再婚後に養子縁組。養育費減額事由になる!

この裁判(福岡高等裁判所平成26年6月30日決定)は、離婚調停時に養育費の金額を決めた2年半後に、前夫が子連れ女性と結婚をし、その子らと養子縁組をした事例です。ここでは、そうした、離婚後に「自らの意思で」養子縁組をしたことが、事情変更の原則に該当するかどうかが争われました。

事情変更の原則というのは、要するに、養育費を決めた際、想定されていなかった事情により前提がかわった場合に、養育費の金額を増減できるという原則を言います。

今回は、養子縁組というものが、「自らの意思で」行われるものであるため、これを「想定していなかった事情」とできるのかが争われたわけです。

原審判では、再婚及び養子縁組が、「自らそのような状況を作り出したものである」ことを理由に、「想定していなかった事情」には当たらず、養育費の減額を認めませんでした。

しかし、その上級審である本判決は、この決定を覆し、養育費の減額を認めました。

 抗告人(前夫)及び相手方(前妻)は,調停離婚後,それぞれ再婚し(ただし,相手方(前妻)はその後離婚している。),抗告人(前夫)は,●及び■と養子縁組をし,その後,新たに▲が出生しているが,これらはいずれも調停時には想定されていなかった事情であり,これらによってそれぞれの生活状況は大きく変化し,・・・抗告人(前夫)が負担すべき未成年者の養育費の算定結果も相当程度変わっているというのであるから,民法880条にいう「事情に変更を生じたとき」に該当するというべきである。

なお、本決定では、前夫の今の妻の収入をどのように位置づけるべきかについても言及しています。

 抗告人の妻▼(現在の妻)は,未成年者ら(前妻との間の子)を扶養する義務を負わず,その年収は330万円で,抗告人(前夫)や相手方(前妻)に比較すれば著しく低いことを考えると,未成年者らの養育費算定にあたっては,■,▲,●(現在の妻との間の子)の養育費は専ら抗告人が負担しているものとして,抗告人の基礎収入の算定にあたっては妻▼(現在の妻)の収入を合算しない一方,妻▼(現在の妻)を抗告人の扶養者ではないとみなすのが相当である。

調停などでは、いわゆる養育費・婚姻費用算定表を利用して機械的に養育費を算出することが行われていますが、このように、算定表では捉えきれないケースにおいては、算定表を基礎づける計算方法に立ち戻る必要があります。
本判決は、そうした計算方法に立ち戻って計算を行う際に、参照すべき例として利用できるでしょう。

 

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