夫(旦那)に対して、「離婚したい。」「別の人生を歩みたい。」と持ちかけても、夫から「離婚なんて絶対しない!」「離婚したいのなら、子供もお金も渡さない!お前だけ出て行け!」などと言われて、諦めてる世の女性は多いのではないでしょうか。
同居中に、妻から夫に対して離婚を求めても、お子様のことや世間体などが原因でなかなか夫が離婚に応じてくれないという事案は多いです。
それでは、離婚を拒否する夫を離婚に応じさせるには、一体どうすれば良いのでしょうか?
離婚・男女トラブル専門の弁護士が、夫を離婚に応じさせるポイントを解説いたします。
ポイント1-(可能であれば)まずは別居しましょう!
夫が離婚に応じてくれずお悩みの奥様方へー
ご実家のご家族が協力的だったり、ご自身で賃貸住宅を借りることが可能であったりと、もし別居が可能なご事情があれば、まずは別居して、夫と距離を置くほうがベターです。
理由として、以下の2つの理由が挙げられます。
夫が、妻が本気で離婚を望んでいると理解し、覚悟しやすくなる。
夫としても、妻が別居をすることにより、自分の状況や妻の心情を理解し、(個人差はありますが)離婚をある程度覚悟します。
今後、お話し合いを進めていく上でも、夫が心理的に「離婚はしょうがない。」と思ってくれる可能性は高まります。
そして、より重要なのが
別居の実績は、裁判で離婚を求める場合、非常に重要視される。
妻が、夫に対して、離婚を求めたとしても、夫との同居生活を継続する場合、法的には(夫の不倫や暴力がない限り)離婚原因は認められず、裁判で離婚が認められる可能性は低いです。
もっとも、裁判でも、別居期間が概ね4年程度の場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められやすい傾向にあります。
すなわち、別居実績を積めば、「遅かれ早かれ別居が継続すれば、離婚を迫られる。」というプレッシャーを夫に与えることができます。
そうすれば、夫側も、「離婚を拒否し続けたとしても、このまま別居が継続して、裁判で離婚が認められてしまうよりも、離婚に応じよう。」という心理になります。
なお、お子様の親権に争いがある場合、お子様を連れて別居を開始すると、「子供の不当な連れ去り」ということで、トラブルになることがあります。
連れ去りが悪質と判断された場合には、最悪、親権者として認められないリスクがありますのでご注意ください。
無理な別居がお子様を傷つけることもありますので、お子様の福祉を第一に、別居するかどうかは慎重に検討しましょう。
また、別居後、お子様の福祉のために、父親である夫との面会交流は積極的に行ってあげましょう。
ポイント2-別居できたら、離婚調停と婚姻費用調停を申し立て
夫と別居した場合、離婚に応じてもらうには、家庭裁判所に
夫婦関係調整調停(離婚)
婚姻費用分担調停
の2つを申し立てることをお勧めします。
夫は、夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てられることで、調停の場で離婚の話し合いをすることを迫られます。
これも、あなたが、夫に対して真剣に離婚を望んでいること、もはや後戻りはできないことを伝える強力なメッセージになります。
また、別居期間中は、婚姻費用と言って別居期間中の生活費を請求することができます。
別居中の生活費(婚姻費用)は、「養育費・婚姻費用算定表」というツールを使って、計算します。
※詳しくは「基本の基本!算定表を使った養育費の計算を弁護士が解説!」をご参照ください。
夫婦関係調整調停(離婚)と婚姻費用分担調停は、関連事件として家庭裁判所において一緒に処理されることになります。
プロキオン法律事務所の弁護士の青木です。さて、夫との結婚生活に疲れてしまった女性は多くいらっしゃいます。夫のモラハラや浮気など、原因はいろいろです。しかし、夫に対する信頼は崩壊してしまったが、かといって離婚をした後の生活も不安で、一[…]
あえて、婚姻費用分担調停を申し立てるのは以下の理由からです。
別居中の生活費(婚姻費用)を夫から支払ってもらえる。
これはそのままですね。
調停を申し立てれば、調停を申し立てた月から、夫から支払ってもらえるようになります。
夫からしても、離婚をするインセンティブが生まれる。
夫の立場からしても、離婚が成立するまでの間、妻に対して、養育費よりも高額な生活費(婚姻費用)を支払わなければなりません。
この別居中の生活費(婚姻費用)の負担は夫にとっては非常に重く、「離婚に応じれば生活費(婚姻費用)の支払いから解放される!」という離婚に応じるインセンティブが夫にも生まれます。
以上より、できれば調停の場で離婚と婚姻費用の話し合いを進めたほうがベターかと思います。
ポイント3-もし別居できない事情があれば、弁護士からの交渉か、離婚調停のみ申し立て
ただし、ご収入の関係で賃貸住宅を借りれなかったり、ご実家がご遠方にあったりと、別居をすることが難しい方も多くいらっしゃると思います。
その場合には、
弁護士に依頼して、離婚の交渉をする。
離婚調停のみ申し立てる。
などの方法を検討してみましょう。
先ほどお伝えした通り、弁護士から交渉文が届いたり、裁判所から離婚調停の申し立てを受けたりすると、夫も、妻の離婚への本気度を理解し、態度が変わることがあります。
ポイント4-最後の手段は、数年以上の別居+裁判!
もっとも、離婚調停も、弁護士を通じての交渉も、夫が頑なに離婚を拒否した場合には、離婚をすることはできません。
最後の手段は、さらに数年以上の別居を重ねて、離婚裁判を提起することです。
おおよそ4〜5年以上の別居期間があれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められ、裁判でも離婚できる可能性が高まります(妻側が不倫を働いたなど「有責配偶者」に該当する場合は別です。)。
調停で話し合いがまとまらなかった場合には、最後の手段として離婚裁判を検討してみましょう。
いかがでしたでしょうか。
夫が離婚になかなか応じてくれない場合には、距離をおき冷却期間を置くという趣旨でも、別居することをご検討してみてください。
ただし、本文中にも書きましたが、無理な別居によってお子様を傷つけてしまうこともあります。
お子様の心情を理解し、別居する場合にもお子様に配慮し、別居後もお子様と父親である夫との面会交流はしっかりやって、極力、お子様への精神的なご負担が少なくなるようご配慮ください。
少しの選択ミスが数百万の損失につながるという点で、婚姻費用や養育費の金額に付いては、慎重になるに越したことはないと思います。
合意するのが心配であれば、調停を不成立にさせて審判で裁判官に判断してもらうのも有力な方法です。
一度決まってしまうと、後から減額の申し立てを行っても、裁判所はよほどのことがない限り、減額を認容してくれません。
離婚調停が申し立てられた場合、婚姻費用調停が追加で申し立てられていることが多くあります。
そうした場合は、ぜひ弁護士に相談してほしいと思います。