夫からの婚姻費用請求を権利濫用として却下!東京高裁令和6年11月19日決定

  • 2025年3月28日

はじめに

婚姻中の夫婦が別居した場合、一方の配偶者が他方に対して生活費(婚姻費用)の支払いを求めることがあります。しかし、請求が必ず認められるわけではなく、権利の濫用と判断されることもあります。今回の東京高等裁判所の決定は、その一つの事例といえるでしょう。

本件(東京高裁令和6年11月19日決定 ウエストロー・ジャパン搭載)では、夫(抗告人)が妻(相手方)に対して婚姻費用分担を求めたものであることが特徴的です。原審はこの請求を却下し、夫がこれを不服として抗告。しかし、高裁も原審の判断を支持し、抗告を棄却しました。

事件の経緯

平成19年7月 夫と妻が婚姻。
平成20年頃 夫が妻の親族の宿泊や勤務状況について不満を抱くようになる。
平成22年6月頃 夫が妻に生活費を渡さなくなる。
平成23年7月 妻が子どもを連れて自宅を出る(別居開始)。
平成24年3月頃 夫がアルコール依存症の治療を開始し、妻が同居を再開。
平成27年12月頃 子どもの進学問題を巡り夫婦関係が再び悪化。
平成28年8月頃 夫が妻への誹謗中傷や侮辱的な発言を頻繁に行うようになる。
平成29年3月8日 夫婦間の口論がエスカレートし、妻が110番通報(家庭内暴力発生)。
平成30年3月22日 妻が子どもを連れて家を出る(再別居)。
婚姻費用請求訴訟提起後 夫が婚姻費用分担を請求するも、原審で却下。
本件抗告 夫が高裁に抗告。
東京高裁の決定 原審の判断を維持し、抗告を棄却。

裁判所の判断

(1) 婚姻関係破綻の責任は夫にある

裁判所は、夫婦関係の破綻において、主な責任は夫にあると認定しました。

(東京高裁令和6年11月19日決定 ウエストロー・ジャパン)

前記(2)ア認定の事実経過によれば、抗告人と相手方の婚姻関係は、遅くとも平成23年には相手方が子らを連れて別居するなど、悪化したが、平成24年には抗告人がアルコール依存症の治療を受けることを表明して相手方に関係の修復を求め、相手方も抗告人が不満を有していた長時間勤務と飲み会の参加を控え、親族の本件マンションへの宿泊を行わないようにしたことにより、一旦修復に向かったものの、平成27年頃以降、子らの中学進学に対する意向の相違を契機に悪化し、抗告人が飲酒を止めず、相手方、相手方の親族、交流していた同僚ないし友人につき悪質な誹謗中傷をすることを執拗に繰り返したことにより、破綻に至ったと評価すべきであり、婚姻関係破綻の主な責任は、抗告人にある

(2) 夫の婚姻費用請求は権利の濫用

夫が婚姻費用を請求しましたが、裁判所はこれを「権利の濫用」と判断しました。

(続き)

こうした婚姻関係破綻の原因及びその重大さに加えて、抗告人は、平成22年6月頃以降、相手方に生活費を交付せず、相手方が、抗告人との同居中の夫婦共同生活に必要な費用の大部分を負担し、別居後も自己と子らの生活費のほか、抗告人が居住する相手方名義の本件マンションの住宅ローンを負担し、抗告人は住居関係費を負担していないことも考え合わせれば、相手方が前記の経緯の後離婚請求訴訟を提起した後に婚姻費用の分担を求めた抗告人の本件請求は、権利の濫用として却下されるべきである。

(3) 夫の手続上の主張は認められず

夫は「原審で審問の機会を与えられなかった」と主張しましたが、裁判所はこれを退けました。

(続き)

原審においては、当事者間の離婚訴訟における両者の本人尋問調書(乙3の1・2)が資料として提出されており、婚姻関係破綻の有無、有責性に係る事実につき、反対尋問を経た供述内容の資料があるのに、重ねて当事者本人審問を行う必要性を認めるに足りる事情は見当たらないから、原審の審理が手続的に相当性を欠くものであるとは認められず、抗告人の前記主張は、前記認定判断を左右するものではない。

まとめ

本件では、夫の婚姻費用分担請求が「権利の濫用」に当たるとして却下されました。婚姻費用の分担は、通常は別居をしていれば認められますが、請求者側が婚姻関係の破綻の原因を作り出している場合は、認められないとするのが多くの裁判例で確認されています

今回の裁判例は、それを再確認した判断として重要ですが、男性側からの婚姻費用請求のケースであること、しかもそれが権利濫用として却下された点が、特徴的と言えるでしょう。昨今は共働き夫婦が当たり前の状況になっており、妻の方が夫よりも収入が高い状況も普通に見つけられます。今回の判断は、そうした社会情勢の実情を反映しているものとして、価値があると言えるでしょう。

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