
配偶者から、「離婚には合意しているんだから、条件はあとで決めよう。とりあえず先に離婚だけ成立させよう」と言われたら、あなたはどうしますか?
離婚には納得しているけれど条件交渉が進んでいない場合、応じて良いのか迷ってしまう方は少なくありません。しかし、離婚に合意しているからといって、財産分与、養育費、面会交流などの条件を後回しにすることは、後悔につながる重大なリスクを伴う行動です。
今回は、離婚専門弁護士の視点から、「離婚だけを先に成立させること」の危険性と、各条件ごとの注意点を解説します。
(なお、状況によっては、離婚だけを先に成立させても問題のないケースもありますから、最終的には弁護士などへの相談をお勧めします。)
財産分与は後回しにすると「増額」のチャンスを逃す
財産分与の請求は、離婚後2年以内であれば可能です。
しかし、「後でできるから大丈夫」と安易に考えるのは危険です。なぜなら、あなたが離婚に協力しなければ、相手は裁判を起こしても簡単に離婚を成立させることができないからです。
特に、あなたに不貞行為などの離婚の原因となるような問題がない場合、相手は裁判で離婚を成立させるまでに3年から5年もの別居期間が必要になることがあります。
このようなあなたの協力なしには離婚が成立しない状況で、相手が財産分与を支払う側の場合、「早く離婚したい」という気持ちから、通常の金額に上乗せして財産分与を提示してくる可能性があります。
ところが、先に離婚を成立させてしまうと、相手は最大の目的を達成した後なので、離婚後の財産分与の交渉では上乗せは期待できなくなるでしょう。
もし相手が不貞などの有責配偶者であれば、より長い期間(8年〜10年)の別居が必要になるため、さらに大きな譲歩を引き出せるチャンスがあったはずです。具体的には、婚姻費用と養育費の差額を解決金として財産分与に上乗せできる可能性もあります。
これらの有利な利益を失ってしまうことは、大きな損失と言えます。
面会交流を後回しにすると「理想の頻度」が難しくなる
特に重要なのが、子どもとの面会交流の取り決めです。
相手が「離婚さえできればよい」と考えている場合、離婚成立後には、子どもをあなたに会わせるインセンティブ(動機)が一気に低下します(相手のもとに子どもがいる場合)。その結果、面会交流を一方的に制限されたり、拒否されたりすることも少なくありません。
離婚に応じる代わりに、面会交流の「頻度・時間」をできるだけ充実したものにするよう交渉することで、より理想的な条件で合意できる可能性が高まります。
仮に、離婚後に改めて裁判所の手続きで面会交流の条件を定めようとしても、「月1回・数時間」程度が裁判所が決定する相場です。裁判官にあなたの理想的な内容を実現してもらうのは難しいのが現実です。
あなたが充実した面会交流を求めるなら、条件を後回しにして離婚に応じることは避けるべきです。
養育費と婚姻費用:生活に直結する重要な視点
養育費について
養育費は、離婚後にいつでも請求できますが、これも財産分与と同様に、離婚前の交渉時の方が有利な条件を引き出せる可能性が高いです。
また、養育費は離婚後すぐに支払われなければ、毎月の生活が成り立たなくなる可能性が高いため、養育費の条件を後回しにして離婚に合意するケースはあまり考えられません。
婚姻費用との関係
「今すぐ離婚するかどうか」を考えるうえで、婚姻費用(生活費の分担)の問題も重要です。
婚姻費用の支払い義務は、離婚が成立すると当然に終了します。もし今、相手から高額な婚姻費用を受け取っている場合、離婚成立でその支払いがなくなることのデメリットを考える必要があります。
婚姻費用と将来の養育費との差額を計算し、すぐに離婚に応じる場合のデメリットを十分に吟味した上で、離婚を先に行なって良いか総合的に検討することが大切です。
まとめ
「離婚には合意しているから」と、安易に条件を後回しにして離婚だけを成立させてしまうと、後になって取り返しのつかない不利益を被るケースが多々あります。離婚は、一度成立してしまえば原則として撤回できません。
財産分与、養育費、面会交流、婚姻費用――すべてをトータルで考えて、「自分にとって本当に納得できる形」で離婚を進めることが大切です。
弁護士のホンネ

法律事務所
ここまでのポイントを振り返ると、離婚交渉においては、離婚の意思が強い側が交渉上不利になることがわかります。
「離婚だけ先にしてほしい」と言ってくる相手は、離婚の意思が強く、あなたの同意がなければ離婚できない立場にある場合が多いと言えます。
であれば、条件を後回しにするのではなく、今こそ有利な条件を引き出す最大のチャンスだと捉えるべきです。
ただし、あなた自身にも「早く離婚を成立させること自体がメリットになる」という事情があるかもしれません。したがって、すべての条件を総合的に検討し、判断することが重要です。
そのためにも、法律の専門家である弁護士に早い段階で相談し、ご自身の状況や希望に応じたベストな選択肢を一緒に検討してみてください。
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