2 答弁書の提出について
訴えられた被告は、裁判所に対して、答弁書を提出期限(一般的に訴訟の第1回口頭弁論期日の1週間前のケースが多いです。)までに提出しなければなりません。
答弁書では、原告が主張している
第1 請求の趣旨(原告の要求内容)に対する答弁(被告の言い分)
第2 請求の原因(原告の主張する事実関係や法律上の主張)に対する認否(被告の認識として、原告の主張する事実関係が合っているのか、間違っているのか、知らないのか。)
をしっかりと反論しなければなりません。
答弁書の書き方は主に以下のような書き方をすることが多いです。
離婚等請求事件 令和元年(家ホ)第〇〇号
原告 渋谷 明子(仮名)
被告 渋谷 行雄(仮名)
答 弁 書
令和元年●月●日
東京家庭裁判所家事第●部 御中
(送達場所)
〒 東京都港区●ビル●F
弁護士法人アカサカ法律事務所
電話・・FAX・・
被告訴訟代理人 弁護士 赤坂 一郎
第1 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
第2 請求の原因に対する認否
1 当事者に対する認否
認める。
2 別居・調停の経緯
第1段落記載の●●という事実は否認し、●●との事実は不知、その余の事実は認める。
第2段落記載の・・
第3段落記載の・・
3 ・・・
第3 被告の主張
1 本件ではいまだに婚姻関係が破綻していないこと
原告は●●などの事実を主張し、婚姻関係の破綻を主張しているものの、本件では、以下詳述する通り、●●との事実は認められず、かえって●●との事実が認められることから、婚姻関係は破綻していない・・・
2 ・・・
3 よって、原告の請求は速やかに棄却されるべきである。
なお,第一回口頭弁論(令和元年8月●日(●)午後1時15分)は欠席いたしますので,答弁書を擬制陳述いたします。
答弁書を作成するときのポイントは3つです。
第1 請求の趣旨に対する答弁
一つは、「第1 請求の趣旨に対する答弁」で、原告の要求内容(請求の趣旨)を丸呑みするのでなければ、しっかりと「原告の請求を棄却する。」と記載することです。
というのも、原告の要求内容を認める/応じるという書き方を、請求の趣旨に対する答弁に記載してしまうと、原告の請求を認諾したとして、法律上、全面敗訴と同じ結果になってしまいます。
原告の要求内容に一部でも同意ができないことがあるのであれば、答弁書では、「原告の請求を棄却する。」と記載し、争う意思を明確に示しましょう。
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第2 請求の原因に対する認否
二つ目は、「第2 請求の原因に対する認否」はできる限り慎重に行うということです。
というのも、「第2 請求の原因に対する認否」では、原告の主張する事実関係に対して、被告が認めるのか(自白)、事実が違うと主張するのか(否認)、知らないのか(不知)、何も言わないのか(沈黙)ということを明らかにしなければいけません。
そして、被告が認めた事実(自白)や沈黙した事実については、裁判のルール上、そのような事実が存在するものとして扱われます。
また、一度被告が認めた事実を後から撤回するということは基本的に出来ません。
そのため、不用意に事実を認めたり沈黙したりすると、のちの裁判で非常に不利な立場になってしまうことがあります。
かと言って、なんでもかんでも否認したり、知らないと主張したり(不知)というのもお勧めできません。
当然知っているはずの出来事を知らないと主張したり、証拠や客観的事実から認められる事実を否認したりすると、裁判官の目からは不合理な弁解や主張する困った人と映ってしまいます。
離婚の裁判(訴訟)では、人としての信用性というのは非常に重要です。
そのため、訴訟の最初の段階で、“不合理な弁解や主張をする困った被告”との印象を持たれると、そのまま挽回することが難しく、訴訟が不利に進んでしまいます。
そこで、答弁書の「第2 請求の原因に対する認否」に対しては、認めるところは認め、否定するところはしっかりと否認する(できる限り理由付きで否認する)という戦略的なメリハリが重要になります。
適当に答弁書の認否を書いてしまったために、のちの判決で不利な判断が下されないよう慎重に慎重さを重ねて作成しましょう。
第3 被告の主張
三つ目のポイントは、「第3 被告の主張」です。
被告の立場からすれば、原告の要求内容や主張する事実関係をやみくもに否定していればいいだけではありません。
被告の立場からも、被告の主張する事実関係が真実であり、法的にも正しいことを積極的にアピールして、裁判官を説得しなければなりません。
受け身の立場で原告の言い分に言い返すだけではなく、被告からもしっかりと言い分を主張していきましょう。
例えば、
原告が要求する離婚を否定したい場合は、被告の立場からすると夫婦が円満だったという事情、原告が身勝手な理由で別居を開始したという事情、証拠(仲良く過ごしている写真、別居直前の原告とのLINEやメールのやり取りなど)を積極的に主張していく。
原告が要求する慰謝料を否定した場合は、被告の立場からすると逆に原告が被告に対して暴力を振るったり精神的虐待に及んだりしていた事情や証拠(診断書、暴力跡の写真、録音や録画など)を積極的に主張していく。
など被告からも自分自身に有利な事実や証拠を積極的に出していきましょう。
最後に、上で解説した第1回の裁判の期日(口頭弁論期日)を欠席する場合、必ず、答弁書の最後に
「なお,第一回口頭弁論(令和元年7月●日(●)午後1時15分)は欠席いたしますので,答弁書を擬制陳述いたします。」
と記載しましょう。
こちらを記載すれば、裁判所も被告は初回欠席することがわかり、スムーズに第2回の期日の日程調整などの準備をすることができます。
3 できる限り早めに弁護士に相談しましょう。
以上の通り、裁判所から離婚裁判(訴訟)に関する書類が届いた場合の対応を解説しましたがいかがでしょうか。
なお、無料相談で構わないので、裁判(訴訟)が提起された場合には、できる限り早めに弁護士に相談することを強くお勧めします。
調停は話し合いの手続きですが、訴訟は裁判所が法律を用いて判決(ジャッジ)を下す手続きです。
そのため、あなたの主張が法律的に正当であることを裁判官を説得していく作業になります。
そして、最初に提出する答弁書や準備書面というものは、裁判官にとって、事案の見通しや進行を決定づけるもので非常に重要です。
離婚裁判(訴訟)の初期段階でつまづいて、その後挽回することはいくら優秀な弁護士でも非常に難しくなってしまいます。
そこで、できる限り早めに弁護士に相談し、弁護士に依頼するか(依頼した場合は弁護士が答弁書を作成します。)、依頼しない場合でもどのような戦略で進めるのかアドバイスを受けた上で、実際に答弁書の作成などに着手することを強くお勧めします。
弁護士のホンネ
裁判所から書類が来るとギョッとしてしまいますよね。
過去のお客様でも、訴えられた瞬間、そのことで頭が一杯になり、仕事にも手がつかなくなったり、夜も眠れなくなったり・・・などとの声をよく聴きます。
もちろん弁護士に依頼するか相談するかなどはお客様の完全な自由です。
ただし、3でも書きました通り、弁護士に相談するだけでかなり不安も軽減できますし、自分のやることに集中できるので、本当にお早めのご相談をお勧めしております。
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