有責配偶者からの離婚請求で、別居1年半なのに離婚が認められた事例!(平成27年5月21日札幌家庭裁判所判決)

この判決(平成27年5月21日札幌家庭裁判所判決)は、離婚を原則として認容しない、いわゆる「有責配偶者からの離婚請求」であることを認めつつ、婚姻期間約18年半、別居期間1年半であるにもかかわらず、離婚を認容した稀有な判決です。

まず、裁判所は次の点を指摘し、婚姻関係が破綻した旨を判断しています。

互いのメールでのやりとりに口論めいたものが多くなり,電話での会話もなくなった挙げ句,平成25年9月6日に自宅のドアの鍵を取り替えた上,同月16日の本件鍵取替後の一件に及ぶに至って,被告(妻)の,原告(夫)に対する恐怖の情及び嫌悪の情が外形的にも明らかとなったということができる。そうすると,この時点において,主観的にも,客観的にも,本件婚姻関係が完全に破綻するに至ったものというべきである。

次に、裁判所は、婚姻関係破綻の主たる原因が不貞行為であることを認めましたが、その妻にも一定の責任があることを指摘し、その有責性は相対的なものであることを述べています。ここは注目すべき点です。

本件婚姻関係の最も大きくかつ直接的な破綻原因は,原告(夫)の不貞行為にあるというべきであるが,被告(妻)にも,杜撰な家計の管理や,安易で多額な原告(夫)名義での借金の繰り返し,原告(夫)に風俗店の利用を勧めるなどの配慮を欠いた言動に及んだこと,本件鍵取替後の一件等,本件婚姻関係の破綻に至る経緯において,一定程度の有責性があるというべきであり,その意味で,本件婚姻関係の破綻に関する原告(夫)の有責の度合いの高さは,被告(妻)の有責の度合いの低さとの関係で相対的なものであるということができる。

その上で、札幌家裁は、有責配偶者からの離婚請求が認められるための、いわゆる「特段の事情」(別居期間の長さ、未成熟子の有無、離婚による配偶者の生活の困窮化の程度)について次のように指摘し、離婚を認容しました。

① 別居期間は比較的短期間ではあるものの,別居に至った直接のきっかけは,被告(妻)が,何らの予告なく自宅の鍵を取り替えて原告(夫)が自宅に戻ることを不可能にする実力行使に出たことが原因であり,被告(妻)において,積極的に原告(夫)との同居を拒むに至ったものというべきであること,② 子らは,未成熟子であるとはいっても,比較的年長者であること,③ 経済的な状況については,原告(夫)においても,被告(妻)の作った借金の返済を未だ続けており,かつ,被告(妻)が,平成26年3月以降,原告(夫)の収入や本件借入の返済額に比して過分ともいうべき婚姻費用の支払を1年以上にわたって受け続けてきていること,客観的には,被告(妻)において,未だ家計の切り詰めを十分にしたとはいえない状況であって,今後,相当程度の支出を圧縮することも可能であること,子らの年齢からいっても,被告(妻)が稼働制限をしなければならないような状況にはないこと等を併せ考えると,本件の場合,被告(妻)が,離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等,原告(夫)からの離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するということのできるほどの特段の事情を認めるには至らないというほかない

10年程度の別居期間が必要とされてきた判例・裁判例の傾向に最近変化が見られますが、本裁判例は、それを顕著に示すものであって、高裁による逆転判決がない限り、今後引用されることになるでしょう。

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