平成29年3月2日東京高裁決定(宝くじ当選金と財産分与)

この事案(平成29年3月2日東京高裁決定/判タ 1446号114頁)では、夫が宝くじを購入したところ、それによって2億円の当選金を獲得したことから、財産分与の割合が問題となりました。

原審(平成28年3月2日前橋家裁高崎支部)は、宝くじで当てた財産について、次の通り一般枠組みを提示していました。

宝くじの法的性格及び役割に照らせば,当選した宝くじの購入資金の原資が夫婦共有の財産である家計の収入であるとしても,当然に全額が夫婦の共有財産となるものではなく,当該宝くじを購入した者には,当該当選金について一定の優位性ないし優越性が認められるべきである。

その上で、宝くじの当選金を原資として形成した財産について、その7割相当を夫の特有財産(すなわち夫の固有の財産)とみなしました。

ところが、今回の東京高裁は、これを修正して、次の通り述べました。

本件当選金を得たC(注:宝くじ)の購入資金は,原審申立人と原審相手方の婚姻後に得られた収入の一部である小遣いから拠出されたこと,本件当選金の使途も,同人ら家族が自宅として使用していた本件土地建物の借入金約2000万円の返済に充て,原審相手方が勤務先を退職してからは,毎月,本件当選金を原資として生活費相当分を拠出したこと等が認められる。そうすると,C(注:宝くじ)の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出され,本件当選金も家族の住居費や生活費に充てられたのだから,本件当選金を原資とする資産は,夫婦の共有財産と認めるのが相当である。

つまり、原審の考えとは異なり、宝くじの当選金を原資として形成した財産については、一旦夫婦の共有財産としています。
もっとも、東京高裁は続けて次の通り述べて、共有財産に対する夫婦の持分割合を調整して、公平な結果になるよう配慮しました。

本件当選金の購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであるけれども,原審相手方が自分で,その小 遣いの一部を充てて宝くじ等の購入を続け,これにより,偶々とはいえ当選して,本件当選金を取得し,これを原資として上記対象財産が形成されたと認められる。これらの事情に鑑みれば,対象財産の資産形成については,原審申立人より原審相手方の寄与が 大きかったというべきであり,分与割合については,原審申立人4,原審相手方6の割合とするのが相当である。

つまり、東京高裁のやり方は、宝くじの当選金を原資として形成した財産については、ひとまず共有財産としつつ、分与割合を夫に多少優位に定めるという解決策でした。具体的には、夫の持分割合を6、妻の持分割合を4としています。

結果として、東京高裁の考えに基づき、妻側に有利となる解決になりました。

もっとも、東京高裁は、本件当選金の購入資金が、夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出されたものであることや、当選金が家族の住居費や生活費に当てられていることを重視した上で、一旦夫婦の共有財産としています。つまり、宝くじ購入資金の出どころや当選金の扱い方によって、当選金が共有財産になるのか、それとも購入者の特有財産になるのか、結論が別れうる可能性を残しているところは注目すべきです。

通常、夫婦の共有財産に対する持分割合は、2分の1ルールが通用しており、本決定はその例外に当たる事例を提供したという意味でも、大いに参考になるものと言えます。

 

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