離婚調停で調停委員と反りが合わない!調停委員を交代させることはできる?

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の荒木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 荒木雄平 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回は、離婚調停に臨むにあたって、調停委員との相性が重要な理由と、調停委員を交代させることが可能なのかについて、解説します。

 1.調停委員との相性が重要な理由

離婚調停は、夫婦間の話し合いをサポートする場です。その中心的な役割を担うのが調停委員です。調停委員は、中立の立場で話し合いをスムーズに進めるお手伝いをします。
しかし、「どうしても調停委員と合わない」と感じることがあるかもしれません。例えば、

  • 相手の話ばかり聞いているように見える
  • 自分の意見が軽視されている気がする

こんな状況では、不安やストレスを感じるのも当然です。でも、調停委員は公平に進めようとしているだけで、相手の意見を整理する場面が目立つことがあるだけかもしれません。ここで感情的になると、かえって不利になることもあります。

2.調停委員を交代させることは可能か?

結論から言うと、調停委員を交代させるのは法律上非常に難しいです。

法律のルール

家事事件手続法第16条では、調停委員に関する交代のルールが書かれています。
一般的には、裁判官などの交代に関しては、除斥(じょせき)と忌避(きひ)という2つの方法があるのですが、次のような違いがあります:

  1. 除斥
    • 調停委員が特定の状況に該当すると、自動的にその役割を外れることを意味します。たとえば、調停委員が当事者の親族だったり、過去に代理人を務めたことがある場合などです。
  2. 忌避
    • 忌避は当事者が「この調停委員は公平ではないので交代してほしい」と申し立てる方法です。ただし、法律上、調停委員に対してはこの忌避を申し立てることはできません。

ご注意いただきたいのが、離婚調停の裁判官は除籍と忌避両方が認められるのですが、調停委員は忌避を申し立てをすることができません。

どんな場合に除斥が認められるの?

以下のような状況が除斥の対象になります:

  • 調停委員が当事者の親族である場合(四親等内の血族、三親等内の姻族など)。
  • 調停委員が事件に関わる証人や鑑定人である場合。
  • 過去に当事者の代理人や補助者だったことがある場合。

これらの状況がある場合、調停委員は自動的に外れますが、感情的な不満や「自分と合わない」という理由では忌避が認められない以上、調停委員の交代は認められません。

実際の例:認められないケース

例えば、

  • 「調停委員が相手の肩を持っている気がする」
  • 「こちらの話をあまり聞いてくれない」

といった主観的な不満では、除斥の要件には該当しません。あくまで上記の除斥の例の通り、当事者の方と何らかの関係性がある場合のみです。

3.調停委員に対して不満をもった際の対処法

調停委員との相性の背景

調停委員は中立の立場で動くため、相手の意見を整理して代弁する場面が目立つことがあります。これが「偏っている」と感じられる原因になることもあります。

ただ、実際には調停委員が公平に進めようとしている場合が多いので、本当に不公平なのか、冷静に見極めることが大切です。

調停委員へ苦情を伝える方法

もしどうしても調停委員の発言や進め方に納得がいかない場合、次のような手順を試してみてください。

  1. 調停委員に直接伝える
    • 「相手の意見に寄りすぎている気がする」と思ったら、率直にその気持ちを調停の場で調停委員に対して伝えてみましょう。
    • 調停委員もあなたの不満に配慮して、改善をしてくれる可能性があります。
  2. 書記官に相談する
    • 調停委員と直接話しても改善しない場合、家庭裁判所の書記官に相談することができます。この時点では書類を出す必要はありません。
    • 事実上、書記官が裁判官に相談し、裁判官から調停委員に改善を促すことがあります。
    • 弁護士向けの研修でも、この方法が奨励されています。
  3. 裁判官に相談する
    • 書記官への相談でも解決しない場合、裁判官に上申書を提出し、状況を伝えることができます。
    • 裁判官次第ですが、苦情に理由がある場合には、調停委員に対して適切な指導や勧告を行うこともあります。

注意点

苦情を伝えることで裁判所から「厄介な当事者」と思われてしまうリスクもあります。「厄介な当事者」とレッテル貼りをされてしまうと、調停委員も話し合いをまとめるために頑張る気持ちが削がれてしまい結果として解決が遠のいてしまうかもしれません。そのため、冷静に対応し、調停を進めることができる雰囲気を保つことが大切です。

4.調停を円滑に進めるための対処法

調停委員との相性に問題を感じても、いきなり交代を求めるのではなく、次のような工夫を試してみてください。

具体的な対策例

  1. 相手の話を一度しっかり聞く
    • 調停委員が相手の話を重視しているように感じても、まずは冷静に聞いてみましょう。その上で、「私の意見も補足させてください」と伝えると、配慮してくれることがあります。
  2. 話を簡潔にまとめる
    • 長く説明すると、調停委員に伝わりにくくなる場合があります。要点を絞って簡潔に話すことで、自分の主張をしっかり届けられます。
    • 調停委員も、中立公平という立場に立っているので、一方の当事者のみ長時間話を聞くということは嫌がります。そのため、調停委員の時間配分についても気を遣った方が良いかと思います。
  3. 弁護士にサポートを依頼する
    • 弁護士が同席していると、調停委員がより中立的な対応をすることが期待できます。また、弁護士が冷静に状況を整理してくれるので安心感も高まります。
  4. 感情的にならない
    • 感情的になると、調停委員にも悪印象を与えてしまいます。冷静さを保つことが調停を成功させる鍵です。

今回の弁護士からのアドバイス

調停委員との相性が悪いと感じても、一人で悩む必要はありません。状況が改善しない場合は、ぜひ専門家である弁護士に相談してください。弁護士は、あなたの気持ちに寄り添いながら、現状を整理して最適なアドバイスを行います。

  • 話し合いをスムーズに進めるための工夫を提案します。
  • 調停が不利にならないよう、具体的なサポートを行います。

弁護士のホンネ

弁護士 荒木
弁護士のホンネ

調停委員の交代は、法律上非常に限られたケースでしか認められません。そのため、交代を申し立てるよりも、今の状況をどう改善するかに力を注ぐことが大切です。

「調停がうまくいくか不安」「自分だけ損をしている気がする」と思うのは当然のことです。一人で抱え込まずに、まずは弁護士や専門家に相談してください。小さな不安でも、私たちは全力でサポートします。

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