不貞した妻からの婚姻費用請求を制限した最新事例(平成29年9月4日東京高裁決定)

この東京高裁決定(平成29年9月4日東京高裁決定/WLJ(ウエストロージャパン))は、不貞した妻からの婚姻費用請求について、養育費相当分については認めつつも、妻自身の固有の生活費については、信義に反し、権利の濫用であるとして却下しました。

東京高裁の決定は次の通りです。
まず、東京高裁は一般論として、次の通り述べました。

配偶者以外の者と男女関係を持つことは,夫婦間の信頼関係を破壊する背信的行為といえ,そうした背信的行為に及んだ者が,別居中の配偶者に対し,婚姻費用として,監護している子の養育費分にとどまらず,自らの生活費に係る部分を加えて,婚姻費用の支払を請求することは,信義に反し,権利濫用に該当する行為というべきである。

その上で、本件では、妻が他の男性とビジネスホテルで数時間を共に過ごしたことを持って、妻の不貞を認定し、同人の婚姻費用請求について信義に反し、権利濫用に該当すると認めました。もっとも、養育費相当部分については請求を認めています。

東京高裁の決定は、不貞をした配偶者からの婚姻費用請求を一部制限するもので、これまでの裁判例の流れを改めて踏襲したものです。ただ、最新の高裁レベルが改めて判断したという意味で、同種事案に極めて強く影響されることが予想されます。

また、今回の決定は、「婚姻関係が不貞によって破綻した」ことを前提としていないことも注意すべきです。
この審判では、夫側が婚姻関係の回復も求めており、必ずしも婚姻関係が破綻したものとは言えませんでした。前審横浜家庭裁判所は、未だ夫婦関係が破綻したとは言い難いことを理由として、妻の請求を満額認容していました。

今回の東京高裁は、この横浜家庭裁判所の判断を覆したものです。婚姻関係は破綻に至らなかったとしても、不貞をした以上はそれは夫への裏切りであり、自身の生活費分まで請求することは許さないという、注目されるべき判断を行ったことになります。この点は極めて重要でしょう。

本件の決定は、不貞した妻による婚姻費用請求を制限するこれまでの裁判例の流れを更に一歩進めた、画期的な判断という意味で、今後も同種事案で引用されることになると思われます。


 

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