5.裁判離婚について
⑴ 裁判離婚とは?
裁判離婚とは、調停が不成立になった場合に、当事者の一方が、裁判所に対して配偶者との離婚を求めて、訴訟(人事訴訟)を提起するものです。
ただし、裁判で離婚が認められるためには、下記の離婚原因が必要になります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 生死不明3年以上
- 強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
さらに、裁判所は、①〜④の離婚原因があるときでも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます。
裁判所が訴訟を審理した結果、これらの離婚原因を認め、離婚相当と認めるときは、判決で離婚が命じられ、相手方の同意がなくても離婚することができます(判決離婚)。
離婚の裁判は、訴訟手続きなので、管轄の家庭裁判所に対して訴状を提出し、月に1回程度指定される口頭弁論期日に出頭し、準備書面で法律的な主張をしたり、証拠を提出したりして、審理を行います。
場合によっては、証人尋問を行います。
このように、訴訟手続きは複雑で精密であるため、長期に及びがちであり、訴訟提起から解決までの期間は、最低でも10ヶ月程度、平均して1年程度、長い場合には数年に及ぶこともあります。
離婚裁判は、複雑で専門知識が必要になるため、弁護士に依頼されることをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、口頭弁論期日の出頭も弁護士が代理して行うので、ご本人様が出頭する必要はありません。
ただし、和解成立時や、証人尋問時にはご本人に出頭していただく必要があります。
⑵ 離婚原因について
それでは、法律の定める離婚原因について具体的に見ていきましょう。
不貞行為
不貞行為とはいわゆる不倫であり、配偶者以外の方と性的関係を結ぶことを言います。
不倫に関しては、証拠が非常に重要になります。
不倫については、別記事で詳しく解説していますので、「これさえ知っておけばもう完璧!不倫・浮気に関する基礎知識」 をご覧ください。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく民法752条の同居・協力・扶助義務を履行しないことを言います。
ただし、単に別居している、同居に応じないというだけでは、この「悪意の遺棄」が認定されることはほぼありません。
なぜなら、夫婦が別居する場合(一方が無断で別居を強行した場合も含む。)には、必ず何らかの別居の理由や事情があり、別居を強行した側もいろいろと裁判所に言い訳をするので、「正当な理由のない」ものとは認定され難いからです。
3年以上の生死不明
文字通り、3年以上生存も死亡も確認できない状況が現在まで続いていることを言います。
こちらも認められる例は非常に少ないです。
強度の精神病
強度の精神病とは、精神障害の程度が、夫婦の共同生活を達成できないほどに達している場合を言います。
強度の精神病と認定されるためには前提として専門医の鑑定が必要であり、その認定はハードルが高いといえます。
さらに、判例は、夫婦の一方が不治の精神病にかかった場合でも「病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みがついた上でなければ、…離婚の請求は許されない」(最判昭和33年7月25日民集12巻12号1283頁)と判示し、強度の精神病のほか、「具体的方途の見込み」がなければ離婚請求は認められないという方向を示しています。
そのため、実際に裁判で離婚原因として強度の精神病を主張する場合には、相当にハードルが高いです。
実務的には、④「強度の精神病」が離婚原因として認められない場合でも、様々な事情を考慮して、⑤「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるとして離婚請求が認められることもあります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由
こちらは①〜④以外の一切の事情を総合して、婚姻関係が破綻しているかどうかにより判断されます。
特に、実務的には、別居期間が非常に重要であり、別居期間が5年以上の長期に及んでいる場合には、夫婦の婚姻関係は破綻しているとして「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる傾向にあります。
婚姻を継続し難い重大な事由として認定されている例があるのは
- 暴行・虐待
- 重大な病気・障害
- 宗教活動
- 勤労意欲の欠如
- 犯罪行為・服役
- 性交不能・性交拒否
- 親族との不和
など多岐にわたります。
なお、性格の不一致も婚姻を継続し難い重大な事由としてよく主張されますが、長期の別居期間がある場合などを除き、離婚原因として認定されることは稀です。
性格の不一致が原因で離婚を考えているのであれば、早めに別居などを進める方が良さそうです。
別居を始める際の注意事項については、「夫と離婚したい!離婚を検討中のあなた。別居するときの大切なポイント3つ」をご覧ください。
また、別居後の生活に関しては、「妻と別居したら早くに見つけておくべきこと3つ!」をご覧ください。
⑶ 有責配偶者(不倫をした側)の離婚請求
不倫をした側など自ら婚姻関係の破綻を招いてしまった者(有責配偶者)は、原則として、離婚請求が認められません。
ただし、例外として、
- 別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
- 夫婦間に未成熟子が存在しないこと
- 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
という3要件がある場合には、離婚請求が認められます。
おおむね、①の別居期間は10年程度が基準と言われてきましたが、最近の判例では徐々に緩和する傾向もうかがえます。
詳しくは「不倫をしても離婚請求が許される時代が到来した!?」をご覧ください。
⑷ 和解離婚
離婚裁判を提起して、判決離婚に至らなくとも、裁判の手続きの中で離婚条件などに合意して和解して離婚成立させることも可能です。
これは和解離婚と言います。
和解離婚の場合も、調停離婚と同様に、和解調書が作成されます。
和解調書も調停調書同様、相手の財産を強制執行することができます。
6.離婚と弁護士
⑴ 弁護士に依頼するメリット・デメリット
離婚・男女問題に関して、弁護士がお手伝いできることは大きく分けて
- 法律相談
- 代理人業務(協議、調停、裁判のいずれの段階でも活動できます。)
の2つがあります。
弁護士との法律相談
30分から1時間かけて、弁護士がお客様の話を伺い、法律上の見通しや相場、今後有利に進めるためのアドバイスや代理人業務を依頼した場合の費用の見積もりを行います。
メリット
- 法律上の相場や見通しがわかるので、慰謝料や財産分与など請求を見落して損をすることがなくなる。
- 弁護士の知識や経験から、今後どのように進めれば、最大限有利に話をすすめられるのかアドバイスを受けることができる。
- 代理人業務を依頼した場合の費用見積もりを知ることができる。
- 弁護士によっては、無料で相談をすることができる。
デメリット
- 弁護士によっては、30分5000円程度の相談料がかかる場合がある。
- 代理人業務を依頼しない場合には、自分が直接相手と離婚の交渉をしなければならない。
なお、弁護士との初めての相談にあたっては、「初めての弁護士との法律相談・離婚相談を充実させるポイント2つ!」をご覧ください。
代理人業務
弁護士がお客様の代わりに、相手と交渉したり(協議段階)、調停の申し立て書類の作成・提出・裁判所との調整、調停への同席や書面・証拠の作成(調停段階)、訴状など書類の作成・提出・裁判所との調整、訴訟への出頭や書面・証拠の作成、証人尋問などの対応(訴訟段階)などとトータルでサポートします。
メリット
- 弁護士がお客様の代理人となって交渉の窓口になるので、相手と直接話合わないで済む。一度も顔を見ないで離婚することも可能。
- 不誠実な対応をしていた相手でも、弁護士がつくと態度が変わる。
- 弁護士の専門知識や経験を借りて、交渉・調停・裁判いずれの段階でも有利に進めることができる。特に、相手に弁護士がついた場合には、丸め込まれないためにこちらも弁護士をつけることを強くおすすめします。
- 訴訟など代理で弁護士が出頭してくれるので、基本的に裁判所に行く必要がない。普段通りの生活を続けることができる。
- 弁護士が相手に財産分与や慰謝料・養育費など適正な金額を請求をするので、弁護士費用を考えても経済的にプラスになることも多い。
デメリット
- 費用がかかる。一般的に、協議・調停段階では60万円程度、裁判段階では80万円程度の費用がかかります。ただし、相手から受け取る金額によっては、かえって経済的にプラスになることもあります。
- 離婚事件に慣れていない弁護士に依頼した場合には、費用ばかりかかって、有利に進められないケースも。
⑵ 良い離婚弁護士の選び方
それでは、良い弁護士を選ぶにはどうすれば良いのでしょうか?
そのためには、まず初回の法律相談に行ってみることをおすすめします。
そこで、
- 説明がわかりやすいか。親切か。
- 専門用語も噛み砕いて説明してくれるか。
- 態度が傲慢だったり、偉そうにしていないか。
- こちらが質問したことにしっかりと回答してくれるか。知識や経験不足な面はないか。
- 頭の回転が早いかどうか。
- 事務所が職場や自宅に近いかどうか。
- 人間的に相性が合うかどうか。
などをチェックしてみましょう。
弁護士としてもお客様から事件の依頼を受けるにあたっては、相互に信頼関係が重要になります。
ぜひ、法律相談をうまく活用して自分に合う弁護士を探しましょう。
弁護士の探し方・見分け方については、「こんな弁護士は危ない?!避けるべき弁護士の見分け方ポイント3つとは??」、「コジラセ弁護士に当たらないために、賢い離婚弁護士の選び方とは?」をご覧ください。