仕事を変えても婚姻費用は減額できない?自分の意思で退職したかどうかが大事?

 

婚姻費用。

つまり、妻と別居をした場合に、離婚に至るまで妻に支払い続けなければならない生活費のことです。

 

この金額は、通常、「養育費算定表」というものに基づいて、双方の年収をベースに判断されることになります。

 

1.従前の年収ベースで婚姻費用が決まってしまう現状

 

 

ところで、「あなたが解雇になったとき、別居中の妻への生活費を下げられるのか?」の記事にも記載いたしましたが、今の裁判所の運用をみると、勤めていた会社を解雇された場合、再就職をしていないと、従前の年収をベースに婚姻費用が決まってしまうことがあります。

 

その理由の一つとして、裁判所は、夫が「どの程度稼ぐ能力があるのか」という点を基準にしていることが挙げられます。

夫が再就職できておらず、仕事をしていない場合、夫の稼働能力の証拠としては、従前の収入額しかありません。

その結果、婚姻費用を減額できないという事態が生じるのです。

 

でも、逆に言えば、新たに再就職をしていれば、再就職先の収入額を基準に、婚姻費用を減額できる場合があるということです(もちろん、再就職先の給与が前の職場を下回る場合です)。

新たに再就職をしていれば、そこにおける給与額が、夫の直近の稼働能力の最もたる証拠になるからですね。

 

2.再就職先の給与ベースで婚姻費用を減額してもらえる場合とは

 

 

それでは、どのような場合であれば、新たに再就職をした先の給与ベースで婚姻費用を決めてもらえるのでしょうか。

 

まず、再就職をした先の「年間」ベースの収入がほぼ確定していることが必要です。

なぜ年間なのかというと、「養育費算定表」に基づく婚姻費用の確定においては、あくまでも、夫婦の年間収入をベースとするからです。

 

ですので、再就職先でボーナスがどれくらいもらえるか検討がつかないような場合は注意が必要です。

再就職先からボーナスに関する情報を可能な限りもらっておいて、裁判所に伝える必要があるでしょう。

また、就業規則(賃金規程)においてボーナスに関する記載があれば、もっと良いです。

 

こうした情報をもとに、年間ベースの収入額がおおよそ確定できれば、それに基づき婚姻費用を減額することができるでしょう。

逆に、年間ベースの収入額が不確定ですと、やはり前の職場の収入額が、もっとも夫の稼働能力を示す証拠として適格であるため、婚姻費用が減額できなくなります。

 

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3.前の職場の「辞め方」が与える影響

 

 

ところで、前の職場の「辞め方」によっては、再就職先の給与ベースで婚姻費用を減額してくれないということがあります。

つまり、夫が前の職場を自発的に辞めた場合は、本来は前の職場にとどまることができるため、前の職場の年収ベースの稼働能力があるとされてしまうのです。

 

これについては、大阪高等裁判所が平成22年3月3日に出した決定があります。

この決定では、「前の職場の退職がやむを得なかったとはいえない」ことを主な理由として、新しい職場での給与額をベースとして婚姻費用を減額することを認めませんでした。

 

したがって、新しい職場の給与額をベースとして婚姻費用を減額できるのは、例えば、前の職場を解雇された場合や、人員整理のため退職勧奨を受けて退職になった場合などでしょう。

 

一方、積極的に、新しい環境で挑戦するためだったり、その職場の人間関係にうんざりしたために職場を自発的に辞めたという場合は、婚姻費用の減額が難しくなると思われます。

 

前者の辞め方で辞めることになる場合は、退職合意書に退職が会社の判断によるものであることを書いてもらったり、離職票に会社都合による退職であることを明記してもらうよう、お願いするのが良いでしょう。

 

弁護士のホンネ
本文にあげた大阪高裁の決定は、仮にその退職がやむを得なかったとしても、年齢・資格・経験等から、従前の給与額程度の稼働能力があることも理由として挙げていますので注意が必要です。

つまり、やむを得ない退職であっても、再就職先がどのようなものでもいいというわけではないのです。
あくまでも、これまでの実績や年齢に応じたふさわしい給与額でなければ、婚姻費用額の減額は認められない可能性があるということです。

もっとも、この事件では夫が歯科医であったところ、それを辞めて大学の研究生になっているという特殊な事情があります。
これまでとは全く給与額が異なる就業状態であって、研究生としての給与額が、その人の稼働能力を適切に示しているわけでないことが明白なケースでした。
また、こうした特別な専門的資格を有している人であれば、当然、従前の職場に準じた給与額を獲得できるだろうとの判断もあったでしょう。

したがって、普通のサラリーマンであれば、また結果は変わっていたかもしれません。
現代の再就職状況をみると、相応の年齢を過ぎると、従前の給与額を再就職先で維持することは非常に困難であることはもはや常識ですから。
 

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