養子縁組をしてなくとも、再婚相手の扶養を受けていれば養育費は減額!宇都宮家裁令和4年5月13日決定

今回紹介する裁判例は、子供の親権者を妻として離婚した後、妻が高額所得者である医師と再婚をしたという事例です。再婚相手と子供は養子縁組をしませんでしたが、宇都宮家裁令和4年5月13日決定は、「養子縁組に準ずる状態」にあり、前提とされていた事情に変更があるとして、養育費の減額を認めました

1 養育費減額調停・審判

まず、以前に調停や審判で養育費の金額が決まった場合であっても、その時に前提となっていた事情に変更が生じた場合は、養育費の減額ができます。そのために使われるのが、養育費の減額調停手続です。

今回の家裁決定においても、一般論として以下の内容が述べられています。

(宇都宮家裁令和4年5月13日決定 判タ1516号252頁)

当事者間において合意された内容を尊重すべきであるが、これを一切変更することが許されないと解するのは相当ではなく、合意の当時に前提とされていなかった事情が後に生じ、従前の合意の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には、事情の変更があったものとして、従前の合意の内容を変更することができるものというべきである。

本件も、このような養育費減額調停を経て、話し合いがまとまらなかったために、養育費減額審判へと移行した事件です。

2 元妻が高額所得者と再婚し、事実上扶養を受けている

本件は、元妻が精神科医と再婚をし、子供がその再婚相手と同居をしているという事例でした。養子縁組はしていないものの、事実上、再婚相手がその子供を養っている状態にありました

通常、養子縁組がされていれば、第一次的な扶養義務が養親に移りますので、元夫の養育費支払義務は免除されます。

しかし、今回は、養子縁組自体はされていないわけですから、元父の扶養義務は依然として存在します。したがって、養育費の支払い義務自体は免除されませんでした。

一方で、子供が、母親の再婚相手から事実上扶養されている状況にあるということは、間接的に、元妻が事実上経済的な利益を得ているということでもあります。

そこで、宇都宮家裁は、再婚相手が子供を養っていることから、養育費の計算をするときに、元妻の収入を上積みして擬制することで、解決を図りました

(宇都宮家裁決定 続き)

相手方夫(注:元妻の再婚相手)は、絶対的にも、申立人(注:元夫)に比して相対的にも相当に高額な収入を得ていると考えられ、このような相手方夫が長女を事実上扶養して事実上養子縁組している状態であること、長女への生活費等の給付が十分にされていると考えられることに鑑み、相手方夫の上記総収入から208万円程度(相手方夫が扶養義務を負うとした場合の子の生活費を参考にした金額。1567万円×48%×62÷(100+62+62)≒208万円(1万円以下四捨五入。))を相手方(注:元妻)の総収入に加算するのが相当である。

宇都宮家裁は、このように、子供に振り分けられているはずの生活費の金額を想定し、その金額を、元妻の総収入に加算して、養育費の計算を行いました

結果として、宇都宮家裁は、15万円だった養育費の金額を9万円に減額することを命じました。

3 本決定の意義

今回の宇都宮家裁の決定は、養子縁組をしていなくとも、養育費の金額の変更を認めました。

具体的には、子供が事実上、再婚相手の扶養に入っていることで、元妻が間接的に経済的な利益を受けていることから、元妻の総収入をその分加算して養育費を計算しました。

養子縁組をすると、元夫の養育費の支払い義務が免除されることになるのが通常です。そうした情報は一般的に広まりつつあります。そのため、再婚をしても、あえて養子縁組をしないというケースは、今後も増え続けるものと推測されます。したがって、本決定は、養子縁組がなされていない場合であっても、養育費の減額が認められる道が開かれたという点で、極めて高い先例としての価値を持つものと言えるでしょう。

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