ニューヨーク州法による不倫慰謝料の否定例

この判決(東京地方裁判所平成26年9月5日判決)は、ニューヨークを生活の本拠とする妻が、ニューヨークで不倫をした夫の不倫相手(日本人)に対して、慰謝料請求をした事案です。妻の生活の本拠地がニューヨークであったことから、不貞行為に基づく慰謝料請求に関する法律は、ニューヨーク州法に基づくべきものとしました。そして、裁判所は、ニューヨーク州法が、不倫に基づく慰謝料請求自体を認めていないことから、妻から女性に対する請求を棄却しました。

 (1) 通則法一七条前段は、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法によると規定する。ここにいう加害行為の結果が発生した地とは、加害行為により直接に侵害された権利が侵害発生時に所在した地をいうと解される。
 これを本件についてみると、・・・原告(妻)は、平成二二年当時、ニューヨークに約一三年もの長期間居住し、仕事をしており、被告と夫の間で不貞行為が行われた平成二二年五月から九月までの間も、・・・原告(妻)は、その大半をニューヨークで過ごし、平成二二年二月一五日に夫と婚姻後も、原告(妻)がニューヨークで暮らし、夫が原告(妻)と過ごすためにニューヨークに訪れる方法で婚姻生活を営んでいたから、上記の不貞行為の当時、原告(妻)の生活の本拠はニューヨークにあり、不法行為により保護されるべき婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益はニューヨークにあったものということができる。したがって、結果発生地はニューヨークであり、不貞行為に基づく慰謝料請求権の準拠法は、ニューヨーク州法である
 (2) 原告(妻)は、日本に住所を有する夫と婚姻し、日本に帰国して婚姻生活を営む予定であったから、原告(妻)の生活の本拠は日本であり、結果発生地は日本であると主張し、これに沿う供述をする。
 しかし、・・・原告(妻)は、不貞行為が発覚した平成二二年九月以降もニューヨークに留まり、同年一一月に約一か月間帰国して結婚式を挙げた後も、アメリカと日本を往復し、平成二三年一月二四日に住民登録をした後は、長期にわたってアメリカに滞在して活動をしていることに照らすと、上記の供述をもって、不貞行為が行われた平成二二年五月ないし九月頃、確定的に日本に帰国して夫と婚姻生活を営む予定であったと認めることはできず、他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。
 また、原告(妻)が日本に帰国して婚姻生活を営む意思を有していたとしても、・・・客観的な居住状況からして、原告(妻)の生活の本拠は、ニューヨークにあったと認められる。よって、この点に関する原告(妻)の主張は理由がない。
 (3) 意見書によると、ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80aにより、同州においては、不貞行為により第三者が婚姻関係を侵害する不法行為(alienation of affection)を原因とする金銭的損害賠償請求権は廃止され、同州内で行われた当該行為を原因として州内及び州外で訴えを提起することが禁じられていると認められる。
 したがって、原告(妻)の被告に対する不貞行為を理由とする慰謝料請求は、準拠法であるニューヨーク州法上認められないから、・・・夫と被告の不貞行為の有無について判断するまでもなく、原告(妻)の不貞行為を理由とする慰謝料請求は理由がない。

日本の法律では、不倫によって、不倫相手に慰謝料請求をできるという運用になっていますが、アメリカでは僅かな州を除いてそれは禁止されています。恋愛の自由の原則や、そもそも不倫相手に婚姻契約違反の責任を問うことはお門違いという考えからなのでしょう。
本判例は、準拠法に関する事例的価値に加えて、そうしたアメリカの事情を伺えるという意味でも、関心を呼ぶものといえます。

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