りましょう!
弁護士のホンネ
今回は、相手の訴状や準備書面に対して、依頼者本人がどのようにチェックをし、弁護士に意見を伝えるのが良いのかを解説しました。
依頼者本人に期待されているのは、事実関係についてのチェックです。法的な議論については、弁護士の方がより精通しているわけですから、そこは弁護士にほぼ丸投げで良いでしょう。一方で、事実関係(つまり、実際にあった生の事実)については、当事者でないとわかりません。なので、その部分を弁護士に伝えるように心がけていただくのが良いでしょう。
離婚問題は、依頼者本人と弁護士がパートナーシップを組んで解決にあたるべきものです。両者が力を注げば、最善の行動が取れることになります。どちらか一方のみが尽力している、という状況は決して望ましくありません。
今回の記事が、皆様の離婚問題解決のお役に立てましたら幸いです。
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