プロキオン法律事務所の弁護士荒木です。
ある日突然、弁護士から内容証明郵便や特定記録郵便で通知書が送られてきます。
中身を見てみると、あなたの夫や妻が依頼した弁護士からの通知書でした。
そこには概ね以下のようなことが書かれています。
通知人(あなたの夫や妻)はあなたと離婚したいと考えている。
離婚のための話し合いを行いたい(又は裁判所に調停を申し立てるので対応してほしい)。
今後は通知人本人、親族、職場などには一切連絡せず、全て弁護士に連絡してほしい。
その他の連絡事項(婚姻費用を支払ってほしい、面会交流を行ってほしい、通知人の自宅に近づかないでほしい等)
これを受け取ったあなたは何をするべきでしょうか。また、何をしてはいけないでしょうか。
以下、わかりやすく解説していきます。
1 まずは冷静になる
弁護士から自分宛の内容証明郵便を受けとるなどということは、ほとんどの人には経験がないと思います。
そのため、弁護士からの通知書を受け取っただけで動揺してしまう人も多いです。
しかし、弁護士からの通知書を受け取ったからといって、あなたに何かしなくてはいけない法的な義務が生じることはまずありません。
まずは落ち着いて通知書をしっかりと読みましょう。
そうすれば、要は弁護士は、「これから離婚の話し合いを行っていきたい」「通知人やその周りには直接連絡せず弁護士に連絡してほしい」ということを言っていることがわかると思います。
2 速やかに弁護士に相談する
今後は弁護士を通して連絡してほしいと言われてしまった以上、今後あなたは弁護士と話し合いをしていかなければなりません。
しかし、当然ですが、弁護士には専門的な法律知識があり、これまで何件(弁護士によっては何百件)もの離婚事件を扱ってきた経験もあります。
弁護士は、その知識や経験に基づき、これから行われる話し合いだけでなく、将来的に調停や裁判になった場合も想定して行動します。
あなたのどんな発言や行動が、将来的にあなたの不利になるかもしれません。
ですので、あなたも速やかに専門家である弁護士に相談し、今後の対応方法を協議する必要があります。
今は多くの事務所で初回の無料相談を行なっています。
そのような無料相談でかまわないので、まずは弁護士に相談をするべきです。
3 弁護士に相談する前にしてはいけないこと
①相手に対する直接の接触
弁護士からの通知書には、必ずと言っていいほど「通知人本人や通知人の親族・勤務先などに接触はしないでください」という内容が記載されています。
では、これを無視して相手に直接の接触をした場合はどうなるでしょうか。
この「接触しないでください」という内容はあくまでお願いです。
ですので、これを無視して接触したからといって、あなたに法的なサンクション(制裁)が課されるわけではありません。
しかし、弁護士を通じての正式なお願いを無視することは穏当な姿勢とは言えません。
あなたが直接相手に連絡を取った場合には、弁護士から改めて抗議があるでしょうし、もし直接会いに行った場合などには警察を呼ばれることもあります。
そして、あなたの行動は不穏当であるなどと指摘され、離婚や面会交流において不利な材料として主張される可能性があります。
また、直接の連絡ではどうしても感情的になってしまうことも多く、相手を怯えさせてしまったり、うっかり不利なことを口にしてしまうこともあります。
このように、あなたにとって百害あって一利なしという結果になることが多いため、直接接触することはおすすめしません。
②離婚の話し合いに応じてしまうこと
できれば相手の弁護士に何か連絡する前に、まずは弁護士に相談するのがベストです。
しかし、そうは言っても、すぐに弁護士に相談できるとは限りません。
また、面会交流や私物の片付けやその他の事務連絡の必要などから、どうしても相手の弁護士に連絡しなくてはならないこともあると思います。
その場合に注意していただきたいのが、相手の弁護士には必要な連絡事項だけを伝えて、離婚については一切話し合いを進めないことです。
もし離婚についてどのように考えているか問われた場合は、(離婚条件だけでなく)離婚に応じるかどうかも含めて検討中と回答しておくのがいいでしょう。
というのも、この時点で離婚についての考えを明かしてしまうと、今後の交渉上不利なってしまうことがあるからです。
たとえあなたが離婚自体はやむを得ないと考えていても、それを伝えずに離婚自体から争う姿勢を見せた方が、より良い離婚条件を獲得できたり、かえって早期に解決できる場合もあります。
それだけでなく、離婚を受け入れる回答をしてしまうことが法的にも不利な事情となってしまうことさえあります。
そのため、あなたも弁護士に相談するまでは、離婚については一切を検討中としておくことがベターです。
4 まとめ
・弁護士から離婚を求める通知書が来た場合は、まずは落ち着いて内容をしっかり把握しましょう。
・速やかにあなたも弁護士に相談しましょう。
・弁護士に相談するまでの間、相手には何も連絡しないことがベスト!
・もし連絡する必要がある場合は、必ず相手の弁護士を通しましょう。
・弁護士に連絡する場合でも、離婚については一切を検討中とし、あなたの考えを伝えないことが大切です。
以上の点を心がけた上で、あなたも弁護士としっかり相談し、どのような方針で相手と話し合いをしていくのか決定してください。
法律相談をしていると、もっと早く相談に来てくれていればこんなことにはなっていなかったのにというケースがよくあります。
それは離婚そのものの話だけにとどまりません。
例えば、別居した後も給与口座を管理され好きなだけお金を使われていたり、逆に請求できるはずの生活費を全くもらえていなかったりといった、離婚までの間の関係をどう整理していくかという問題であることも多々あります。
弁護士に相談したからといって必ず依頼しなくてはいけないわけではありません。
まずは相談をしてみて、今後の進め方の選択肢を知ることが大切です。