1 覚悟をせずに婚姻届を提出しようとしてないか?
二人の男女が恋い焦がれ、その後数ヶ月から数年を経て、男性からプロポーズ。
そうして結婚が始まります。
多くの男性は、生涯一緒にいるとしたら、この女性以外は考えられないとして、プロポーズをします。
今回は、これから結婚をする予定の男性にお伝えしたいことをお話します。
男性も、非常に打算的な生き物です。
男性が打算的であることがあまり強調されないのは、それが当たり前すぎるからと言えるでしょう。
プロポーズをする男性は、その理由として、「この女性以外は考えられなかったから」といいます。
しかし、より厳密に言えば、「この女性よりも美人で性格のいい人を見つけられる可能性と、今の女性を逃した場合に自分の売り時を逃すリスクを天秤にかけ、リスクの方が高いと判断したから」というのが現実かもしれません。
物事を合理的に考える男性だからこそ、知っておいてほしいことがあります。
それは、結婚、特に婚姻届を役所に提出することの重みです。
その時のハイテンションな気分で役所に婚姻届を提出しても、その後の苦悩(程度の差はあれ、必ずあります)は想定していなかったというのがほとんどといえるでしょう。
しかし、婚姻届を役所に提出するという簡単な作業は、実は大きな法的な拘束をもたらします。
以下にお伝えしましょう。
2 結婚後の男性の3大義務
⑴ 他の女性とセックスしてはならない
性欲は愛情とは別物であると言われて久しいです。
結婚をすれば、妻という、一人の女性以外を相手に、性欲を満たすことは認められません。
一盗二卑三妾四妓五妻という言葉をご存知の方もいらっしゃると思います(詳しい意味については検索していただければと思います。)。
寂しいものではありますが、想像するに、事実である面は否定できないでしょう。
また、社会学者の上野千鶴子氏は、結婚を、「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって唯一人の異性に譲渡する契約のこと」と辛辣に定義しています(『人はなぜ不倫をするのか』亀山早苗著)。
この義務は、もし妻が万一セックスに応じてくれなくなった場合でも、また妻に対して性的魅力を抱かなくなった場合でも、変わりません。
結婚の大きな拘束力の一つである理由がここにあり、上述の上野氏の定義が本質を付いていることが分かります。
それでは、もし、他の女性とセックスをしてしまったらどうなるでしょうか。
妻からは愛想をつかれ、離婚を要求されるかもしれません。
それはそれで、諦めがつく場合もあるでしょう。
しかし、もし、別居になったはいいが、離婚をしてくれないという事態になったらどうでしょうか。
こういう時、こちらから離婚を請求するという手段をお考えになるかもしれません。
しかし、他の女性とセックスをした場合、それだけで、「有責配偶者」という肩書になり、離婚請求は原則として認められなくなります。
もちろん、妻が離婚に応じてくれればいいですが、そうでない場合、裁判所に訴えても、簡単には離婚をさせてもらえない場合が多いと言えます。
あまりおおっぴらには言われませんが、人間の欲求の核心部分であるこの「性欲」については、結婚という選択に際して、もう少し検討すべき事柄かもしれません。
⑵ 別居しても妻に生活費を渡し続けなければならない
夫婦のお互いのすれ違いが重なり、別居に至るということがあります。
そうした場合でも、あなたが妻よりも収入が高ければ、妻の生活費も一定の負担をしなければなりません。
そして、あなたがもし他の女性と関係をもってしまったために、別居になってしまった場合はどうなるか。
あなたは裁判所に離婚を求めても、裁判所は原則として離婚を認めてくれません。
その結果、あなたは半永久的に妻に生活費を支払い続けなければならなくなります。
その時の、あなたがもらう対価は何でしょうか?
妻とは同居をしていませんから、妻から何かをしてもらうということはありません。
そうです、あなたがもらう対価はゼロです。
あなたはただひたすら妻に生活費を支払い続けるという状況に陥ります。
また、一度決まった生活費の額は、簡単には下げることができません。
あなたが会社に解雇されたという場合であっても、その減額の請求を裁判所に認めてもらうのは簡単ではありません。
そして、あなたに好きな人が他にできても、有責配偶者という肩書では、やはり離婚は認められません。
したがって、好きになった人との再婚の道も、当面阻まれてしまいます。
⑶ 働いて築き上げた財産は離婚のときに半分渡さなければならない
この日本で、離婚は、今や3組に1組です。
乱暴な言い方になってしまいますが、あなたが結婚後に築き上げた財産の半分を、将来妻に持っていかれる可能性は、33%です。
日本では、財産分与という制度があります。
あなたが汗水たらして築き上げた結婚後の財産は、妻が専業主婦であっても、半分を離婚時に渡さなければなりません。
これが公平なのかどうかは大いに議論があり得ますが、現在の家庭裁判所の運用では、専業主婦の妻に5割の権利を認めています。
3 リスクを回避する方法を真剣に考えよう
結婚は、合意に基づくものです。つまり、契約の一種です。
ですから、それを行うかどうかはあなたの意思にかかっているはずです。
しかし、家の賃貸借契約や、保険契約、携帯の利用契約については、かなり吟味をするのに、結婚(婚姻)契約についてはほとんど吟味しない方が本当に多いです。
でも、結婚に伴う、既に述べた義務の重さから考えれば、もっと真剣に吟味すべきなのは明らかですね。
何を吟味しましょうか。
まずは、結婚という法制度を利用するべきかどうかです。
世の中には内縁というものもあります。
内縁の場合も、財産分与については適用されることはありますが、しかし、別居イコール内縁の解消ですので、別居の間の生活費を支払う義務などはなくなります。
また、結婚の際に、男女間で契約をすることも可能です。婚前契約といいます。
日本ではあまり利用されていませんが、制度としてはしっかり存在します。
例えば、別居時の生活費は自分で責任を持つことや、財産分与は行わない、自分の名義資産はその名義人がそのまま承継する、といったことを契約で定めることができます。
ただし、これは結婚後ではできません。かならず、婚姻届を役所に提出する前に行う必要があります。
内縁という方法。そして、婚前契約という方法。
結婚によるリスクを少しでも回避する手段はこのように存在します。
別居・離婚リスクの回避という意味で、これから結婚を予定している方は、真剣に検討してみても良いでしょう。収入の高い女性もこれは同様です。
いまや3組に1組が離婚する時代です。
リスク回避社会であるにもかかわらず、この離婚リスクに対する処置は全くと言っていいほどなされていません。
もう一度いいます。3組に1組が離婚をします。
33%の可能性で起きる事故は、交通事故や病気リスクの比ではありません。
33%の可能性で起きる事故と考えれば、これは絶対に保険の加入を検討した方が良いことは明らかでしょう。
また、内縁や婚前契約は、保険料がかかりませんね。
※1 全国平均車両数÷全国平均事故発生件数
(数の典拠:http://www.insweb.co.jp/jidousya-jiko/jiko-ranking.html)
※2 現在30歳の男性が30年後までにがんで死亡する確率
(典拠:http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)
こうしたことを考える必要がある結婚制度って、どれほど意味があるのかと思われる方も多いでしょう。
そのように考える人が増えることで、結婚というもののあり方が変わっていく可能性があります。
結婚は、あくまでも法的な制度です。より利用しやすい制度として生まれ変わる日が来るかもしれません。
それまでは、この内縁や婚前契約といった形で、あなた独自の結婚のあり方を作っていくことが可能です。
それを採用するかどうかは別として、これから結婚を考えている方には、ぜひ頭においていただきたいと思います。
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