12年の別居でも離婚を認めなかった判決!

この判決(大阪高等裁判所平成26年12月5日)は、不貞を働いた側(夫)からの離婚請求、いわゆる有責配偶者からの離婚請求の事案です。原審の家庭裁判所は、12年間の別居期間に着目し、離婚を認容しましたが、本判決は、夫の身勝手さに着目し、その判決をひっくり返しました。

本判決が具体的に指摘した夫の「身勝手さ」は、以下のようなものです。

被控訴人(夫)は,浮気を疑う控訴人(妻)に暴力を振るうなどした上,B(女性)と不貞関係を持ち,幼少の長女を抱えた控訴人(妻)に安定的な住居や安定的な経済的基盤を用意することもしないまま家出をしてB(女性)との不貞関係を継続し,家出(平成14年9月)後,平成15年7月までは,給与振込口座からの出金を容認する方法で婚姻費用を分担していたものの,控訴人(妻)が仕事を開始する前の期間を含む平成15年8月から平成20年9月分までの婚姻費用の分担としては,約5年間にたかだか約260万円を送金しただけという不十分なものであり,その後も,控訴人(妻)から申し立てられた婚姻費用分担調停に基づく義務の履行といった自発性のやや乏しい負担をしているにすぎず,B(女性)との不貞関係を解消した後も,別居を継続して離婚を要求し続け,前件訴訟を提起して敗訴判決が確定しても,控訴人(妻)に対しては離婚を要求するため以外にはほとんど連絡をしようとせず,本件でも,離婚できるまで何度でも訴えを提起するとまで供述している(原審被控訴人本人)。

裁判所も、めずらしく相当に感情を露わにした文面となっています。
あえて述べるとすれば、
婚姻費用分担調停に基づく義務の履行というものは多くあることで、それが自発性の乏しい負担と非難されるべきものなのか、
不貞を解消した後もほとんど連絡をしようとしなかったこと自体が咎められるべきことなのか、
離婚できるまで何度でも訴えを提起すると述べるほど、離婚をしたいという気持ちを逆に配慮しないのか、

といった点を指摘することができるかもしれません。

原審の家庭裁判所は同様の事実関係において離婚を認容していますから、ここは裁判官ごとの価値判断に大きく左右されてしまったといえるでしょう。

結果として、この高裁判決は次のように述べ、夫の離婚請求を棄却しました。

上記のような被控訴人(夫)の責任の態様・程度,B(女性)との関係を解消した後も,自らの行動を省みることなく,控訴人(妻)の責任を主張して離婚を求め続けていること控訴人(夫)は,被控訴人(妻)との関係の修復をなお気長に待っていると見ることもできること,控訴人(夫)と被控訴人(妻)の間の長女は,未だ14歳(中学2年生)の未成熟子であってなお当分の間,両親がともに親権者として監護に当たることが相当であることを考慮すると,控訴人(夫)と被控訴人(妻)が同居していた期間が約2年3月であるのに対し,別居期間(婚姻当初の期間を除く。)が約12年1月であること,控訴人(夫)が医師として働いていること,被控訴人(妻)が不十分であった期間はあるものの婚姻費用の分担を継続していること,被控訴人(夫)が控訴人(妻)に対し離婚給付として500万円を支払うことを申し出ていること等の事情を考慮しても,被控訴人(夫)の離婚請求は信義誠実の原則に反して許されないというべきである。

同居期間が2年3ヶ月である一方、別居期間が12年1ヶ月であるという点は、無視できない極めて重要な点ですが、これについては高裁判決は上記のとおり一言述べただけでした。

この判決が離婚を認めないとした理由は、夫が離婚をひたすら求め続けている点、妻が関係修復を気長に待っているという点、そして夫婦の子が14歳であるという点です。
しかし、これらの点は離婚訴訟においては通常よく見られるものであり、別居期間が同居期間の5倍にも及ぶ本件において、それほど意味をなす理由といえるのか疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。

本判決は、有責配偶者であっても離婚を認める傾向になりつつある昨今の裁判例の基準に照らしても、結論について疑問を抱かざるをえない判決であり、実務家からの批判を多く聞くところです。

裁判官の個性によって判決結果が変わってしまった一つの例と言ってもよいかもしれません。

 

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