1.はじめに
離婚——
できる限り、人生で避けたい出来事ではありますが、今や日本は、年間25万組のカップルが離婚する「離婚大国」です。
すなわち、結婚するカップルのおよそ3組に1組が離婚し、およそ2.1秒に1組のカップルが離婚している割合です。
しかし、「離婚は結婚の3倍の労力を使う。」とも言われるくらい、離婚は精神的な負担も大きく、手続もめんどくさいもの。
本ページでは、離婚の手続の流れや、絶対に抑えてほしいこと、それと離婚手続をとる場合お世話になることもある裁判所や弁護士について、離婚専門弁護士が解説いたします。
2.離婚する方法概観について
⑴ 絶対抑えるべきポイントとは?
まず、離婚するために、一番大事な絶対に抑えなければいけないことをお教えします。
離婚をするためには、
- 相手方の同意
- 法律上の離婚原因
のどちらかが必要になります。
そして、不倫をするなどして婚姻関係の破綻を招いた「有責配偶者」は、原則として離婚請求が認められません。
ただし、未成年の子供がいない+別居期間が相当長期+離婚に際して相手に十分な経済的給付を行うなどといった事情があれば、例外的に離婚できます。
現在の状況を抑えるために、下記の質問に答えてみてください。
ア 同意の有無
配偶者の方は離婚に同意していますか?
はい →あなたの状況は”A”です。
いいえ→イに進んでください。
イ 有責配偶者
(1)あなたは現在もしくは過去に不倫をしていて、不倫の証拠を配偶者の方に握られていますか?
はい →(2)に進んでください。
いいえ→ウに進んでください。
(2)あなたには未成年の子供がいますか?
はい →あなたの状況は”C”です。
いいえ→(3)に進んでください。
(3)10年以上の長期の別居期間はありますか?
はい →ウに進んでください。
いいえ→あなたの状況は”C”です。
ウ 離婚原因
(1)相手に下記のような事情はありますか?
・不倫(性交渉あり。証拠あり。)
・3年以上の生死不明
・強度の精神病
はい →あなたの状況は”B”です。
いいえ→(2)に進んでください。
(2)5年以上の別居期間はありますか?
はい →あなたの状況は”B”です。
いいえ→あなたの状況は”C”です。
回答
A あなたは協議離婚または調停離婚で離婚できる可能性があります。
B あなたには離婚原因が認められる可能性があるので、裁判離婚で離婚できる可能性があります。もちろん、相手との交渉次第で、協議離婚・調停離婚で離婚できる可能性もあります。
C あなたには離婚原因が認められないので、裁判離婚では離婚することは難しいでしょう。そのため、相手と協議・調停の場で交渉して、相手の合意を取得する必要が有ります。
いかがでしたでしょうか。
詳しくは、下記で解説いたします。
⑵ 協議離婚・調停離婚・裁判離婚
日本には、大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの制度があります。
そして、各制度がどのように異なるかというと、
家庭裁判所の関与ナシ・当事者の合意アリ
・協議離婚・・・当事者夫婦の合意と離婚届けの提出のみで成立する離婚。
家庭裁判所の関与アリ・当事者の合意アリ
・調停離婚・・・家庭裁判所の調停手続きで、当事者夫婦が合意して成立する離婚。
家庭裁判所に調停を申し立てて、調停委員という第三者を通して話し合いを行いますが、あくまで当事者間の合意が必要というのがポイントです。
家庭裁判所の関与アリ・当事者の合意ナシでも離婚可能性アリ
・裁判離婚・・・調停が不成立になった場合、裁判を提起すれば、法律上の離婚原因(不貞行為、悪意の遺棄、生死不明3年以上、強度の精神病、その他婚姻を継続し難い重大な事由)があるとき、相手の同意ナシでも離婚が認められます(判決離婚)。
法律上の離婚原因さえ裁判所に認められれば、当事者の合意すら不要というのが協議離婚・調停離婚との大きな違いです。
なお、各手続きの違いなどについては、「協議離婚・調停離婚・和解離婚・裁判離婚・・・違いをすごく分かりやすく解説!」をご覧ください。
⑶ 家庭裁判所と弁護士
調停離婚や裁判離婚の場合には、家庭裁判所に調停・裁判という手続きが行われることになります。
この家庭裁判所とは、家庭に関する事件の審判(家事審判)及び調停(家事調停)、訴訟(人事訴訟)などの権限を有する裁判所で、通常、各都道府県の地裁所在地に設置されています。
家庭裁判所は、家庭に関する事件を取り扱っているので、離婚以外にも、氏名の変更、性別の変更、養子などの審判、それと少年事件(少年審判)も取り扱っています。
家庭裁判所における家事審判や調停などは、プライバシー保護のため非公開で行われます。
また、家庭裁判所には、裁判官のほかに、家庭裁判所調査官という教育学や児童心理学のプロフェッショナルがいます。
子供の親権や面会交流の絡む問題では、家庭裁判所調査官が子供の精神状態や監護状況を調査して、調停・審判・裁判などの手続きにフィードバックすることもあります。
家庭裁判所調査官について詳しくは、「面会交流や親権・監護権などに大きな影響のある調査官調査ってナニモノ?」をご覧ください。
それと、離婚に関しては、弁護士に対して相談したり、代理人として依頼をすることも可能です。
よく、「離婚に強い弁護士」「離婚専門弁護士」などという広告を目にするかもしれませんが、弁護士には専門医制度のような専門を認定する制度はありません。
弁護士は法律事務であれば全て行うことができるので、理屈から言えば、どの弁護士も離婚事件を処理することができます。
ただし、弁護士経験うん十年でも離婚事件は取り扱ったことのない弁護士もいますし、若くても豊富な離婚事件経験がある弁護士もいます。
そうですから、弁護士を選ぶ際にも、弁護士の経験値は千差万別です。
さらに、実際に依頼を受け代理人として活動できるのは法律上弁護士に限られます。
そのため、隣接士業(行政書士、司法書士)などに離婚相談する際には、注意が必要です。
3.協議離婚について
⑴ 協議離婚とは?
協議離婚とは、当事者夫婦が離婚に合意して、役所に離婚届を提出して成立する離婚手続きです。
日本では9割程度が協議離婚です。一般の方が想像する最もポピュラーな離婚の形態だと想います。
協議離婚では、離婚に伴う子供のこと(親権、面会交流、養育費)やお金のこと(財産分与、慰謝料、年金分割)について全て当事者間の話し合いで決めなければなりません。
もちろん、役所は離婚届に記載事項がちゃんと書かれているか形式的にチェックするだけですので、子供のことやお金のことについては基本的に関与しません(ただし、親権者については離婚届に記載が必要ですので、親権者の記載がないと離婚届提出は受理されません。)。
そのため、当事者間でしっかりと話し合いをした上で、本来協議離婚をする必要があるのです。
ただし、実際には、これらの離婚条件についてはしっかりと話し合いをしているケースは稀で、
- 子供と一緒に暮らすことを諦めてしまう。
- 養育費の金額が相場よりも安い(もしくは高い)。
- 本来もらえるはずの慰謝料、財産分与をもらえていない。
- 年金分割をした場合年金が高額になるはずなのに、年金分割をしていない。
などどちらか一方が損をしているケースが多いように見受けられます。
なお、協議離婚でも、相手と話し合いが進まなない場合には、弁護士に依頼をして、弁護士がお客様の代わりに離婚の諸条件について交渉をすることが可能です。
弁護士に依頼や相談をした場合には、その弁護士の専門知識や経験を借りることができるので、依頼前より有利に解決できるケースが多いです。
今後離婚に向けたお話し合いをするのであれば、「離婚に向けた交渉をする際に守るべき7つのルール」をご覧ください。
また、突然妻から離婚を切り出されて動揺している方は、「妻から離婚を切り出されたら?必ずチェックするべき3つのポイント」 をご覧ください。
⑵ 離婚協議書について
協議離婚に際して、子供のことやお金のことで合意ができた場合には、のちのトラブルを防ぐために、離婚協議書を作成することをおすすめします。
離婚協議書とは、離婚の諸条件(子供のこと、お金のこと)を書面にまとめて、双方が署名・押印して、契約の形をとるものです。
離婚協議書は契約なので、離婚の諸条件について合意をしたという強い証拠になります。
また、万一、相手が約束した慰謝料を支払わなかったり、養育費が滞ったりした場合には、離婚協議書を根拠にして相手に請求することができます。
離婚協議書を作成しない場合、あくまで口約束になってしまうので、後日トラブルになったときに、言った言わないの水掛け論になってしまったり、ひどいときにはそんな約束はしていないと噓を付かれてしまうこともあります。
ぜひ、協議離婚の場合でも、あなたの権利を守るために、離婚協議書を作成することをおすすめします。
なお、弁護士が代理人として協議離婚の交渉をする場合には、後日のトラブルを防ぐため、必ず離婚協議書は作成します。
⑶ 離婚公正証書の作成
もし、あなたが養育費や財産分与・慰謝料などお金をもらう側であれば、離婚協議書から一歩進んで、ぜひ「離婚公正証書」を作成することを強くおすすめします。
離婚公正証書とは、離婚の諸条件について、公証役場で法律の専門家である公証人が作成する公文書です。
公証人が、離婚公正証書の内容を夫婦双方の前で読み上げて確認し、夫婦双方が署名押印し、公証人も署名することによって、離婚公正証書が作成されます。
ご夫婦双方には公正証書の「正本」がそれぞれ渡されますが、公正証書の「原本」は公証役場が長期間にわたって保存します。
離婚公正証書を作成した場合には、仮に相手が約束を破ってお金を支払わなかったり、養育費の支払いを怠った場合には、裁判所を通さずに、相手の財産(勤務先からの給与や、不動産・預金など)を差し押さえすることができるという強力な効果があります。
通常は裁判所に訴訟を提起するなどして、裁判所の「お墨付き」をもらわなければなりません。
離婚公正証書の場合には裁判所を通さずに相手の財産を差し押さえできる点で、単なる離婚協議書と比べ、その効果は絶大です。
しっかりとお子様の養育費を確保するためにも、協議離婚の場合には離婚公正証書を作成することをおすすめします。
離婚公正証書について詳しくは、「知らなきゃ損?!離婚するときって公正証書を作らなきゃいけないの?」をご覧ください。