4 特有財産
特有財産とは、結婚生活とは関連なく取得した財産で、離婚時に財産分与の対象とならないものを言います。
財産分与というのが、夫婦が共同して形成した財産を離婚時に精算するというものですから、夫婦が共同して形成をしたとは言えない財産(つまり特有財産)が財産分与の対象にならないのは当然といえそうです。
具体的には、結婚前に既に蓄えた財産や、結婚後でも、親族から贈与を受けたものであったり、相続を受けたものは、配偶者の寄与はないため、特有財産として挙げられます。
もっとも、配偶者の寄与というのは、単に財産の「形成」だけではない場合もあるでしょう。財産を「維持」できたのが配偶者のおかげというケースもあります。
例えば夫の収入で生活をしたおかげで、妻は働かずに、自らが相続した財産を費消せずに済んだというケースもあるでしょう。そういう場合は、夫には妻の相続財産に対して一定の寄与があるとして、財産分与の際に考慮されることになります。
詳しくは、「夫の収入で生活をしていた場合、妻が相続した遺産は財産分与の対象になる?」をご覧ください。
5 財産分与を請求できる期限
さて、財産分与については、「請求」をしなければできず、離婚によって当然に生じるわけではありません。
また、財産分与の請求は離婚後2年が期限です。
財産分与をしない段階だと、財産の名義人ははっきりしているのに、実際は、共有であるという状態です。しかし、この共有状態は公表されているわけではありません。
こうした状態がずっと続いてしまうと、例えば財産を譲受りうけようとする他人に迷惑がかかってしまう可能性が出てきます。そこで、こうしたあやふやな状態は2年間にとどめましょうというのが、この期限の理由です。
では、この2年間を過ぎてしまうと、どのような場合でももはや請求はできないのでしょうか。
実は、離婚の協議のときに、相手が財産を隠していた場合などは、例外的にそれを知ってから2年以内であれば認められる可能性があります。そのような不誠実な相手を守るよりも、財産分与の請求をするきっかけを失ってしまった方を守るという取り扱いですね。
詳しくは、「財産分与の期限は2年!しかし実際には・・・」をご覧ください。
6 年金分割
財産分与に類似した制度として、年金分割制度というものがあります。
厚生年金、共済年金については、将来受給できる年金を離婚時に分割することができます。これは、個人年金や企業年金は範疇外ですので、ご注意下さい。
年金分割は、大きく、3号分割と合意分割に分かれます。
⑴ 3号分割
「3号分割」は、妻が国民年金の第3号被保険者である場合です。要するに、専業主婦の場合です。端的に言えば、妻の年収が130万円未満の場合です。
この場合、婚姻期間中で、かつ平成20年4月以降に夫婦双方が納めた厚生年金保険料の合計実績が自動的に半々に分割されます。
⑵ 合意分割
「合意分割」は、夫婦が共働きで、妻が130万円以上の年収がある場合についてです。
この場合は、2008年4月以降の期間の部分も含めて、合意や調停、審判によって分割割合を決めることになります。
妻が専業主婦の場合で、平成20年3月以前の部分については、こちらが適用されます。
なお、こうした年金分割の請求も、離婚後2年が期限となっていますので、注意が必要です。年金分割について詳しくは、「話題の年金分割。分割されるとどんなデメリットがあるの?」をご覧ください。
7 財産分与を防ぐ!婚前契約について
さて、これまで財産分与についてお話してきましたが、こうした財産分与制度を完全に回避する方法があります。
なぜ回避できる方法があるかというと、このような、ある意味働く人にとって不利で酷すぎる制度(?)に拘束されるとなると、中には結婚という選択をとらない人が増えてしまうためです。
そうすると、家族制度や婚姻制度の意味というものも失われてしまいかねません。
そこで、法律は、婚前契約という道を残しています。これは、夫婦になる予定の者が、婚姻届を提出する前に合意した内容に拘束力を持たせるというものです。
不倫や浮気を認めるなどという、公序良俗に違反するような内容だと無効になります。しかし、離婚においてはそれぞれの名義のものはそれぞれが承継するといった財産的な契約については、有効になります。
日本ではこの婚前契約、あまり利用されていません。しかし、もう少し知名度が高くなれば、よりこれを活用する方々も増えるのではないでしょうか。
昨今は男性より所得の高い女性も増えていますから、そういう方々が中心となって婚前契約を利用することで、この制度自体が広まることがあるかもしれません。
詳しくは、「結婚時に、将来の離婚に備えるのは不謹慎?婚前契約であなたの財産を守る方法」をご覧ください。
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