平成29年1月26日東京高等裁判所判決(親権者について)

この判決(平成29年1月26日東京高裁判決/判時2325号78頁)は、前審平成28年3月29日千葉家裁松戸支部による、子供の親権を夫に認める判決を覆したものです。いわゆる、面会交流に対する許容性の高さが、どれほど親権者の決定に影響するのかを示す、極めて重要な判決です。

まず、前審である千葉家裁松戸支部の親権に関する判決は次のようなものでした。

  • 妻は夫の了解を得ることなく,長女を連れ出し、以来、今日までの約5年10か月間、長女を監護し,、その間、長女と夫との面会交流には合計で6回程度しか応じていない
  • 妻は今後も一定の条件のもとでの面会交流を月1回程度の頻度とすることを希望している
  • 夫は、長女が連れ出された直後から,長女を取り戻すべく、数々の法的手段に訴えてきたが、いずれも奏功せず、爾来今日まで長女との生活を切望しながら果たせずに来ている
  • 夫は、長女との生活が実現した場合には、整った環境で、周到に監護する計画と意欲を持っている
  • 夫は、長女と妻との交流について、緊密な親子関係の継続を重視して、年間100日に及ぶ面会交流の計画を提示している
  • 以上の事実を総合すれば、長女の親権者は夫とすべきである。

これに対して、控訴審である東京高裁は、次の通り判断し、親権者を妻にすべきとしました。
まず、東京高裁は、親権者を決めるにあたっての判断方法について次の通り述べています。

父母が裁判上の離婚をするときは,裁判所は,父母の一方を親権者と定めることとされている(民法819条2項)。この場合には,未成年者の親権者を定めるという事柄の性質と民法766条1項,771条及び819条6項の趣旨に鑑み,当該事案の具体的な事実関係に即して,これまでの子の監護養育状況,子の現状や父母との関係,父母それぞれの監護能力や監護環境,監護に対する意欲,子の意思(家事事件手続法65条,人事訴訟法32条4項参照)その他の子の健全な成育に関する事情を総合的に考慮して,子の利益の観点から父母の一方を親権者に定めるべきものであると解するのが相当である。父母それぞれにつき,離婚後親権者となった場合に,どの程度の頻度でどのような態様により相手方に子との面会交流を認める意向を有しているかは,親権者を定めるに当たり総合的に考慮すべき事情の一つであるが,父母の離婚後の非監護親との面会交流だけで子の健全な成育や子の利益が確保されるわけではないから,父母の面会交流についての意向だけで親権者を定めることは相当でなく,また,父母の面会交流についての意向が他の諸事情より重要性が高いともいえない。

以上の通り、親権者を定める際に考慮しなければならない事情は多岐に渡るところ、面会交流に対する許容生はその一つにすぎないことを喚起しています。

その上で、本件において、夫が、離婚後には妻と長女が年間100日面会交流することを認める旨主張している点について、次の通り述べ、そうした主張が本件の判断にはほとんど影響しないことを明らかにしました。

一般に,父母の離婚後も非監護親と子との間に円満な親子関係を形成・維持することは子の利益に合致することであり,面会交流はその有力な手段である。しかし,親権者を定めるに当たり,非監護親との面会交流に関する事情は,唯一の判断基準ではなく,他の諸事情よりも重要性が高い事情でもないことは,上記説示のとおりである。そして,控訴人(注:妻)宅と被控訴人(注:夫)宅とは片道2時間半程度離れた距離関係にあり(甲55),現在小学校3年生の長女が年間100日の面会交流のたびに被控訴人宅と控訴人宅とを往復するとすれば,身体への負担のほか,学校行事への参加,学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがあり,必ずしも長女の健全な成育にとって利益になるとは限らない。他方,控訴人は,自分が親権者に定められた場合にも,被控訴人と長女との面会交流自体は否定していないが,その回数は当面月1回程度を想定している(甲55,56,控訴人の供述)。しかし,当初はこの程度の頻度で面会交流を再開することが長女の健全な成育にとって不十分であり長女の利益を害すると認めるに足りる証拠はない。

そして、結論として、本件の親権者は妻とすべきと判断しました。

夫と妻との間で監護権の指定や親権者の指定について争いになると、実務上、面会交流に対する許容性をアピールすることが多くあります。しかし、本判決は、少なくとも離婚時の親権者の変更については、面会交流の許容性は考慮材料の一つにすぎず、他の考慮材料よりも優位なものとは言えないことをはっきりと明言しました。結局、東京高裁は、あくまでも親権者の決定に際しては子供の利益を最優先に考えており、その範囲で面会交流の許容性についても鑑みることがあるという立場と言えます。

今後の実務に対する影響は極めて強いと言えるでしょう。

なお、本判決は、面会交流の許容性よりも、もっと大事にすべき点として、「夫と妻の仲の良さ」をあげています。子供の利益を最優先に考える高等裁判所の姿勢がここにも現れていると言えるでしょう。最後にその箇所を掲げます。

控訴人と被控訴人とが平成22年5月1日に激しいけんかをした際,その様子を見ていた長女は「おしまい」「おしまい」と何度も言っていたことからみて,長女にとっては,非監護親との面会交流だけではなく,離婚後の父母(控訴人と被控訴人)が少しでも関係を改善し仲が悪くなくなることも,その心の安定や健全な成育のために重要なことであると推認されるところである。


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