離婚のとき、お金で苦労しないのは専業主婦??

離婚であなたを守り切る。横浜プロキオン法律事務所
専業主婦というのは、離婚において不利な立場になるのでしょうか。

多くの離婚事件に携わり、かつ各種の裁判例を研究してきた立場から申し上げますと、
離婚において専業主婦は相当に優遇されていると言えますし、優遇されてしまっていると言わざるを得ません。
これは逆に言うと、専業主婦を妻として持つ夫は、離婚の際に相当の覚悟が必要になってくるということでもあります。
なぜそうした覚悟が必要なのか。
今回は、その理由についてお話しいたしましょう。

1 生活費・養育費

専業主婦である妻が子供を連れて実家に帰ってしまった。
こうしたことは本当によく見られます。
もっとも、専業主婦である妻は仕事をしていないわけです。
そうすると、 別居に至った後、生活費はどうするのでしょうか。

それは、夫であるあなたに請求をすることになるのです。

「別居を決めたのは妻であって、自分はそれを認めた覚えはない。」
「そもそも自分で別居を選択したのであれば、自分の生活のことは自分で責任を持つべきだ。」

そのような、ある意味もっともな考えは、実はあまり通用しません。

妻は別居後、仮に実家暮らしで特に不自由がなくても、あなたに生活費(婚姻費用といいます。)を請求することができます。
このとき、仮に子供を親に預けて仕事に就くことが容易であったとしても、あなたの方に収入がある以上は、生活費の請求をされてしまいます。
生活費の額については、裁判所において「養育費算定表」というものが利用され、そこで双方の年収に応じてかなり機械的に算出されます。双方の年収といっても、実際の年収額というより、「このくらいは稼ぐことができるはず」という潜在的な稼働能力をもとに収入額が決められます。

専業主婦の場合は、全く仕事ができないことはないはずであるという考えから、だいたい100万円から120万円程度の収入があるものとみなされますね。
一方、「実家で暮らしている以上は子供を預けて仕事に出られるはずだ」とか、「実家に暮らしているからその分生活費はかかっていないはずだ」とかいう夫の言い分は、裁判所はあまり聞いてくれません。

一方で、あなたの年収については前年度の源泉徴収票に記載の支払金額、つまり手取りではなくて額面の数字を基準に決められてしまいます。あなたが夜遅くまで残業をしてがんばった成果としての収入額であっても、妻の生活費の算定にあたっては、それが基準になってしまいます。

なお、確定した生活費の金額をもしあなたが払わなかったという場合はどうなるでしょうか。
その生活費の金額が、裁判所での調停や審判で決まっていた場合は、あなたが生活費を払わない場合、強制執行されてしまうことがあります。
多くあるのは、あなたの勤め先に裁判所から連絡が行き、その給与が一部差し押さえられてしまうというものです。
職場にも迷惑をかけてしまいますから、結局、夫としては支払いには応じざるを得ないことが多いでしょう。

こうした生活費の請求は、離婚後は、子供の養育費という名目で請求され続けることになります。
もし、その後、元妻がしっかりと就業につき、正社員として収入を得るようになっても、
あなたが養育費を減額するということは実際には非常に難しいといえます。
なぜなら、養育費を減額する際は、養育費の減額請求という調停または審判を裁判所に申し立てる必要がありますが、
元妻が正社員になったとか、その収入額については、原則として元夫側が証明する必要があるからです。

そういうわけで、専業主婦は、仕事をしていなくとも、自らの生活費を確保できる強い立場にあるわけです。

2 財産分与

さて、次に離婚にともなって行われる財産分与についてです。
財産分与は、夫婦間で築き上げた財産を離婚時に分割するというものです。
どの割合で分割するかというのは、その夫婦間が、その蓄財にどれだけ寄与したのかという観点から行われます。
しかしながら、現在、裁判所では、専業主婦であっても、その寄与割合は50パーセントと判断されてしまうことがほとんどです。つまり、妻は夫が結婚期間中に築き上げた財産の半分をもらう権利があるということです。

裁判所はその理由として、憲法を引用しながら男女平等の精神を取り上げます。
しかしながら、どれだけ蓄財に寄与したのかを厳密に考えていくことの方が平等といえるでしょうから、あまり説得的ではありません。

また、裁判所は、妻が家事や子供の世話という役割を負担してきたおかげで、夫は仕事に専念でき、財産を蓄積できたのであるということも理由にします。
しかしながら、家事や育児の態様は、どの家庭でもそれほど差がないはずのものです。ですので、それによって夫の収入に寄与できる金額は、ほとんどの専業主婦家庭において変わらないはずでしょう。ところが、収入が高い家庭においても、裁判所は専業主婦の寄与割合を50パーセントとしており、その点は説明が十分にできていません。

以上の次第で、夫側としては納得ができない部分が多いと思いますが、裁判所の実際の運用は、専業主婦の蓄財への寄与割合を50パーセントとしており、離婚時に妻に半分の財産を渡す必要がでてきます。

この点でも、専業主婦は仕事をしていなくとも、離婚後にまとまった財産を取得することができるのです。

3 年金

そして、最後に年金です。
年金については、法律で、離婚時に分割できることになりました。
何を分割するのかといえば、結婚期間中に、夫が納めてきた年金保険料の納付実績を分割するのです。
将来の年金は、保険料の納付実績により金額が定まりますから、結婚期間中だけとはいえ、それが数10年にわたることもありますから、その効果は甚大です。
専業主婦の場合は、平成20年4月以降の年金保険料の納付実績については、申請をするだけで50パーセントの割合で分割することができます。平成20年3月以前の部分については、協議や調停、審判で割合を決めることになりますが、裁判所はここでも50パーセントの割合で決めることがほとんどです。

したがって、専業主婦は、仕事をしていなくとも、離婚後に受給できる年金について、強い保護下にあるといえるでしょう。

以上のように、専業主婦を妻に持ったあなたは、離婚をする際、その財産的な面について相当の覚悟が必要になってきます。
もっとも、妻の蓄財への寄与割合を争ったり、生活費の金額を争ったりする余地はあるでしょう。
しかしながら、法律上認められた妻の権利は、おそらくあなたが思っている以上のものであると思います。
それを念頭に、離婚について考え、計画を練っていくことが求められます。

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《弁護士のひとこと》

専業主婦が必然的に離婚において有利になるものとしては、そのほか、親権が挙げられると思います。
つまり、専業主婦は家で家事や育児に集中できるわけですから、子供と一番密接に関わることになり、
また、子供もその母親に全面的に頼るようになります。
親権を決める際、裁判所は、これまで夫婦のどちらが、より子供に関わってきたかどうかを見極めて、より関わってきた方に親権を付与する傾向にあります。
そういうわけで、財産面に限らず、親権に至るまで、離婚については専業主婦が非常に強い立場にあります。これが現時点での実情といえるでしょう。

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弁護士 青木 亮祐(あおき りょうすけ)

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