離婚に向けた交渉をする際に守るべき7つのルール

 

さて、今回は、あなたが配偶者との離婚を決意した場合、実際にどのように話を進めていくべきかという、「交渉ルール」についてお話しします。

ルールとはいっても、相手のためにあるものではありません。

あくまでも、あなた自身のための「武器」として考えていただきたいと思います。

 

離婚の際、離婚すること自体でモメるということは、実はそう多くはありません。

 

たいていの場合は離婚の条件でモメるのです。

 

それは子供をどちらが引き取るのか、子供との面会の頻度はどうするのか、そして養育費や財産分与といったお金の金額の問題です。

 

それでは、あなたはどのように交渉をすべきなのでしょうか。

 

以下は、交渉術研究者たちの研究結果や、私の弁護士として試行錯誤をしてきた経験から導き出した交渉ルールです。

 

2から5については、トーマス C.カイザー「手強い顧客と渡り合う交渉術」(ダイヤモンド・ハーバードビシネスレビュー2001年9月号、森百合子訳)をも参考にさせていただいています。

 

交渉一般に通ずるものですが、離婚協議における交渉においても絶大な威力を発揮することもあります。

 

ぜひ活用してみてください。

 

ポイントは、「相手の顔をどう立てるか」ということと、「事前準備を怠らない」という2点です。

 

1.有利ポイントを数多く列挙しておく

 

注意するポイント

 

これが一つ目のルールです。

交渉においては、「こちらが段々と譲歩をしていること」を示すことが必要となります。

つまり、譲歩は不可欠です。

譲歩のない交渉は成り立たず、裁判にならざるを得ません。

譲歩は、それは相手の顔を立てることにつながり、一種の贈与となります。

それによって、相手にもそのお返しとして譲歩を求めることが容易になり、適度なところで妥結点が見つかるのです。

 

さて、あなたが交渉をするとき、客観的に、こちらが有利になるもの、あるいは相手が不利にならざるを得ないものがあると思います。

簡潔に言えば、こちら側にとって有利になるポイントです。

これは多いにこしたことがありません。

こうした有利ポイントの数が多いだけ、交渉の過程で、こちらが多く譲歩をしたとみせかけたり、正当に譲歩を拒んだりすることができるわけです。

 

離婚においてありうる有利ポイントとしては、例えば、

  • 相手が精神的な病気を抱えていること(親権を争っている場合)
  • 子供が私立高校、私立大学に通うことについてすでに夫婦間で同意をしていること(養育費を請求する場合)
  • 浮気相手とのラインやメールでのやりとりの資料を持っていること(慰謝料を請求する場合)
  • 相手の会社に退職金制度があること、こちら側に婚姻前からの特有財産があること(財産分与が問題になっている場合)

等が挙げられるでしょう。

 

こうした細かいことの一つ一つが全て有利ポイントとなります。

交渉をする際には、こうした自分の有利ポイントを箇条書きにしてみると良いです。

そして、どのタイミングでどの有利ポイントを出しいくべきかを考えていきます。

 

最初の段階で全部の有利ポイントを出すことはやめておいた方がいいでしょう。

交渉においては、特にその「プロセス」が重視されます。

 

つまりこういうことです。

まずは、こちらに有利な思い切った提案をするとします。

例えば、不倫に関する慰謝料請求で、400万円の請求をするとします。

その後に待ち構えているのは、譲歩です。

当然、こちら側も譲歩しなければなりません。

どれだけの譲歩をすべきか考えるとき、この有利ポイントが生きてきます。

例えば、こちらの400万円の請求に対して、相手は、不倫の事実は認めないけれども、円満に解決するための解決金として100万円程度を対案として提案したとします。

このとき、こちらがもっている優位ポイント、例えば不貞を裏付けるメールやラインの存在を指摘できれば、大きくは譲歩する必要はなくなります。

 

例えば、このとき400万円くらいを再提示することが考えられるでしょう。

ここではまだ、300万円や200万円の金額を提示する必要はありません。

 

つまり、いずれにせよ譲歩はしなければならないところ、この有利ポイントが多ければ多いほど、譲歩幅を減らすことができるというわけです。

そして、再度こちら側が譲歩する番になったとき、次に持っている有利ポイントを使うのです。

このようにして有利に妥結点を探っていくことになります。

 

2.相手の言い分に耳を傾ける

 

 

相手の言い分を受け入れるかは別として、相手の言い分に耳を傾けることは絶対に必要です。

それは、交渉をしっかりと土台にのせ、妥結させるためです。

 

誰しも、自分が軽んじられることを最も嫌い、恐れ、恨みます。

この原理はかわいそうなくらい全ての人間に当てはまります。

自分の言い分を聞いてすらもらえないと感じると、交渉自体を拒絶したり、到底こちらとして受け入れられるはずのない条件を突きつける「復讐」に出ることが良くあります。

 

交渉という、相手あってのやりとりを行う以上は、相手の言い分に耳を傾けることが、こちらの要求を飲ませるための第一歩といえるでしょう。

時として、一生懸命話を聞いてくれたことに対して「恩」を感じ、譲歩をしてくれることすらあります。

 

3.こちらの主張内容を事前に整理しておく

 

 

あとから気づいたことを持ち出すということを交渉においてするべきではありません。

あとから気づいたことを述べても、「あのときはOKと言ったはず!」、「このことは問題になってなかったはず!」などと言われ、受けいれてもられる可能性は低いでしょう。

 

また、仮に受け入れられたとしても、一度このようなことをすれば、相手にも、一度述べたことを撤回する自由を与えることにつながります。

そうなれば、いつ覆されるかわからない疑心暗鬼の交渉が長引きかねません。

 

例えば、財産分与を請求している場合、ほぼ分与額で合意できたにもかかわらず、その後になって、相手に将来もらえる退職金があるはず!とこれを持ち出しても、受け入れられない可能性があります。

 

結局これは、事前にこちらの主張をしっかりと整理しておかなかったことが原因です。

 

交渉内容をどれだけ事前に準備できるかどうか、これが交渉の勝敗を左右することが多くあります。

できれば弁護士とも相談の上、こちら側の主張はしっかりと整理しておきましょう。

 

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4.厄介な問題は後回しにする

 

 

本当に意見対立がある部分については後回しにできませんが、本筋ではないけれども、意見が食い違う可能性がある部分というものがあると思います。

 

例えば、離婚条件を決める際、親権や財産分与の額はメインの議論になります。

 

一方、そのとき養育費について20歳までにするか、大学卒業までにするか、あるいは子どもと今後面会を行うとして、その頻度や方法をどうするかといったことは、副次的なものです。

 

こうした、「本筋ではないけれども意見が食い違う可能性がある部分」については、後回しにすることをお勧めします。

人間というものは面白いもので、交渉が妥結間近になると、それまでの行動を全て無にすることはしたくないという気持ちになります(これは心理学で「一貫性の原理」と呼ばれたりします。)。

枝葉の部分については妥協や譲歩をして、交渉自体はなんとしても妥結させようとするのです。

 

離婚についても、例えば、子供との面会の頻度や方法だけで、これまでの離婚交渉を台無しにすることは避けたがることがほとんどです。

こういった、本筋ではないけれども意見が食い違う可能性がある部分の問題は、交渉の最後の方に確認的に持ち出し、お互いに譲歩をするのが、スピーディーな交渉と円満な離婚につながります。

 

5.初めは強気に出る

 

 

これも非常に大事なルールです。

心理学上「アンカリング」と呼ばれます。

最初に提示された数値や主張が一つの基準となり、そこから金額や主張を当事者間で調整していくということが起きます。

 

ですので、こちらが金額を請求する場合には、(常識の範囲内で)できるだけ多額のものを提示すべきですし、逆に請求される場合は、相手より先に(ここが重要です)、できるだけ少額のものを提示すべきです。

 

請求されている場合、誠実すぎる方の中には、ここで「妥当と考えられる金額」を提示してしまう方がいらっしゃいます。

しかし、それが報われるということは実はほとんどありません。

たいていは、相手はそれを上回る金額を対案として出してきます。

 

相手も、交渉をしているという立場上、相手の言い分をそのまま認めることは、プライドの問題からしてできないことがほとんどです。

ですので、仮に客観的に妥当な金額を提示されても、相手は自分のプライドを守るため、どうしてもそれより自分に有利になる金額を提示せざるをえないのです。

 

このルールはぜひとも知っておかれるとよいでしょう。

よく、交渉がうまくいかなかったから弁護士に依頼したいと述べられ、交渉を引き継ぐことがありますが、本人による交渉段階で既に「妥当な」金額が提示されてしまったため、その後の交渉が非常に険しいものとなることがあります。

 

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6.相手にも利益を与える

 

 

相手に利益のない交渉案は、案としての価値はほとんどありません。

 

交渉は、合意に向けられたものです。

 

相手が受け入れることにメリットがなければ、相手がその案を選択する動機はありません。

それは、どんなに相手が悪い場合であっても同じです。

 

仮に、親権をどうしてもほしいという相手と離婚条件について交渉する場合は、
親権は譲れないが、面会の機会を設けたり、養育費に関して、私立分の学費までは請求しないなど、相手に(わずかでもいいので)メリットをもたらすものを提案すべきでしょう。

 

7.創造的な案を考えておく

 

どの弁護士に依頼するかによって離婚調停の結果は変わる?

 

一方で、どうしてもお互い譲れない場合というのがあります。

そうした場合は、ちょっと合意の対象を変えてみるというのが一つの方法です。

合意の対象を変えてしまうことを、ここでは「創造的な案」としておきます。

創造的な案を出すことによって、相手としても、譲れないというプライドから解放される面があり、こちらとしても、交渉妥結の見込みを閉ざさないというメリットがあります。

 

例えば、財産分与の金額面で争いがある場合は、お金を渡すのではなく、自分が契約者となっている、子どものための学資保険の名義変更をすることを案として提示するということがありえます。

相手には、形式的には同程度の金額の分与がなされたと理解してもらうことができますし、こちらとしても、キャッシュを現実に持ち出す必要がなくなります。

その上、細かい金額の駆け引きから解放されることができるわけです。

 

以上の7つの交渉ルール。

ぜひ試してみてください。

時に、甚大な威力を発揮することがあります。

 

弁護士のホンネ

ここで大切なのは、「相手の顔をどう立てるか」、「事前準備を怠らない」という点です。

上記の7つのルールは、この二つの視点を具体化したものと言って良いでしょう。

「盗人にも五分の理」とは言いますが、誰しも自分に対するプライドというものを持っていますから、自分では5分どころか9割9分であると思っている場合がほとんどです。

どんなに憎い相手であっても、合意を目指す交渉をする以上は、相手の尊厳に配慮しなくてはなりません。

そして、交渉前には必ず、万全な準備が不可欠です。

あとから気づいた、というのは、交渉では通用しません。

これら、二つの視点と7つのルールを、ぜひ活用してみてください。
 
 
 

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