離婚協議書はこうやって書く!弁護士が解説

弁護士の青木です。

今回は、妻または夫と離婚の話し合いをしていて、離婚協議書を作ってみたいと思った方のために、離婚協議書にはどんなことを記載すれば良いのか、お話します。

 

そもそも妻または夫が離婚に応じてくれないため、離婚協議書を示してこちらの決意を示したい!という方にも有用だと思います。

ぜひ最後までお読みください。

 

1 離婚の合意

(離婚の合意)
第1条 夫 横浜プロキオン(以下「甲」という。)と妻 横浜リゲル(以下「乙」という。)は、甲と乙との間の子シリウス(以下「丙」という。)の親権者を乙とし、本日、協議離婚することを合意する。

 

離婚をする際には、お二人の間に未成年者がいる場合は、必ず親権者を決めなければいけません

したがって、最初の条項では、親権者を誰にして離婚に合意するのかを明示します。上の例では、妻であるリゲルさんが子供の親権者となっています。

 

上の例で記載されている「(以下「甲」という。)」などの表示は、必須ではないのですが、日本の契約書や合意書では一般的です。

一度甲だとか乙だとかの表示の約束をすれば、その後の条項ではフルネームを記載する必要はなくなりますから、合意書を作るのが少し楽になります。ただし、次の条項以降で、甲と乙を逆に使ってしまわないよう、十分に気をつけましょう。

 

2 離婚届の届け出

(離婚届の届け出)
第2条   

1 甲と乙は、本離婚協議書に押印後、速やかに、離婚届に署名押印し、有効な離婚届を作成する。

2 乙は、前項の離婚届を受領後すみやかに役所に提出する。

 

この条項は、法的にはなくても構わないのですが、記載をすることで妻のリゲルさんに手続きを早く進めるよう働きかけることができます

 

通常は、妻である乙が離婚届を役所に届け出るものとすることが多いです。

妻は結婚により氏(苗字)を夫のものに変えていることが多いところ、離婚すれば前の氏に戻ることができます(「婚氏続称」と言います。)。

 

ところが、離婚届と一緒に役所に別の書面(「離婚の際に称していた氏を称する届」)を届け出ることで、婚姻時に名乗っていた氏をそのまま名乗ることができるようになります

その選択を妻ができるようにしておくために、妻に離婚届を提出してもらうわけです。

なお、この選択ができるのは、離婚成立の日から3ヶ月以内です

 

 

3 養育費の支払い

(養育費の支払い)
第3条
   

1 甲は乙に対し、丙の養育費として、令和元年7月から丙が成人に達する日の属する月(ただし、丙が大学またはこれに準ずる高等教育機関に進学して通学する場合は、丙が22歳に達した後の3月)まで、1ヶ月5万円ずつの支払い義務があることを認め、これを毎月末日までに、乙の指定する銀行口座に振込む方法にて支払う。振込手数料は甲の負担とする。

2 甲と乙は、丙の進学・病気・怪我などにより特別の出費を要するときは、その負担について別途協議する。

 

丙の親権者が妻である乙に決まった場合、夫であるプロキオンさんは、乙に対して離婚後養育費を支払わなければなりません

 

その金額については、裁判所が公表している、いわゆる婚姻費用・養育費算定表」を元に定めることが通常です。

なお、昨今、養育費の金額を大幅に増額する案が日弁連から出されましたが、かなり偏った見解に基づく金額であるとの批判も強く(養育費を支払う側の生活が大変厳しくなる内容です。)、裁判所では全くと言って良いほど採用されていません。

裁判所では、最高裁が現在養育費の算定方法を練り直しているようで、近々新しい基準が公表されるかもしれません。

 

上の例では、「丙が成人に達する日の属する月」と記載しましたが、丙の誕生日が10月10日であれば、20歳に達した10月までの分ということになります。

ただし、法律上、成人年齢が18歳に下がる予定ですので、実際には18歳に達した10月までになる可能性があります。今後、ここは議論になっていくと思われます。

妻である乙からすれば、きちんと「丙が20歳に達する日の属する月」と記載した方が得でしょう。

 

 

かっこ書で、大学などに進学する場合ば、22歳に達するまでとされてますが、良く記載される内容です。

もっとも、親が子の面倒を見なければならないのは、原則として子が成人に達するまでです

したがって、記載がなければ、子が20歳を超えたら養育費の負担は原則として不要です。

記載があれば、大学進学の場合には負担が義務付けられます。

 

養育費の支払い方法について、上の例では、乙の指定する口座に振り込む内容になっておりますが、ここで銀行と支店、口座番号などを特定することも多いです。

子供名義の口座にすることもあります。

 

上の例では、2に、子供の進学・病気・怪我の場合における協議条項を記載しました。

これは、「特別出費条項」と呼ばれており、良く記載されています。

もっとも、直ちに夫の出費が義務付けられる訳ではなく、あくまでも誠実に協議を行うという義務ですので、法律上はあまり効果はありません。

夫に負担を働きかける意味合いを持つものです。

 

なお、養育費の計算については、「基本の基本!算定表を使った養育費の計算を弁護士が解説!をご参照ください。

 

4 面会交流

(面会交流)
第4条   

1 乙は、甲に対して、甲と丙が、毎月1回、面会交流することを認める。

2 前項の面会交流は、毎月第2土曜日の午前11時から18時までとし、JR横浜駅改札前にて丙を引き渡す方法により実施するものとする。

3 毎年丙の夏休み期間中に、1泊ないし2泊程度の宿泊付き面会交流を1回実施するものとし、受け渡し場所、宿泊場所、および方法等については毎年6月末を目処に、事前に当事者間で協議して定める。

 

面会交流は、子供が、離れて暮らす親からも愛されていることを身をもって知ることのできる唯一の機会です

ぜひお子様のためにも取り決めをしましょう。

最近は、裁判所でも宿泊付きの面会交流を命じられることがあります。それくらい重要度が上がっています。

 

離婚協議書で定めた面会交流の内容は、原則として、前提となる状況に変化がなければ変更はできません(もちろん、合意ができれば変更は可能です。)。

したがって、定める場合は注意深く対処する必要があります。

あまりにも頻度が少ないもの(年に2回など)は子供のためになりませんし、多すぎて子供に負担になりすぎるもの(週に2回など)も問題です。

 

一般的には、上にあげたように、月1回から2回程度が普通で、長期休みの時は宿泊付きの面会も取り決めることがあります。

なお、面会交流については、「教えて!子との面会交流に関する手続きとよくある質問について」もご参照ください。

 

 

5 財産分与

(財産分与)
第5条   

1 甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、金200万円の支払義務があることを認め、令和元年10月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

2 甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、本日、別紙物件目録記載の不動産に関する甲の共有持分を全て譲渡する。

3 甲は、乙に対し、前項記載の不動産について、本日付財産分与を原因とする持分全部移転登記手続をする。

4 前項の登記手続きに関する費用は乙の負担とする。

5 乙は、甲に対し、債権者をオリオン座銀行として債務者を甲とする平成25年10月1日付金銭消費貸借契約に基づく住宅ローンの残額について、責任をもって完済することを約束する。

 

さて、いよいよ大きなお金が動く部分です。

でも記載はシンプルですね。

上の例では、キャッシュと不動産、そして住宅ローンの取り扱いについて記載されています。

 

夫婦双方の総財産について、夫婦はそれぞれ2分の1の権利があります(特有財産を除きます。)。

不動産を承継したり、ローンを引き継いだりして、その権利が満足できるまで調整します。

もっとも、最後にはどちらかが一定の金額をもう片方に支払う形で調整することになるでしょう。

ここでは、不動産やローンを乙が承継するなどし、さらに甲が乙に対して200万円を支払う内容で、調整をしています。

 

自宅不動産については、通常、「別紙物件目録記載の不動産」と述べて、離婚協議書の最終ページにその不動産情報を記載します。

こんな感じです。

(別紙)

物 件 目 録

1 土地
(1)所在 横浜市さそり区天秤二丁目
(2)地番 15番20
(3)地目 宅地
(4)地積 120.05平方メートル
          共有者 横浜プロキオン 持分10分の7
          共有者 横浜リゲル           持分10分の3

2 建物
(1)所在 横浜市さそり区天秤2丁目15番20
(2)家屋番号 15番20
(3)種類 居宅
(4)構造 木造スレート葺2階建
(5)床面積 1階 60.15平方メートル
                       2階 60.35平方メートル
          共有者 横浜プロキオン 持分10分の7
          共有者 横浜リゲル           持分10分の3

こうした不動産の情報は、法務局で取得できる不動産登記事項証明書に記載されています。

離婚協議を始める段階になったら、早いうちに取得しておきましょう。

不動産登記を扱っている法務局であれば、全国どこの法務局でも取得できます。一通数百円です。

 

財産分与については、「【保存版】これで完璧!離婚のときのお金・財産分与の基礎知識」もご参照ください。

 

離婚のとき借金はどうなる??

 

6 慰謝料

(慰謝料)
第6条   

甲は、乙に対して、本件離婚に伴う慰謝料として、金200万円を支払義務があることを認め、令和元年10月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

 

もし離婚に至った原因として甲の不貞など、違法行為があった場合は、慰謝料の取り決めを行うこともあります。

相場は200万円から300万円程度が一般的です。

性格の不一致とか、どちらが一方的に悪いというケースでない場合は、慰謝料は生じません

 

7 年金分割

(年金分割)
第7条   

甲と乙の年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める。甲および乙は、年金分割に関する公正証書を作成する。公正証書作成費用は甲乙折半とする。

 

年金分割についても取り決めを行う場合がありますが、仮になくとも、離婚後に「年金分割の割合を定める調停」を離婚後2年以内に申し立てる形で対応することもできます

調停を使わない場合は、公証役場に行って取り決めを公正証書化必要がありますので、離婚協議書で記載する必要はないかもしれません。

もちろん、離婚協議書を公正証書化するのであれば、年金分割の取り決めも入れるべきです。

 

 

8 清算条項

(清算条項)
第8条   

甲乙は、本件離婚に関し、本離婚協議書に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。

 

気をぬかないでください。この清算条項の定めは絶対的に重要です

この条項によって、離婚に関する揉め事が最終解決したことが保証されます。

 

「本件離婚に関し」という言葉がありますが、通常は、入れても入れなくてもどちらでも良いです。

しかし、夫婦間とはいえ、別居後のお金の貸し借りなど、財産分与に含まれる問題か不明瞭なものがある場合は、むしろ「本件離婚に関し」を除外しておきましょう

そうすると、離婚に限らず、一切の問題について権利義務関係がないことになり、争い事がなくなります。

 

9 まとめ

最後に、以下、上記全ての条項を列挙した離婚協議書案を挙げておきます。

離 婚 協 議 書

(離婚の合意)
第1条 夫 横浜プロキオン(以下「甲」という。)と妻 横浜リゲル(以下「乙」という。)は、甲と乙との間の子シリウス(以下「丙」という。)の親権者を乙とし、本日、協議離婚することを合意する。

(離婚届の届け出)
第2条

1 甲と乙は、本離婚協議書に押印後、速やかに、離婚届に署名押印し、有効な離婚届を作成する。
2 乙は、前項の離婚届を受領後すみやかに役所に提出する。

(養育費の支払い)
第3条

1 甲は乙に対し、丙の養育費として、令和元年7月から丙が成人に達する日の属する月(ただし、丙が大学またはこれに準ずる高等教育機関に進学して通学する場合は、丙が22歳に達した後の3月)まで、1ヶ月5万円ずつの支払い義務があることを認め、これを毎月末日までに、乙の指定する銀行口座に振込む方法にて支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2 甲と乙は、丙の進学・病気・怪我などにより特別の出費を要するときは、その負担について別途協議する。

(面会交流)
第4条

1 乙は、甲に対して、甲と丙が、毎月1回、面会交流することを認める。
2 前項の面会交流は、毎月第2土曜日の午前11時から18時までとし、JR横浜駅改札前にて丙を引き渡す方法により実施するものとする。
3 毎年丙の夏休み期間中に、1泊ないし2泊程度の宿泊付き面会交流を1回実施するものとし、受け渡し場所、宿泊場所、および方法等については毎年6月末を目処に、事前に当事者間で協議して定める。

(財産分与)

第5条
1  甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、金200万円の支払義務があることを認め、令和元年10月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。
2 甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、本日、別紙物件目録記載の不動産に関する甲の共有持分を全て譲渡する。
3 甲は、乙に対し、前項記載の不動産について、本日付財産分与を原因とする持分全部移転登記手続をする。
4 前項の登記手続きに関する費用は乙の負担とする。
5 乙は、甲に対し、債権者をオリオン座銀行として債務者を甲とする平成25年10月1日付金銭消費貸借契約に基づく住宅ローンの残額について、責任をもって完済することを約束する。

(慰謝料)
第6条

甲は、乙に対して、本件離婚に伴う慰謝料として、金200万円を支払義務があることを認め、令和元年10月末日限り、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。

(年金分割)
第7条

甲と乙の年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める。甲および乙は、年金分割に関する公正証書を作成する。公正証書作成費用は甲乙折半とする。

(清算条項)
第8条

甲乙は、本件離婚に関し、本離婚協議書に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。

 以上の通り合意したので、本書二通を作成し、甲乙記名押印の上、甲乙が各自一通ずつ保管する。

令和元年 7月 10日

(甲)
住所 横浜市さそり区天秤二丁目15-20
氏名 横浜プロキオン    印

(乙)
住所 横浜市さそり区天秤二丁目 15-20
氏名 横浜リゲル      印

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(別紙)

物 件 目 録

1 土地
(1)所在 横浜市さそり区天秤二丁目
(2)地番 15番20
(3)地目 宅地
(4)地積 120.05平方メートル
          共有者 横浜プロキオン 持分10分の7
          共有者 横浜リゲル           持分10分の3

2 建物
(1)所在 横浜市さそり区天秤2丁目15番20
(2)家屋番号 15番20
(3)種類 居宅
(4)構造 木造スレート葺2階建
(5)床面積 1階 60.15平方メートル
                       2階 60.35平方メートル
          共有者 横浜プロキオン 持分10分の7
          共有者 横浜リゲル           持分10分の3

 

弁護士のホンネ 

以上、いかがでしたでしょうか。

これはほんの一例であり、もっと細かい取り決めが必要な場合は、協議書も数ページにわたるものになり得ますが、どのような離婚でも、おおよそ取り決めるべき項目は、上に挙げたものになります。

離婚協議書といっても、法的な効力のある契約書です。記載すればそれに拘束されることになりますので、慎重に作成しましょう。

この記事が皆様の離婚問題に少しでもお役に立てましたら幸いです。

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