別居中の妻に支払いすぎた生活費。離婚の際にはちゃんと考慮されるの?

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支払いすぎた生活費は考慮されるのか
こんにちは、横浜の離婚弁護士の青木亮祐です。今回のテーマは「別居中の妻に対して支払いすぎた生活費」についてです。

1 必要以上に支払いがちな別居中の妻への生活費

妻と別居をしても生活費は負担してあげなければならない。
働く男性にとっては納得がいかないことも多いこの婚姻費用の制度。

特に、いくらくらいを払わなければならないのか、よく分からないまま、妻に言われるがままに支払いをしている夫が多く見受けられます。

しかし、よく覚えておいて欲しいことは次のことです。
「妻が必要と思う生活費」と、「実際に支払わなければならない生活費」の金額は全然違うということ。

ご相談でお話しを聞いていて、妻の住む家の賃料や光熱費を負担した上、食費や学費、臨時の出費など、言われるがままに支払いを続ける方々が非常に多くいらっしゃいます。しかし、それが積み重なることによって途方もない金額になることがままありますので、ぜひ注意してください。
例えば、妻の家の賃料が月額10万円、光熱費が合わせて3万円、携帯電話の通信料が子供と合わせて2万円、そして学費や塾代が3万。もちろん、これとは別に純粋な生活費(食費そのほか)として5万円くらい要求されることもあるでしょう。単純に合計すると23万円。もちろん、これとは別にあなた自身の生活も確保しなければなりません。

実際にいくらの婚姻費用を払わなければならないのかについては、「基本の基本!算定表を使った養育費の計算を弁護士が解説!」に記載していますので、そちらもご覧いただければと思います。
「養育費算定表」を基に計算すると、仮にあなたの年収が700万円で、妻がパート、子が中学生一人、小学生一人だったとしても、支払う必要がある金額は14万円程度です。
しかし、妻が要求する金額としては14万円をはるかに超えるでしょう。前の例で言えば9万円の差です。

2 財産分与のときに苦労が報われる可能性が!

それでは、妻に言われるがまま、必要以上に支払いをしてしまった場合、離婚時にこのことは意味を持ってくるのでしょうか。

意味を持つことがあります。それは、離婚のときに財産分与額を決める時です。

財産分与について定める民法768条3項は、次のように定めます。

前項の場合(裁判所が決める場合)には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

つまり、これまでの事情の一切を考慮して、分与額を決めることができるとされているのです。
別居期間中の必要以上の支払いについては、これに含まれることになります。
なお、家庭裁判所が決める前に、夫婦間の話し合いで金額を決めることもできます。そうした場合は、すでに支払った必要以上の生活費を、いわば財産分与の前渡しであったと主張すべきでしょう。

平成21年4月17日の奈良家庭裁判所の判断も、必要以上に支払った生活費を、財産分与の前渡しとみなすべきことを述べています。
裁判所は、必要以上の額の支払いについて、「財産分与の前渡しの意味を有しているとみるべき」と明言したのです。
もっとも、この判断に対する抗告審である、平成21年9月4日の大阪高等裁判所の決定では、結果として、財産分与の前渡しとみるべきことを否定しました。しかしながら、その婚姻費用額が「著しく相当性を欠き過大」である場合には、財産分与の前渡しになりうることを述べていますから、奈良家裁の考えを完全に否定したものではないでしょう。

今現在、必要以上に生活費を支払っているあなた。
最終的にはこの財産分与の場面で調整される余地はありえます。もっとも、先の大阪高等裁判所は、その婚姻費用額が「著しく相当性を欠き過大」である場合に限って、財産分与の前渡しと評価できるとしています。ですから、今のうちに婚姻費用の金額を抑えるにこしたことはないでしょう。

《弁護士のひとこと》

この平成21年4月17日の奈良家庭裁判所の審判で注意すべきは、財産分与の前渡しというのは、あくまでも必要以上に支払った部分ということです。当然、養育費算定表で算出される金額についてはここから控除されることになります。また、もう一つ注意しなければならないことは、妻と明確に合意した上で払った金額については、いかに養育費算定表の金額を上回るものであっても、「必要以上に支払った生活費」とはもはやみなされないということです。
そういうわけですから、妻に生活費を渡すとき、いくらの金額にするかは、慎重に決めなけれななりません。きちんと合意できない場合は、「あくまでも暫定的に」という留保のもとで、生活費を渡すべきといえるでしょう。

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弁護士 青木 亮祐(あおき りょうすけ)

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