祖父母は監護者になれるのか?重要判例解説:最高裁令和3年3月29日決定

子どもの父母が子供監護を適切に行わない場合、子どもの祖父母が、子どもの監護者として祖父母自身を指定するよう、裁判所に申立てを行うことはできるのでしょうか

この点については学説上諸説あり、最近まで、裁判実務上取り扱いが確定しているとは言い難い状況でしたが、最近この点を正面から判断した高裁決定と最高裁の判断(しかも正反対の判断)が出たのでご紹介します。

大阪高裁令和2年1月16日決定と、最高裁令和3年3月29日決定です。

1 事案の概要

子どもを事実上監護している祖母が、子どもの実母らを相手方として、子どもの監護者を祖母と指定するよう求めた事案です。

2 大阪高裁の決定(令和2年1月16日)

大阪高裁は、

「子の福祉を全うするためには、民法766条1項の法意に照らし、事実上の監護者である祖父母等も、家庭裁判所に対し、子の監護者指定の申立てをすることができるものと解するのが相当である。」

と述べ、子どもの祖父母が子どもの監護者として祖父母自身を指定するよう、裁判所に申立てを行うことはできると判断しました。

その上で、

「上記祖父母等を監護者と定めるためには、上記親権者の親権の行使に重大な制約を伴うこととなったとしても、子の福祉の観点からやむを得ないと認められる場合であること、具体的には、親権者の親権の行使が不適当であることなどにより、親権者に子を監護させると、子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれが認められることなどを要すると解するのが相当である。」

と述べ、「親権者の親権の行使が不適当であることなどにより、親権者に子を監護させると、子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれが認められる」時には、父母ではなく祖父母を監護者として指定できるとしました。

3 最高裁判所の決定(令和3年3月29日)

ところが、その後の許可抗告で、最高裁判所が正反対の判断を下しました。

最高裁は、

「民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、上記の申立てについて、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。なお、子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照)、このことは、上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。」

「したがって、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。」

と述べ、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと明言しました。

4 本決定の意義

今回の最高裁判決によって、父母ではない親族などの第三者が監護者指定の申し立てができるかどうかについて、裁判実務上の運用は確立するでしょう。すなわち、たとえ子供を事実上監護していた親族であっても、その子供の父母でない限りは、家庭裁判所に対して子の監護者の地位を求めることはできないということです。

昨今、監護者の地位や面会交流は「子供の福祉」の観点から考えるべきだとされ、「親の権利」の不安定さが顕在化していました。それは、子供の連れ去り行為自体は、もう片方の親の権利を侵害するものとはみなさない実務運用や、面会交流の拒否や不実施が親権判断にあまり影響しない実態からも窺えるところです。

今回の最高裁決定は、「親の権利」をギリギリのところで確保し、監護者の地位はあくまでも父母にあることを確認しました「親の権利」が不安定になっていた実務運用の一種のより戻しと評価することができるでしょう。

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