夫の収入で生活をしていた場合、妻が相続した遺産は財産分与の対象になる!?

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夫の収入で生活をすると・・・

1 財産分与の対象は?

財産分与とは、離婚をする際に夫婦の共有財産(夫婦が共同で築き上げたもの)を公平に分与しあう制度です。
しかし、共有財産とはいっても、何が共有といえるのかについて、調停や裁判で争いになることがよくあります。
今回は、財産分与を行わなければならない対象となる夫婦の共有財産とは一体何なのかについて見ていきたいと思います。

財産分与では、夫婦が共同で築き上げたものを分与しますので、婚姻後に得られた財産を分与するのが通常です。
ですので、婚姻前にすでに持っていた財産は、いわゆる特有財産として、夫または妻の固有の財産です。
これは離婚後も、当然に夫または妻が持ち続けることができ、財産分与の対象にはなりません。
もっとも、婚姻時に持っていた口座が給与口座などである場合、婚姻後の給与収入と混ざってしまうことも多いでしょう。
そういう場合、離婚時に口座に入っている預金の残高のうち、いくらが純粋な特有財産(固有の財産)なのかははっきりしません。
そういう場合は、裁判所もざっくりと考えることが多く、例えば、婚姻時に持っていた特有財産のうち半分に相当する金額が、今の口座にも残っているものとみなしたりします。
そうすると、「現在の残高−(婚姻時特有財産÷2)」が、夫婦の共有財産となるわけです。つまり、それが財産分与の対象となります。

以上は婚姻前の財産が特有財産になるケースでしたが、それでは、婚姻後に得られた財産であっても、特有財産(固有の財産)となるものはあるでしょうか。
共有財産とは、夫婦が共同で築き上げた財産です。その財産の維持や形成に、夫婦の片方が一切寄与していない場合は、共有財産にはなりません。
例えば、亡くなった親族からの相続や、両親からの贈与などが挙げられるでしょう。
こうした相続や贈与は配偶者の寄与がないため、共有財産にならない(財産分与の対象にならない)のが通常です。

2 片方の収入でやりくりしていた場合はどうなる?

しかしながら、例えば専業主婦が婚姻後、相続や贈与によって財産を得ていた場合、それを費消せずに済んだのは、夫の収入で生活をしていたからということも多いでしょう。
こうした場合でも、妻の相続財産や贈与財産は、共有財産にならないのでしょうか。

裁判所は、一方の特有財産の維持、管理等に他方が積極的に寄与、貢献した場合には、財産分与にあたり、これも考慮すべきとします(平成17年5月30日東京地方裁判所判決など)。
つまり、特有財産であることは否定できないけれども、財産分与の金額を確定する際には、このことを踏まえるべきということです。特有財産の維持に貢献した配偶者には、その特有財産の数分の1に当たる金額を、財産分与の取り分に上乗せすることなどが考えられるでしょう。

そして、夫の収入を頼りに生活をしてきて、妻が相続財産や贈与財産を費消せずに済んだような場合は、妻の特有財産の維持に夫が一定の寄与をしていることは否定できないでしょう。夫の収入がなければ、妻としてはこうした特有財産を費消して生活をしなければならなかったはずだからです。

裁判例の中には、夫が婚姻前に開設した口座の残高が、婚姻後の生活の切り崩しのため残高が減っているため、妻はその預金の維持に貢献したとは認められないとするものがあります(平成18年1月31日東京地方裁判所判決など)。しかし、逆に言えば、婚姻後の残高が減っていない場合には、その財産を費消しなくて済んだことを示すため、その財産維持にもう一方が貢献したとみなされる余地があるということです。

また、平成7年4月27日の東京高等裁判所は、次のように述べています。

婚姻中に取得されたものであっても,親兄弟からの贈与や,相続による取得物あるいは婚姻前から所持していた物又はそれらの買替物は,それを取得した配偶者の特有財産であって,財産分与の対象となるものではないことは当然であるが,他の配偶者がその維持管理に貢献した場合には,その事情も財産分与に当たって考慮されなければならない。

特有財産の維持に一定の寄与をしたことが認められる場合は、財産分与の中で金額の調整がなされることになります。
離婚調停などでは、財産分与一覧表なるものを作って、機械的に分与額を計算していきますが、しっかりと検討しようとすれば、実際の分与額をより適正なものにできるということですね。注意すべき点といえます。

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《弁護士のひとこと》

最後にも書かれていますが、離婚調停などでは、財産分与に関しては本当に機械的な算定がなされます。調停委員は、一般の市民から選ばれた方々ですから、離婚に関する法律の専門家ではありません。ですので、裁判例や裁判所の運用について、正確に把握しているわけではないのです。ですから、こちらが「そのやり方はおかしい」と言っただけでは、全く動いてくれないことがほとんどです。
一方、実際の裁判例ではこういうのがあるということを具体的に示せば、そういうことならこれを前提にしてみましょうか、という話になったりします。相手方がそれに納得できなければ、逆に相手方の主張を裏付ける裁判例を出すことが求められます。裁判例については豊富な知識があるにこしたことはなく、ケースによってはそれによって結果が大幅に変わることがあると言えるでしょう。

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