夫と子供の面会交流を拒否したことが不法行為とされた判決!(平成27年3月27日熊本地方裁判所判決)

この判決(平成27年3月27日熊本地方裁判所判決)は、妻とその代理人弁護士が、妻が監護する子供との面会交流を誠実に行わなかったことを理由として、夫からの慰謝料請求を認めた稀有な事例です。

夫(原告)と妻(被告)は、1回目の調停で、別居と面会交流について合意をした後、妻が弁護士をつけて2回目の調停(離婚調停)を申し立てました。ところが、1回目の調停後、2回ほど面会がなされたにもかかわらず、その後妻が面会を拒否するようになりました。妻の弁護士もその意向にしたがって、2回目の調停申立後も、すぐに面会を実現させなかったというものです。

時系列は以下の通り。
4月    調停成立(月2回程度面会交流をする合意)
4月中旬  面会交流実施
6月中旬  面会交流実施
7月    妻 面会交流拒否
8月    妻 弁護士に離婚調停の申し立てを依頼
8月上旬  弁護士 離婚調停を申し立て
8月上旬  弁護士 8月中は面会交流できない旨伝える   
10月以降 弁護士 夫とのやりとりをメールから書面に変更
12月   夫 本件訴え提起

まず、裁判所は、面会交流の調停が成立する前に子供を会わせなかったことについては、次のように述べ、不法行為責任は認めませんでした。

一般に、監護親は、子の福祉のため、非監護親と子が適切な方法による面会交流をすることができるように努力する義務があり、また、非監護親は子と面会交流をする権利があるということは明らかである。
 もっとも、本件調停成立以前においては、面会交流の具体的日時、場所、方法等が決定されていないことを考慮すれば、上記の権利及び義務は、いまだ抽象的なものにとどまり、原告が二男と面会交流をすることができなかったからといって直ちに原告の法的保護に値する利益が侵害されたとまではいえない。また、同様に、被告Y1が面会交流をできるように努力する義務を負っているとしても、結果的に面会交流ができなかったからといって直ちに原告に対する不法行為を構成するということはできない

しかしながら、裁判所は、家庭裁判所における調停により、面会交流の頻度等を決めた後は、上記の権利義務が具体化したものであるとし、面会交流の協議を拒否したり、面会を遅滞させるなどした場合は、不法行為に該当する旨を述べました。

 本件調停においては、面会交流の実施回数と実施日につき月二回(原則として第二、第四土曜日)と具体的に定めた上で、その詳細については当事者間の協議に委ねていること及び非監護親との面会交流が子の福祉のため重要な役割を果たすことに鑑みれば、当事者は、本件調停に従って面会交流を実施するため日時等の詳細について誠実に協議すべき条理上の注意義務(以下「誠実協議義務」という。)を負担していると解するのが相当である。そして、一方当事者が、正当な理由なく一切の協議を拒否した場合や、相手方当事者が到底履行できないような条件を提示したり、協議の申入れに対する回答を著しく遅滞するなどして社会通念に照らし事実上協議を拒否したと評価される行為をした場合には、誠実協議義務に違反し相手方当事者のいわゆる面会交流権を侵害するものとして、相手方当事者に対する不法行為を構成するというべきである。

この事件においては、妻とその代理人弁護士のいくつかの行動に着眼をしています。特に着目すべき点は、弁護士が、メールではなく書面でやりとりをしたことが、時間稼ぎと判断されたことです。裁判所の判断は以下のようなものです。

被告Y2(弁護士)から原告に送付された書面には、メールを使用しない理由として、「意見の対立がみられるため、争点を明確化し、適格に解決すべく」との記載があるが、本件は時効中断や形成権の行使等の書面による証拠化が必要な事案ではないし、感情的対立を防ぐため電話よりも書面郵送の方が優れている部分もあるにせよ、メールによる連絡が可能であり実際に九月まではそのようにされていた本件において、あえて時間のかかる書面郵送を用いることにつき、合理的な理由は見当たらない。・・・被告Y2(弁護士)の上記行為は第二調停事件において調停期日が指定されるまで面会交流を行わない目的をもってする意図的な遅延行為であることが推認され(る)。

続けて、裁判所は次のように述べ、妻の弁護士の責任が重いことを指摘しています。

第二調停事件が係属した後であっても本件調停に基づく誠実協議義務が否定されるものではないことは上記説示のとおりであって、特に六月以降は面会交流が途絶えており子の福祉の観点から早急な面会交流の再開が求められている状況に照らし、被告Y2(弁護士)は、速やかに面会交流が実施できるようにするための誠実協議義務を負っていたことが明らかである。そして、原告(夫)に受任通知を送付し被告Y1(妻)の代理人として原告との交渉窓口となっていた弁護士である被告Y2(弁護士)は、このことを認識していたか、そうでないとしてもその法律知識、能力をもってすれば極めて容易にこれを認識し得たというべきである。
 そうすると、被告Y2(弁護士)が一〇月上旬以降第二調停事件において面会交流に関する協議を行うまでの間原告からの協議の申入れに対して速やかに回答せず、殊更に協議を遅延させ面会交流を妨げた行為につき、弁護士の専門家としての裁量の範囲を考慮しても、なお社会通念上の相当性を欠くものとして誠実協議義務の違反があり、不法行為を構成するというべきである。

結果として裁判所が認めた慰謝料額は、20万円程度でした。
しかし、面会交流は、裁判所も述べている通り、子供と暮らしていない親の権利でもあります。
その権利は可能な限り尊重すべきでしょう。そうした機運がより一層広まるよう、努める必要がありそうです。

※この判決の後、福岡高等裁判所における控訴審判決があり、夫の請求を棄却し、夫は逆転敗訴となりました。
控訴審判決によれば、「書面郵送による連絡方法が、協議の進展に実質的に影響したとはうかがわれない」と判断されており、不法行為への該当性は否定したものです。

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