妻の両親に対する、子供の引き渡し請求!

この判決(平成26年12月24日東京地方裁判所判決)は、一旦離婚の合意寸前までに至った夫婦間の子供を、妻側の両親が育てているという事情におけるものです。離婚話を克服し、円満に夫婦関係を築いていくことを決心したその夫婦が、妻側の両親に対して、人身保護請求という制度に基づいて、裁判所に対して子供を引き渡すよう、請求を求めました。

人身保護請求は、ある人の身体を不当に拘束している者に対して、裁判所を通してその拘束を解くという「救済」を申し立てられる制度です。
それほど複雑な体系の法律ではありません。条文については、こちら(人身保護法)をご覧ください。

本判決において、裁判所はまず、監護権者(親権者など)が、そうした権限のない者に対して子供の引き渡しを請求している場合においては、請求されている側は、原則として子供を不当に「拘束」しているものと判断すべきという、かつての最高裁の判断を引用しました。

法律上監護権を有しない者が子をその監護のもとにおいて拘束している場合に,監護権を有する者が人身保護法に基づいて子の引渡しを請求するときは,被拘束者(子供)を監護権者である請求者の監護のもとに置くことが拘束者(本件では妻の両親)の監護のもとに置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り,非監護権者による拘束は権限なしにされていることが顕著である場合(人身保護規則4条)に該当し,監護権者の請求を認容すべきものとするのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1437号同年11月8日第三小法廷判決・民集48巻7号1337頁参照)。

そして、この裁判では、子供を夫婦のもとに戻すことが、妻の両親が監護を続ける場合よりも子供の幸福にとって著しく不当であるかどうかが争われました。
結果として裁判所は次の通り判断をし、夫婦のもとに子供を戻すことが子供の幸福にとって著しく不当とはいえないと判断をし、夫婦による子供の引き渡し請求が認められました。

請求者らの夫婦仲が従前は悪く,離婚届を書くなどしていたが,現在は,請求者ら(夫婦)は反省し,今後家族でやり直すことを決意していると述べていること,平成26年6月より前は,請求者ら(夫婦)と被拘束者(子供)の監護養育には特段の問題はなかったこと,請求者ら(夫婦)は,現在,自宅において夫婦で暮らしているところ,その住環境等についても特段の問題は見受けられないこと,夫は,パニック障害に罹患しているが,薬も減らしながら定期的に通院しており,また,妻は従前うつ状態になったこともあるが,現在問題は見られないことが認められる。これらの事実によれば,被拘束者(子供)を請求者ら(夫婦)のもとにおいても,被拘束者(子供)を安定的に監護養育することが十分可能であるということができるから,被拘束者(を請求者らの監護のもとに置くことが拘束者らの監護のもとに置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものであるということはできないというべきである。

親権者の両親に対する人身保護請求の例はそれほど多いわけではなく、また、本判決が、夫のパニック障害や、妻のうつ状態などにも言及しているところなど注目すべき点もあり、本裁判例は同種事案において先例としての価値を持つものといえるでしょう。

 

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